AWC DでもSでも   永山


        
#1793/3622 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  21/05/14  16:57  ( 42)
DでもSでも   永山
★内容
 BSトゥエルビで放送の松本清張ドラマ「Dの複合」を録画視聴。ネタバレ注意で
す。
 原作の同名小説は例によって未読ですが、タイトルの意味するところは何かで見聞き
した覚えがありました。たいしたものではなく、度数だの死だのを英語にしたときの頭
文字がDで共通しているというこじつけなのに何故か覚えている。線(経線・緯線)や
死をそのままローマ字にすればどちらもSが共通するから、「Sの複合」でもいいや
ん、とか思ったり。
 船舶をわざと遭難させて保険金を詐取していた会社。その秘密を知る機関士を始末す
る必要が生じた社長は、船員三名に命じて実行させる。周りが海で天候も荒れているの
に、わざわざ刺し殺してから投棄するという犯行手段がよく分からない。事故死に見せ
掛ける方がよほどいいだろうに。さらに言えば、悪事を知る一人の口を封じるために、
三人を悪事に巻き込むというのも本末転倒感があるような。で、その殺人の罪を船長に
着せる。船長には何ら恨みはないみたいだけど、何で濡れ衣を着せた? ほんと、事故
死に見せ掛ける方法を選択しなかったせいで、ややこしいことに。
 結果、実行犯の一人が自責の念から、墓前で会った船長の息子に真相を語り、息子は
仇討ちを果たそうとする。
 その復讐の段取りがまた迂遠で、こんな手間暇掛けるか?と疑問に感じるくらい。ま
ず、復讐相手の男が経営する出版社(グループ企業の一つ)に入社。これだけでも結構
大変だと思うけど、大きくはない出版社みたいだから何とかなるか。あるいは別のグ
ループ企業でもいいからとにかく潜り込めたらいいという考え方だったかも。
 それなりに名のある純文学作家を動かし、紀行文を書かせる。その際、社長へのメッ
セージとなるよう、テーマや取材先を誘導する。
 このあと船長の息子が元々はどうするつもりだったのかは不明。予想外の人物が絡ん
できて社長が思い違いから殺人を二件、起こしたため、計画は大なり小なり変更せざる
を得なかったはず。船長の息子は社長に対し自分の正体を明かし、船舶遭難の諸々と殺
人三件について告発すると脅す。孫娘の挙式が迫っていた社長は三日待ってくれと土下
座。孫娘の花嫁姿を見届けた跡、事故を装った自殺を遂げる。もちろん、船長の息子と
しては最初から自殺するよう、話を持って行った。
 ここでも疑問が。社長は過去の秘密を暴かれることを危惧して二人を殺しておいて、
三人目となる船長の息子に対しては殺そうとしなかったのか。船長の息子の方も、特に
対策していたようには見えなかったし。
 船長の息子が真相を知ってから四年経っているのですが、知った段階で生き証人を説
得して、社長を社会的に抹殺する方向もあったんじゃないかしらん? その一年後には
生き証人は心筋梗塞で亡くなるのですが、急げば間に合ったはず。と同時に、いくら真
相を白状してくれたとは言え、実行犯を完全に許したらしいのもちょっと解せないとこ
ろです。
 こんな具合で、いびつな印象を受けた物語でした。
 収穫は、数字に強い執着を持つ女性キャラの動かし方。サヴァン症候群的なこの人物
を、読者にそれと明かさずに動かすことでミステリアスさ以上の不気味さがあったし、
事件が思わぬ形で展開していったと言えます。

 ではでは。





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