AWC ビバ・チャモロ!                ほりこし


        
#2219/3137 空中分解2
★タイトル (NEA     )  92/10/ 2   6:23  ( 57)
 ビバ・チャモロ!                ほりこし
★内容

 僕はロビーにのソファーに座り、一人考え込んでいた。
 ここはグアム島のリゾートホテルである。
 ロビーのガラス越しには、プールが見え、その奥には木立の向こうにタモンビ
ーチにが黒く静かに波打っていた。
 僕が柄にもなくこのホテルにいるのは、僕がある新聞販売店の配達員をしてお
り、2年間奨学生を勤めたというので、無償で団体で連れて来てもらっているか
らだ。
 しかし、僕は少しも嬉しくなかった。
 それは、昼間見た浜辺の光景が原因だった。
 タモンの浜辺は巨大なジャンボ機が運んで来た日本人の若い女性、アベック、
家族連れであふれかえっていた。はしゃぎ、騒ぐ、日本の観光客に圧倒され、地
元のチャモロ族の人たちは、逆に小さくなって泳いでいた。
 その姿に僕はなにかあわれみを感じたのだった。
 「本当はあなた達の浜辺なのに……」
 日本の資本はホテル、労働力を買いあさってしまい、本来なら静かであるチャ
モロ族の浜辺を、日本人の観光客が占領してしまっている。
 僕は、僕自信も含めて、日本人観光客に怒りを感じていた。

 耳をすますと音楽が聞こえてくる。それは地下のレストランからのもので、
しばらくすると強烈なタヒチアンのリズムなのがわかる。
 僕が一人すねたようにここにいるのは、その音楽のせいだった。
 「笑顔なんか嘘だ。もういいんだ君たち、そんなにまでしなくたって!」
 夕食後のディナーショウを見ながら、僕は心の中でそう叫んでいた。
 舞台の上ではチャモロの四人の青年が腰に布を巻き付けただけの裸同然の格
好で踊っている。昔の戦いの踊りなのだろう、長い棒を持ち、それを打ち付け
合い、ときおり奇声をあげる。
 彼らは何を思っているのだろう。
 「無理に野蛮なまねをしなくたっていいんだよ」
 「口元をほころばせないと、経営者からクレームでも出るのかい?」
 「お金のためだから、仕方がないのかい?」
 昼間の浜辺のこともあって、ショウを見るのが嫌になってきた僕は、仲間にト
イレに行くと告げ、そっと席を抜け出したのだった。

 ロビーは静かだ。
 タヒチアンのリズムはまだ続いていて、それにまじり電子音が聞こえてくる。
音は近くのゲーム室からだと気づき、僕はその部屋に向かった。
 中には10台ほどの日本製のテレビゲームが置いてあり、その中の一台「ギ
ャラクシアン」で青年が一人遊んでいた。音はそこからだった。
 ホテルの従業員で仕事の帰りなのだろう、インジコのTシャツにジーパン姿
の青年は肌が浅黒く一目見て、チャモロの人だと分かった。
 画面では、編隊を組んだエイリアンが次々と襲いかかる。それを青年は目にも
止まらぬ速さで撃ち落としている。
 スコアは軽く28万点を超えていた。
 僕が「ユア スコア?」と聞くと、
 「イエス」
と、青年は笑った。
 僕もありったけの笑顔を返した。

 僕には青年が日本製のゲームではなく、日本そのものと戦っているように思う
事にした。日本のお金、砂浜を占領する日本の家族連れ、アベックを次々と撃ち
落としているんだ。そう思う事によって、僕の気持ちが少しずつ晴れて行くよう
な気がした。
 しばらくそれを見ていると、胸のイライラがすっかり消えているのが解った。
 「サンキュー バーイ!」
 青年にそう言って、僕は仲間のいるレストランに向かった。





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