#486/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (NNH ) 87/11/10 18:27 ( 77)
『すくらんぶる交差点』 (6) 小嶋 淳
★内容
すくらんぶる交差点
小嶋 淳
6
宏美とバッタリ、の翌々日、久し振りに予備校に足を運んだ。
珍しく軟派芹沢も来ていた。
それともおれが珍しいのかな。
だって奴は、この予備校の女の娘を全て把握して、取っかえ引っかえ最近やっている
らしいからな。
「よ、元気してた?」
週刊紙に目を落としたまま芹沢が言った。
「ま、何とか」
なんて、いい加減に返して、美樹本の隣に腰掛ける。
毎日真面目に通ってるわけじゃないからさ、何処となく教室としっくりこなくてさ。
あれ? こんな所にこんな物あったかな?
なんて教室の中を眺めていると、
「お前、似てきたな、芹沢に」
美樹本がヘッド・フォンを外しながらつぶやいた。
「ばかいえ」
「一昨日、一緒に歩いてたろ? またあの娘と」
「ん、まあな。早いな」
「そりゃおれ達は、こういった情報に関しちゃ『CIA』だかんな」
芹沢が口をはさんだ。
奴が加わると分かる話まで、分からなくなるんだ。
でもなんで美樹本が……?
「あ、宏美だろ? 情報源は」
「当たりぃ。西川、落ち込んでたぞ」
「で? 女好きが似てきたとでも言いたい訳?」
「お、またまた大当たり。冴えてるねぇ、今日は」
あー、頭痛が痛い。
「何人目だよ、お前」
「あのなぁ、芹沢なんかと一緒にしないでくれる?」
「あ、『なんか』とはなんだ。なんか酷いな君達。おれのこと偏見してないか? お
の場合、『恋愛ゲーム』を楽しんでいると言って欲しいな。愛はゲームの笑っちゃいま
す、さ」
……また頭痛が。
こんな友達持つんじゃなかった……。
「確かに偏見の目で見てるかもな。実際はもっと女癖が悪かったりして」
美樹本が鋭く返し、おれがうなずく。
「ま、君達にも分かる時が来るさ」
芹沢は、また週刊紙に目を落とした。
「あ、だから、お前とあの娘が仲良くしてるとこ見せられちゃたまらんぜ、西川が」
美樹本は、マジな顔をしてそう言った。
「見せたくて見せた訳じゃないぜ」
「ま、いいけどね、おれは関係ないから。でもよ、少なからずお前が西川のことを心に
止めてるんだったら……。素直になれよ」
「御忠告には痛み入るけど、生憎おれと宏美はそんな関係じゃないから」
「なんて言うか、ひとりの女の娘に縛られるのは好きじゃないしさ」
美樹本は、呆れてた。
美樹本や芹沢と別れた後で、おれは駅前の電話BOXから、宏美にダイヤルした。
10円玉がカタンと落ちると、
「はい、西川ですけど……」
と、耳慣れた声が聞こえた。
「あ、宏美? おれおれ」
忙しなく自己主張をする。
「なんだ、伸君?」
思っきりブリッコしてた声が、急に不機嫌そうになった。
「今日講習サボったろ? どうしたんだ?」
「気になる?」
宏美が、ちょっと意地悪く答えた。
負けるもんか、グスン……。
「あ、いや、そういう理由じゃないんだけどさ」
つまり、そういう理由なんだけど……。
「ちょっと、駅まで出てこないか?」
「うん、気が向いたら、ね。じゃ」
「おい、ちょ、ちょっと……」
宏美は冷たく電話を切った。
で、おれは、
(来るんじゃないか、な)
という希望的観測のもと、BOXにもたれて宏美を待った。
…To be continued−