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推理小説的読書法「『天使の歌声』」4 永山
★内容
放送局跡らしい頑丈な建物の一階に未希と勇生の二人はいた。未希は、勇生の
仕事に興味を持って、いっしょに中に入ってきたのだ。
勇生は、ころがっている残骸から使えそうな部品を取り外す作業をしている。
この仕事は小遣い稼ぎというより、根っから機械いじり好きでやっているといっ
た感じである。
そんな横で未希は、ぼろぼろの壁によりかかり勇生の様子を見ている。
「別に待ってなくてもいいんだぜ。」
「違うわよ。あなたとまともにお話がしたいだけ。たまには喧嘩抜きで話さない
と、あなたの事をどんどん誤解してゆきそうだから………」
「わかったよ。……それにしても水口も変わったよな………初めて見たときはど
っかのお嬢様かと思ったんだぜ。世間知らずで…見ていてひやひやするぐらい純
粋でさ……」
「ほんとうに何も知らなかっただけよ。だって………」
未希は、それ以上の言葉を続けることをためらった。なぜなら、自分の秘密を
話さなければなくなるからだ。今の未希にそれができるわけがない。
「……それがさ、たった一年でおれと対等に張り合えるようになるんだから、水
口もたくましくなったもんだよな。」
勇生は、未希の言葉に気づかなかったかのようにそのまま話を続ける。
↑「気づかなかったかのように」とは、実際は気づい
たんでしょうか? 読者の読むスピードを妨げる表現
「……………」
「まあ、そんな事は大きなお世話ってか?」
勇生は、作業を止めて未希の方を振り向く。
「ううん。確かにあたしは変わったと思うわ。いろいろな人に出会ったもん。あ
なたもあたしを変えた人間の一人ね。」
未希は微かな微笑みで勇生を見つめている。それは、感謝の意を込めてだとい
↑__↑「微」が続く。せめて「微か」は「かすか」にしてみては?
う事に勇生は気づいていただろうか。
「それって、誉め言葉にとっていいのかな?」
「あたしをこんなにわがままにしたんだから、誉め言葉なわけないでしょ。」
未希は茶目っ気たっぷりに答える。笑顔がこぼれそうなほどに。
「ちぇっ!いいんだ、どうせおれは悪者だよ。………でもさ、最近の水口って羨
ましいくらい生き生きしているじゃん。その方がおまえらしいと思うよ。おれも
さ、そういう水口が………」
好きだよ、そう言おうとして勇生はためらった。まだ、自分の気持ちに素直に
↑突然、勇生の心を覗けるようになっている
なれないようだ。そんな言葉を濁そうと、勇生は別の話題にふる。
↑また推測です。直前の文章では、勇生の心を覗いているのだから、
こちらも断定調でいいのでは? 余韻を残すためにどうしても推測の
形が必要であれば、例えば「まだ、自分の気持ちに素直になれないの
かもしれない」という風にしてみるのも一案ではないかと思います
「……話が全然変わるんだけどさ、そろそろ帰った方がいいんじゃないか?もう
すぐ陽も暮れるし………最近嫌な事件が流行ってるじゃん。うちの学校の生徒も
何人か殺されただろ。犯人は人間じゃないって噂もあるし、おれ一人じゃ守って
やれないよ。」
「大丈夫よ。……でも、そんなに心配してくれるなら帰ってもいいかな。」
未希は、寄りかかっていた壁から離れると腕を伸ばしながらそう言う。
「今日はいやに素直だな。」
「今日もよ。」
そう未希は強気で言うと、今度は少しためらいがちに勇生に質問をする。
「………あのさ………もし、あたしが………人間じゃなかったら……滝沢君どう
思う?」
「おれは、水口が虫一匹殺せるような性格じゃないって知っているから、別に恐
怖は感じないな。………それとも水口って二重人格?」
勇生は冗談まじりで笑いながら答える。ほとんど本気で答えていないようだ。
未希は複雑な気分でその言葉を受けとめた。しかし、すぐにその気持ちを心の
奥底へと押し沈め、いつもの爽やかな笑顔を勇生に向ける。
陽の暮れかかった空は、じょじょにまわりの空気に闇を融けさせていった。
「じゃあまた明日ね。」
未希は手を振りながら出口に出ようとした瞬間、勇生が小さく声を上げる。未
希にはそれが呼び止められたように聞こえ、思わず振り返った。
「なに?」
勇生は目をこすりながら不思議そうな顔をする。
「今、水口の目が黄金色に光ったような気がしたんだ……………………」
「まったく……いいかげんにしてよね。」
良子は陽も暮れかかったゴーストタウンのあるビルの中にいた。
彼女は無記名のラヴレターによって呼び出されたのだが、本人はそれがどうい
う意味を持つのかうすうす感づいているようだ。
「隠れてないで出てきたらどうなの?美奈子を殺したのはあんたなんでしょ!」
良子は、ポケットに忍ばせていたアーミーナイフを取り出しそれを手に握るが、
その手は恐怖を隠せないようで小刻みに震えている。
ふいに、開いていたはずの入り口のドアが急に閉まり、建物の中は闇と化す。
それと同時に浮かび上がってくる二つの黄金色の光。それはゆっくりと確実に
良子の目前へと迫ってくる。
「わかってるのよ!あんたが誰だか。」
恐怖に打ち勝とうと、良子は大声を張り上げる。
「……うふふふ………それがどうしたの?あなたはもうおしまいよ。」
その言葉と同時に良子の首もとを何かが掴む。人間の手のようだが、体温はほ
とんど感じられない。いや、恐怖で感じることができないのかもしれない。
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
↑ちょっと長すぎるような……
良子はなんとか逃れようと必死にもがくが、圧倒的な握力で喉にかかった手は
外れない。その内良子は手に持っていたナイフの事を思いだし、それを喉もとに
かかっている腕らしいモノに切りつける。
「…………!!」
良子は確かな手ごたえと、持っていたナイフを伝わって流れてくる血液を身体
で確認すると、最後の力を振り絞って喉もとにかけられていた手を振り払う。
はずみで倒れ込み、ぜーぜーいいながら喉を押さえる良子のもとへ再び二つの
光が襲いかかってきた。ナイフでの傷は致命傷どころか相手の動きを完全に止め
ることすらできなかったらしい。今度は後ろから首を掴まれてしまったようだ。
もうだめだ、と良子が心の中で呟いた瞬間ぱっと周りが明るくなる。誰か照明
をつけたようだ。
しかし、恐怖は去っていなかった。そればかりか、もう一つの恐怖を良子は味
わう事になった。
ナイフを持っていた右手についていたものは、人間の血液ではなかった。たし
かに血液のような体液であることにはまちがいないのだが、その液の色は鮮やか
な赤でも、どす黒い赤でもなかった。鮮烈な蛍光オレンジの液体が良子の瞳を圧
倒させている。
「………ひぇーーー!!!」
↑完全に個人的な好みの問題ですが、「ひぃーーー」ぐらいがよいか
と。「ひぇーーー」では、私、吹き出してしまいます
その恐怖が収まらぬうちに、だんだんと首にまわされた手の握力が上がってい
く。今度はほんとうにだめだ、と良子はあきらめようとした。
その時、どこからともなく一つの声が響いてきた。
「やめなさい!」
どこかで聞いたようなソプラノヴォイス。失いそうにな意識のなかで良子は思
↑入力ミス?
っていたのかもしれない。
良子の首を絞めている主はその声に振り返ろうとするが、その方向から光が放
たれているので眩しくて思わず手で顔を隠してしまう。
「おまえが今回の一連の事件の犯人か?」
携帯用の小型蛍光ランプを良子達にあてているのは勇生であった。
「もう目が慣れたでしょ?さあ、手を下ろして顔を見せて。」
そして、勇生より一歩前へ出て犯人を睨んでいる未希の姿も見える。その姿は
りりしく、いつもの穏やかな未希の姿はうかがえない。その場の緊張した雰囲気
が、未希をそうさせたのだろう。
↑ここまでは未希達の心理に入らず、↓次からは入っている
二人は良子の悲鳴に駆けつけてきたのだ。
犯人はゆっくりと手を下ろしていく。背は案外小さく、倒れ込んでいる良子よ
り少し低いぐらいで、髪はロングの黒髪である。どうやら少女のようだ。
その手がさらに下に下りたところで、未希の表情が急に変わる。その少女の顔
↑「下」が重複。「その手がさらに下りた」でいいのでは
に、未希は確かに見覚えがあったのだ。
ゆっくりと、その少女に近づいていった未希は、その記憶が正しい事を確認し
た。
「………翼ちゃん…………翼ちゃんなの?………」
翼の表情は別人のように冷たい。鋭い視線は未希に向けられているが、その目
はまるで初めて未希に会ったような感じである。
「あなたは誰?」
未希の事がまったく記憶にないようだ。ほんとうにこれは翼なのだろうか。そ
ういう疑問が未希の心に引っかかった。
「あたしは未希よ。あなたは翼ちゃんよね?」
「……………」
翼は無言で未希を見つめる。未希の言葉にまるで反応がない。おそらく無意識
状態なのだろう。
「………翼ちゃん…………」
未希はあまりにも意外な真実に少し戸惑いを見せていた。翼の事をすべて知っ
ているわけではないが、少なくともここにいる少女は、タワーで自分の想いを未
希に語った翼ではないはずだ。そう未希は心の中で必死に信じていた。
「水口さん、気をつけなさい!美奈子や他の子達を殺ったのはこの子よ。それに
この子は人間じゃないわ………これを見なさい。」
勇生に抱き起こされた良子は、右手を未希の方に上げ、翼の顔を睨みながら叫
ぶ。その手には、翼の傷口から吹き出たオレンジ色の体液がこびりついていた。
「あの子の血よ。坂上翼は人間じゃない………化け物よ!」
その良子の言葉に反応して翼の表情が急変する。
↑私の基準では、ここ、翼の心理に入っています。私がこ
こを書くとすれば、「途端に、翼の表情が急変する。良子
の言葉に反応したらしい」という風になります。参考までに
逆立つ黒髪……額や頬の部分に浮き出る血管……魔人のような怒りの形相……
そして不気味な唸り声。さらに右腕の皮膚の色がどす黒く変わり出す。
もう、いつもの愛らしい翼の姿をうかがうことはできない。完全に別人と化し
ていた。
「翼ちゃんやめてー!」
未希の制止の声は間に合わなかったようだ。勇生を突き飛ばし、良子の首を左
↑好みの問題ですが、「聞こえなかった」「届かなかった」
の方が、「間に合わなかった」より情緒的では?(^^;)
手で押さえて吊るし上げる。翼の背の高さの関係上、良子はつま先立ちの状態と
なっている。その、もがきながら苦しんでいる良子の耳に翼の声が入ってくる。
「あなたはあたしに恨みでもあるの?あたしはただ歌が歌いたいだけだった。そ
れなのになぜあたしを妬み蔑むの?あたしが何か悪いことをした?あたしが嫌い
ならあたしにかまわないで…あたしの邪魔をしないで!」
翼をそう泣き叫ぶと、挙げていた左腕を降ろし黒光りする右手で良子の顎を掴
↑「は」の入力ミス?
む。
「……あ…あたしが悪かったわ。あなたにちょっかいを出した……いえ、いじめ
たのは、あなたの声がうらやましかっただけなのよ。一年生のくせに男の子の注
目を集めていたのが気に入らなかったからなのよ。……ごめんなさ………」
右手の握力が上がっていく。これ以上力を加えれば顎が砕けてしまうだろう。
「だめー!」