AWC 「ティアフルガール(迷子少女)」 No1 大二郎


        
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★タイトル (AWJ     )  96/10/ 2  21: 1  (109)
「ティアフルガール(迷子少女)」 No1 大二郎
★内容


 青く、広く、きれいな海と、空。
 はてしない大草原にそよぐ、やさしい、かぞ・・・・。
 それは、失われてしまったかも、しれない・・・・けれど。
 多くの人達が、子供のころ、一度は心に描いて、
そしていまも、誰もが描き続けることのできる・・・・。
 それが、“ふぁんたじぃ”の、世界・・・・かもしれない。
 で、ここにも、そんなひとつの世界があって・・・・


 広い、どこまでも続くような大草原。
 そこに、一人てくてくというか、ぽてぽてというか、とにかくそんな感じで歩いて
いる、女の子の姿があった。
 ピタリ、と足を止める。
「あ、はじめましてなんですね。シュンリーの名前、雷迅麗(レイ・シュンリー)言います。た
しか、15歳でした」
 ・・・・自分のトシくらい、ちゃんと憶えておこうね・・・・。
「ごめんなさいです・・・・シュンリー、忘れっぽいです。だから、迷子になってしまい
ました・・・・でも、シュンリーは負けません! いつかきっと、おうちの人がむかえに
来てくれること、信じてる、です!」
 誰にともなく力説し終わるとまた、てくてくと歩き出すシュンリー。
 いっぽうそのころの、どこにあるのか判らないシュンリーのおうちでは・・・・
「やー、いいお天気だねぇ、お母さん」
「そうですわねぇ・・・・ほら、子供達もあんなにはしゃいで」
 窓の外で、4、5人の子供達が一緒に遊んでいるのが見える。
 さらに、父親が一人を背に負っていれば、母親は二人に乳を含ませているのである!
「うんうん、子供は元気なのが一番だ・・・・ところでお母さん、最近、うちの子の数が
足りなくなったような気がするんだがのー・・・・」
「あらおまいさんもですか? あたしも前から気になってるんですけどねぇ・・・・」
 ・・・・健忘症だな、一家そろって・・・・。
「まぁいいや、迷子ならそのうち帰ってくるだろう。それよりどうだい、もう一人、
子供はほしくないかい?」
「いやですよおまいさん、こんな昼間っから・・・・」
 ひどい親もいたもんである・・・・。
 そんなやりとりなど露しらず、シュンリーは今日も一人ゆく。
 やがて、草原は終わり、かなり大きく整備され、行き交う人や馬車の数もけっこう
あるような道に出た。
「あ、街道なんですね。助かりました」
 と、さっそく道ゆく人の一人に向かって、
「すみませんなんですねっ! シュンリーのおうち、どちですか?」
 と、大きく声をかけた。
 あ、呼び止められた男と女の二人連れ、そろってキョトン、としてる。
 そりゃそーだ。
「えっ? おうちって・・・・お嬢ちゃんのかい?」
 えーと、その、などと返答に困る男を情けなさそうに見やりながら、
「街のこと? それならあっちのほうが近いわよ。ただ、あたし達は寄らなかったか
ら、どんな街かわからないけど」
 と、女のほうがテキパキ答えたので、
「あ、どうもありがとうなんですね」
 じつにかしこまった感じでピョコン、と頭を下げ、さっそくそちらへ向かって、先
端を大きく結んだ長い黒髪をゆらしながら、駆けていってしまった・・・・。
「・・・・なんだ、ありゃ」
「さあね。でも、礼儀正しくていい子だったわね」
「そうだなぁ、小柄だけど可愛い顔立ちしてたし、なかなか俺ごのみ・・・・イテッ!」
 セリフの最後は、言うまでもなく、女につねられたせいである。
 さて、目標の定まったシュンリーを止めるのは困難である。
 障害物をたくみによけながら、名前のごとき迅さで、3分もしないうちに人の数は
増えていき・・・・5分ほどで、少し小さめながら活気のある街の入り口に着いたのだっ
た。
「ここ・・・・ちがいます」
 見覚えのない街だったので、少しガッカリしてるみたいだけど・・・・
「でもまあ、いいんですねっ」
 シュンリーは、強かった。
「はぁ、おなかすいたですね・・・・」
 と、食べ物を求めてキョロキョロしているところへ、
 ドシン!
 と誰かがシュンリーにぶつかった。
「あっ、これは失礼」
 そう言ったのは、見るからにみすぼらしい青年だった。
 ボロボロの、グレーのローブをまとい、両手に挟み込むようにして水晶玉を持って
いる。どうやらそれを覗きながら歩いていたらしい。
「きみ、大丈夫?」
 見事に、前のめりにすっ転んでしまっているシュンリーを見て、慌ててしゃがみ込
みながら声をかける青年。
「いたた・・・・へ、平気なんですね、シュンリー、ぼーっとしててごめんなさいです」
 ああ、なんてしおらしい・・・・
「い、いやそんな・・・・僕のほうこそちゃんと前を見てなかったから・・・・」
「あ、それ、あなたが悪いんですね」
 ・・・・でもないか。
 いきなり言いかえられて、青年も戸惑いぎみ。
「でも、べつに気にしないですね」
 にぱっ、と笑いながらそう言うシュンリーに、
「ははは、ごめんごめん」
 と、青年も一緒になって笑いながら素直にあやまった。
「けど、やさしい子だね、きみって」
「はい、それがいちばんなんですねっ」
「まったくだ・・・・そうだ、おわびのしるしに、一緒に食事でもどう? ぼくもちょう
ど、食べにいく途中なんだけど」
 うーん、なんて絶妙のタイミングなんだ(そりゃ小説だから)。
 シュンリーも喜んでます。
「あ、でもシュンリーお金ないですよ、お兄さんも皿洗い、するですか?」
「・・・・きみ、いつもそうやって食べてる訳?」
「はいですねっ」
 あっさり言ってのけるシュンリーに、青年は思わず吹き出してしまった。
「いや、こいつは一本とられた。そうか、そんな手もあったんだね」
 ・・・・なにが『その手』なのやら。
「まぁ大丈夫、こう見えても、一食おごるくらいの持ち合わせはあるから」
 それを聞いた途端、正直で素直なシュンリーの目の色は変わった。
「それ、はやく、いきましょうなんですね!」
 その小さな身体のどこにこんな力があるのかと思わせるほどの力で・・・・
「わっ、ちょっと、きみ・・・・」
シュンリーは、青年をヒョイと抱えあげてしまったのである。
「わあっ、これ、落ちるよ、大切なものなんだ」
 青年、水晶玉を落とさないよう必死でおさえながら悲鳴に近い声をあげる。
 しかしそんなもん、耳に入らないといった感じで、シュンリーは、
「お食事屋さん、どこですかあぁぁ・・・・」
 と、青年を抱えたまま、食事屋を求めて駆けだしていってしまったのだった・・・・。





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