#479/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (NNH ) 87/11/10 17:59 ( 92)
『ある雨の日に……』(5)磯崎節子・一宮ゆかり・小嶋淳
★内容
ある・雨の日に……
原作 磯崎節子
一宮ゆかり
著作 小嶋
5
土曜日の4時限目が終わると、長かった1週間がやっと終わる。
「あーあ。やっと1週間が終わった。よーし、明日は寝るぞー」
「私は遊びまくるんだ!」
「私、残念ながらバイト。つまんないの」
「久美は? 聞くまでもないか」
「嫌がらせなんか2人の愛には関係ないんだもんね」
由美子が冷やかす様に言った。
「まだ嫌がらせされるの?」
「心配してくれてありがとう、さっちん。大丈夫よ。前よりかなり少なくなったし」
「ねえ、久美。もう噂聞いた?」
「えっ何? おケイ。もう一回言って」
「みんな、もうお昼食べに行こうよ」
幸子が口をはさんだ。久美に気を気かせたつもりなのである。
「あーあ、美味しかった」
「もうおなかいっぱい」
「ねえ、おケイ、噂ってなんなの?はっきり教えてよ」
圭子は幸子の顔を見た。幸子は仕方ない、言いなさい、という表情をした。
「あのね、2組の子で最近やたらと達也君と仲の良い子がいるんだって。2人は付き合
っているんじゃないかってもっぱらの噂なんだけど……」
「久美、気にすることないよ。あくまで噂なんだからさ」
「……私、この目で見ない限り信じない。達也君からはっきり聞かされるまで信じない
……」
「ね、明日のデートはどこ行くの?」
由美子が気を気かせて話題を変えた。
「うん。映画でも観て、お昼食べて、海にでも行って……」
「やっだぁー! ワンパターン」
「どうして?」
「それじゃー、他の人と変わんないじゃない」
「だめね、ゆっ子。久美はゆっ子みたいにデート慣れしていないんだから」
「それもそうね。まっネンネの久美ちゃんにはその程度がお似合いかもね」
「ひどーい! 私はゆっ子みたいに1回きりのデートでハイさようならなんてことに
ならないもんね」
「あっ! 人の1番気にしていることを!」
その時、先頭を歩いていた幸子は、達也と女の子が一緒に歩いているのを見付けた。
「あっ」
と、喉まで出かかった声を無理矢理呑み込んだ。のだが……。
「あれ、達也君と噂の彼女じゃない?」
と、圭子が声を出してしまった。
「えっ!」
久美は仲良さそうに歩いて行く達也と女の子を見付けたが何も言葉が出てこなかった
。
駅まで4人は黙りこくって歩いた。駅に着くといつものように2手に別れた。
「久美、おケイも悪気があって言ったんじゃないんだからさ、許してやってよ」
「うん。わかってる。私、全然気にしてないよ」
久美は無理に顔を作ろうとした。
「久美と達也君はとても似合ってるわ。達也君には久美以上の人なんているわけがない
よ」
これが幸子の精一杯の慰め方だった。しばらくの間沈黙が続いた。
「私、帰るね」
久美は幸子がさよならを言う間もなく、走って行ってしまった。
2人は駅前10時に待ち合わせた。久美が駅に来た時はまだ達也の姿はなかった。
こと10分。達也は照れ臭そうに現われた。
「ごめん。待った?」
久美は首を振だけだった。久美は昨日のことが頭からはなれず、もやもやした気分だ
った。
「じゃ、行こうか」
達也は歩き始めた。久美はただその後をついて行くだけだった。
2人が映画館から出てきた時はもう昼過ぎであった。
「何かあったのか?」
「どうして?」
いくら明るく見せようとしてもできなかった。
「なんとなくそんな気がしたんだ」
「別になんでもない。ねえ、昨日部活遅くまでやってたの?」
達也は戸惑った。
「あっああ。ごめん一緒に帰れなくて……」
「ううん。私はさっちん達と帰ったから……」
「久美。もっと上行って見ようぜ」
「ねえ、達也……」
「ん?」
「……昨日、誰と歩いてたの?」
「なんのこと……だよ」
「どうして……どうして自分から言ってくれないの? 特別な関係の人だからなの?
「……た、ただの友達さ」
「だったら何故嘘付くの?何故隠すの?」
2人共黙ったまま歩いた。ふと久美が立ち止まると、
「私、帰る」
と言ってとも来た道を下り始めた。達也は止めようとはしなかった。
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