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★タイトル (AWJ ) 97/ 1/17 17:41 ( 86)
「続・ティアフルガール(迷子少女)」No6 大二郎
★内容
昼の時間が終われば、そこには夜がこんにちは・・・・じゃなくてこんばんは、とやっ
てくる。
この人里離れたお城ならそれはなおさらのことでありまして・・・・
場面はいきなり暗転して、その日の夜のこと。
ガサガサガサ・・・・と、どうしたって出てしまう草を踏みならす足音を、できるだけ
忍ばせながら、孤児院に近付いてくる、いくつかの人影。
全員、黒装束に覆面なんぞしてて、露骨にあやしい。
「まったく、昨日はやばかったっすね」
と、一人が口を開くと、
「ああ、こんなとこで迷う奴が居るとは思わなかったぜ」
別の一人が、言いながら舌打ちしてみせる。声から察するにどちらも男のようであ
る。
「おい、無駄話はよせ」
と、また別の、先頭の男が、後続をしかりつけると、言われたほうは肩をすくめて
口をつぐんだ。
そして・・・・全員が足を止めたその目の前に、ローソクに灯のともった燭台を手にし
た、赤いドレスの女性が、一人。
「お待ちしておりました」
と、フレイアさんは静かにそう、口を開いた。
「ああ、なんだあんたか」
ホッとしたように言う先頭の男。続けて口を開く。
「ブツはどこだ?」
するとフレイアさんはおかしそうに、
「後ろですよ、あなたがたの」
「なに?」
言われて男が振り向くと、そこには草刈のあと、というような感じで、何かの草花
が山積みにされているのである。
「おい、なんだこりゃ? ヤクの原料じゃねーのか?」
面食らった男がそう言うと、フレイアさん、落ち着いた口調で、
「そうですよ」
と応えた。続けて、
「じつはかなりまずいことになりましてね・・・・ここも潮時と思いまして」
「そうか」
あっさり同意する男。
「残念だなぁ、いい隠れみのだったのに」
別の男が未練を口にすると、
「ご心配には及びません。またいい場所を見つけて差し上げますよ」
自信ありげなフレイアさんだった。
「まあ、とにかくキャンプのほうへ・・・・使えそうなものは全部持ってきましたから」
「よし・・・・おい、みんなで運び出せ!」
フレイアさんに促されて先頭の男が皆に号令をかけたその時だった。
「フレイア様!」
もう明かりも消えて寝静まっていると思われた、お城の建物のほうから、女性の叫
び声が上がった。
子供っぽい声ではあるけれど、どう見てもそこに立っていたのは子供じゃなかった。
「あら、ファズタ先生」
まったく動じたふうでもなしに言うフレイアさん。
「どうされたんですか? こんな夜更けに」
「しらばっくれないで下さい! あなたがあたしに自分のやっていることの罪をかぶ
せようとしていたこと、すべて聞きました!」
フレイアさんよりよっぽど慌てふためいている黒装束たちなんかまるで気にも止め
ず、ファズタ先生は続けた。
「最初は信じられなかった・・・・どうしてフレイア様がそんなことをって。だから違う
ことを証明しようと思って、今日1日、ずっとフレイア様の行動を見張ってたんです」
「そうだったのですか」
ご苦労様、とでも言いたげなフレイアさん。
ファズタ先生、ポロポロと眼に大粒の涙をこぼし始めながら、
「こんな・・・・こんなことってあるんですか? あたしは・・・・いつかフレイア様のよう
になりたくて、この孤児院に残ったのに・・・・」
やがて感きわまったように、ファズタ先生は絶叫した。
「あなたは・・・・あなたは・・・・あたしの知ってるフレイア様じゃないわ!」
「そうですよ」
あっさり肯定されて、ますます涙を流すファズタ先生。
「からかってるんですね・・・・分かりました」
そう言ってファズタ先生、右足を半歩退いて身構えた。
「もう何も言いません。けどあなたのしていることは止めなければいけない! 奴隷
にされるところだったあたしを助けて、ここまで育ててくれたせめてものお礼に・・・・
あたしがこの命に代えてでも、あなたを止めてみせる!」
すると黒装束の一人が、
「やいやいやい! さっきから黙って聞いてりゃ俺達のことを無視しやがって・・・・お
望みどおり可愛がってやらぁ」
と、こういう輩のご多分の例にもれないセリフとともに近寄ってきて、ファズタ先
生の腕をつかまえようとした。
と思ったら逆にその右の肩をグッと掴まれて、反対側の手を股間に突っ込まれちゃ
って・・・・(ああ、はしたない)
「どりゃーっ!」
ズシーン! と気合い一閃、炸裂するボディスラム。あっさりのびてしまう黒装束。
「な、なんだぁ」
いっせいにどよめく、残りの黒装束達。
「男のくせに情けないわね。もっと身体を鍛えなさい!」
パン、パンと手をはたきながらシビアにお説教のファズタ先生だった。