AWC ADC殺人事件(3)   完狂堂


        
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★タイトル (MEH     )  97/ 1/16  23:37  ( 93)
ADC殺人事件(3)   完狂堂
★内容
 目の前でまたも、犠牲者が出ようとしている。
 緊急医療班が部屋に入り込んできて、慌ただしく中山氏を運んでいく様子が見え
た。
「容態が急変しているぞ、緊急医療室へ急いでくれ!」
 医者がまくしたて、中山氏は別室に運ばれていった。

 私たちは、完全に気力を失った。

 緊迫した空気がはりつめている。
 ふりむけば、後ろに「A.F」が凶器を持って立っているかもしれない。
 そう思うと、私はぞっとした。
「……」
 完狂堂氏はおし黙っている。
 しばらくしてから、彼は話をはじめた。
「もう、限界です。私は警察に行き、保護を求めます。胡桃さんも気をつけてくださ
い」
「ああ、そうだな。完狂堂さんも、身辺には気をつけて」
「では、今日のところはこれで」
「さようなら。御無事でいてください」
 彼との通信は、そこで途絶えた。

 翌日。私は中山氏と完狂堂氏の死を知った。
 というのも、「A.F」から、またもメールが届いていたからだ。私は事実を確か
めるすべを持たない。だが、状況から判断して、私は「A.F」が、二人を殺害し
た、と判断した。メールの内容は、このようなものであった。

メール(3):「期日が 迫ってきた 君の 友人 N K どちらも 死んだ K
の 死んでいく 様子を 見て欲しい 次は あなたの 番 酒が とても おいし
い A.F」
 メールの他に画像ファイルが数点、送られてきていた。
 内容を確認すると案の定、殺された完狂堂氏のスナップ写真であった。彼は白目を
向き、生首となってカーペットの上にころがっているようだった。あざやかな切り
口。臓物が腹からズルズルと引き出されており、ベッドにそれらが投げ出されてい
る。部屋中血塗れであった。
 何という残虐な手口。ひどい、と私は思った。

 ……私は警察署に趣き、保護を求める事にした。
 もう限界だ。私の精神はすり減り、今にも気が狂いそうであった。

 橋場由嘉里!

 そう、もう随分昔の話だ。あの時私は、由嘉里にそそのかされ、友人清田道助を殺
した。由嘉里と情交を重ねるうち、彼女はそんな話をもちかけてきたのだ。彼女は、
まさしく悪魔的な頭脳の持ち主であった。清田を彼女の指示通り毒殺すると、私は死
体をある場所に埋めた。正直言ってこの事件、警察は解決出来ないだろう……私はそ
う確信している。

 完全犯罪だ。

 清田殺害時は罪の意識に随分と悩まされたものだが、彼の由嘉里に対する態度を想
うと、少しは罪の意識もやわらいだ。仲の良い夫婦を演じていた清田夫妻が、どこか
別の地に夜逃げする……と言う筋書きだ。私は清田殺害後、九州に身を隠した。そこ
で由嘉里と落ち合う筈だったのだが、彼女は姿を見せなかった。……何の事はない、
私は彼女に利用されただけなのだ。しばらく九州に留まっていた私は、次第に不安に
なってきた。由嘉里は私に濡れぎぬを着せようとしている。あの女なら、やりかねな
い。
 今、私の命を狙っているのは彼女なのだ。

 警察官に事情を説明すると、彼は事務的にうなずき、私を部屋に案内してくれた。
 しばらくそこに留まっていると、一人の男が、ふらりとドアを開けて部屋に入って
きた。なんとその人物、殺されたはずの踏場綸太郎氏ではないか!私は驚きを禁じえ
なかった。
「踏場さん!何故、あなたがこんなところにいるんだ?あなたは確か、殺されたはず
だ!」
 私の脳細胞は目まぐるしく回転した。まさか、この男が一連の犯罪を企んだ張本人
なのではあるまいか。
「そうか!貴様が「ADC」殺人事件の犯人だったんだ!そうだろう?」
「……いいえ、胡桃さん。犯人は……あなたなのです」
 私は驚いた。何を言っているんだ、こいつは!私が「ADC」のメンバーを殺した
って?冗談じゃない!私が犯人のわけがないだろう?
 踏場氏はニヤリと微笑み、話を続けた。
「……疲れましたよ!ずっと調べものをしていたもので。なあに、別に警察に頼まれ
てやってるワケじゃありません。逆にこっちが頭を下げて犯罪ファイルを閲覧させて
もらったんですが……まったく労力のかかる趣味です!」
「何でアマチュア探偵のあんたが、そんな事出来るんだよ?」
「警察にはコネがありまして。親戚に、ちょっとした人物がおりましてな。調査する
うちに、こう結論したんですよ、胡桃さん。あなたは、清田氏、いや「清野道助」氏
を殺しましたね?死体はどこに埋めたんですか」
「……何を言っているんだ」
 私は踏場氏をじっと見つめた。
 すると彼は視線をそらし、窓の外を眺めた。
「ここからの景色は素晴らしいですねえ、胡桃さん」
「続けろよ。どこまで知ってるんだ?」
「まあまあ、先を急がないで下さい」
「いいだろう。こっちも聞きたい事が山ほどある。踏場、何故貴様が生きているん
だ?「A.F」の正体は、踏場、あんただったのか!?」
「「A.F」なんて、最初から存在していなかったのさ」
「しかし!美濃月さんは我々の目前で殺されたじゃないか!あれをどう説明する」
「嘆かわしい事だな。貴方ほど頭の切れる人物が、まだこのトリックに気づかないと
は」踏場氏、大きく嘆息した。

……はい、ここまでよ。(完狂堂)





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