#478/1850 ＣＦＭ「空中分解」
★タイトル (NNH ) 87/11/10 17:54 ( 94)
『ある雨の馴冾ﾉ……』（４）磯崎節子・一宮ゆかり・小嶋淳
★内容
ある・雨の日に……
原作 磯崎節子
一宮ゆかり
著作 小嶋
４
「さて、そろそろ帰りますか」
幸子は立ち上がった。
「あれ！ もうこんな時間」
由美子と圭子も立ち上がった。
「えー、もう帰るのぉ」
久美は、暮s満そうである。
「久美、帰んないの？」
「あっ、彼を、待っている訳ね。お熱いことで」
「こんなことになるんなら、あんなゲームしなきゃよかったね」
と、ゆっこは、おケイの顔を見た。
「まったくだ」
「えへ」
と、久美は、舌を出した。
「本当に、久美と達也君が、こんなにうまくいくなんて思わなかったな」
幸子は、黒板に、相々傘をかいた。
「それじゃ、頑張ってね」
と言うと、ニヤニヤしながら出ていった。
「ｂｙｅ、ｂｙｅ」
夕暮れの教室は、ガランとしていてやけに淋しくクラブ活動の声だけが響いていた。
久美は、時計を見た。５時、そろそろ部活の終わる時間である。久美は鞄を持つと、
急ぎ足で教室から出ていった。正門で待つこと、１５分。やっと達也が出てきた。
「やあ。こんな所で何してるの？」
久美は、赤くなってしまった。
「その……一緒に帰ろうと思って……」
「待っててくれたの？」
久美が、コクンと頷くと、達也は、
「じゃあ、行こうか」
と、優しくいった。春とはいえ、まだまだ寒い日が続く今日此の頃である。
日曜日といえば、誰もが遊びの計画を持っている。久美も例外ではない、今日は達也
とのデートであった。
改札口を抜けると、達也が立っていた。約束の時間の20分も前である。
「どうしたの、達也？ こんなに早く」
「やあ、その……早く会いたいと思ったもんだから……」
「もし、私が時間通りに来たら、いくら早く来てもなんにもならないじゃないの」
「まあ、そうなんだけど……」
「ありがとう、すごく嬉しい」
「……どこ、行こうか」
「遊園地！」
楽しい一日だった。
「ねえ、久美。昨日デートだったんでしょ？ どうだった？」
「そうよ。詳しく話しなさいよね」
「遊園地行ったの」
「遊園地ィー！？ ガッキー！ どうせ又、久美が言い出したんでしょ」
「うん。そう……でも楽しかった」
「で？」
「うん、うふふー。私に早く会いたいって思ったらじっとしてられなくなったんだって
、20分も前に来てくれたの」
「ああ。こりゃダメだ。熱くって聞いてらんない。みんな帰ろ」
そう言って幸子が立ち上がった。
「人の惚気なんか聞いたって、何も面白くなんかないもんね。帰ろ帰ろ……」
由美子と圭子も立ち上がった。
「待ってよー私も帰る」
「彼を待ってなくていいの？」
「うん。今日は遅くなるから先に帰ってろ。だって」
「……」
４人はワイワイ騒ぎながら下駄箱の所にやってきた。
「あれ？」
「どうしたの？ 久美」
「手紙じゃない。ラブレターかもよ」
「開けてごらん」
「うん」
読んでいるうちに久美の表情が変わってきた。
「どうしたの？」
「う、ううん。なんでもない」
「嘘。見せてみなさいよ」
幸子は、久美から手紙を取り上げた。
「何これ！ 嫌がらせの手紙じゃない」
由美子と圭子も覗き込んだ。
「なになに……私は達也のこと中学の頃から好きです。貴方が達也の彼女だなんて絶対
認めない。貴方なんか大嫌い。どこかに消えてしまえ！……なにこれ！ ひっどーい
「達也君もてるからね。この手の物多いんじゃないの？」
幸子が心配そうに久美の顔を覗き込んだ。
「うん、いいの。私、彼を信じてるもん。それにみんなもついててくれるし。こんなこ
とで別れたりなんかしないよ」
「そうだそうだー、久美頑張れー」
由美子と圭子が茶化す様に言った。
「こら！ 茶化すんじゃないの。それにしても久美。本当に平気なの？ なんな
ら達也君に言ってあげようか？」
「ありがとう。でもいいの。これくらいの覚悟がなきゃ、達也君の彼女になんてなれな
いもの」
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