#2219/3731 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 22/05/23 19:35 ( 25)
倫理と論理 永山
★内容
NHK−BSプレミアムで放送のヒッチコック映画「私は告白する」(米国 一九五
三年)を録画視聴。ネタバレ注意です。
覚えのないタイトルだったので観たことのない作品か、それとも観たのを忘れている
だけかと、変な意味でドキドキしましたが、初見でした。(^^)
物語で描かれる状況をざっと記すと、主人公は神父で、ある男からの告解で殺人を犯
したことを打ち明けられる。神父は職業上、他言できない。が、あろうことかその殺人
事件の最有力容疑者にされてしまう。さらに犯行時刻のアリバイについて、神父は人に
言えない秘密を抱えていた。二つのジレンマに苛まれ、苦しむ神父はどうなるのか?…
…ってな具合でした。こういう巻き込まれ方ミステリにおける、主人公がにっちもさっ
ちも行かなくなる流れはさすがヒッチコック、手慣れたものだなと思わされます。
ただ、全体にストレートに過ぎる感あり。神父のアリバイには既婚女性が関わってい
て、女性の苦悩も描こうと思えばいくらでも描けそうですが、かなりあっさり短めに処
理し、女性は神父のために事実を明かすのを厭わないと決心するのが早い。
裁判が始まり、陪審員が評決を出すまでも結構駆け足。しかも、観る限りではどちら
かというと有罪が出そうなのに、無罪評決。この辺りの早い展開は、続くのクライマッ
クスのためという気がしました。
神父に告解しておきながら神父を陥れようとする犯人が、最後に来て急に改心したよ
うな台詞を吐くのも同様だし、アリバイ証人の女性が、ラストの直前で「帰りましょ」
と夫と一緒に退場するのは何だか奇妙に感じる。視聴者としては、このあとの女性と神
父の話が知りたいのに。
で、まあそういう駆け足感からのすっぱり終わるのは、よくも悪くも当時の映画らし
いと言えばらしいのかな。色々手を加えたら、ミステリとしても物語としても傑作にな
っていたポテンシャルは秘めていたんじゃないかしらん。
ではでは。