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★タイトル (AWJ ) 97/ 1/14 14:32 (121)
「続・ティアフルガール(迷子少女)」No5 大二郎
★内容
その頃カイはと言うと・・・・
「・・・・おーいシュンリーってばぁ、どこに居るんだぁ・・・・」
まだシュンリーを捜していた。
ここはお城の裏手。森の木々に囲まれた城壁に、裏口か何からしい木の扉がひとつ、
ポツンとあるだけの、寂しいところである。
「もー、またどこか遠くにいっちゃったんじゃないだろーなぁ」
と、カイが独り言にそうつぶやいた時。
ドンドン! ドンドン!
と、その扉が、内側からハデに叩かれる音がしたので、カイは眼を丸くして足を止
めた。
ほかにも、
「ちくしょ、鍵かかってる」
「当たり前だろ、早くさっきみたいに開けろよ」
ワーワー、キャーキャーと騒ぐ、子供達の声もした。
ちょっとの間があって・・・・
バン!
と扉が外へ開いて、ドドッと数人のだったけど、その中に・・・・
「ああ! シュンリー、こんなとこに!」
やっとシュンリーを見つけてそう叫んだカイには目もくれ・・・・ないだけならまだい
いけど、ドンと突き飛ばして、子供達は一目散に逃げていく。
いちばん後の子が向こうの角を曲がるのと、開いた扉の中から、
「こらーっ! 待ちなさーいっ!」
と叫びながら、ドタドタと、黄色主体のドレスを着た女性が飛び出してくるのと、
ほぼ同時だった。
でもその逃げてく姿がチラッと目に入ったみたいで、
「ああ、逃げられちゃった」
と、あきらめ良く、その場で腰に手をあてて息をつく。
「もう、今度見つけたらタダじゃすまないわよ。その場で絞め落としてやるから!」
と意気込んでから、やっと「あら?」と脇で尻もちをついてるカイに気付いて、
「ご、ごめんなさい、あたしったら・・・・オホホホ」
「はあ・・・・」
と、その大柄で、ついでに胸も大きいけれど愛敬のある顔立ちの女性の様子に、な
んとも圧倒され気味のカイだったけど、気を取り直すと、
「あなたがファズタ先生・・・・ですね?」
ときいた。
「はい・・・・ああ、ご挨拶が遅れてすみません、ちょっと用事で朝食の席に出られなか
ったもので・・・・」
扉を閉め、鍵をかけながら、身体に似合わず子供っぽい声でファズタ先生(22歳)
がそう言うと、
「いえそんな・・・・先生のお仕事も大変でしょうから」
なにかコンプレックスでもあるのか、必要以上に恐縮してしまうカイ(年齢不祥)
であった。
それから、ふと思いついたように、
「ここって、どれくらいの子供達が居るんです?」
と訊ねてみると、
「48人です。乳幼児の男の子と女の子が一人ずつ、3歳から5歳までの子達が10
人・・・・かな? 6歳から13歳くらいの子供が一番多くて・・・・ヒのフのミ・・・・と・・・・
25人で、それ以上が残りの11人ですね。みんな16歳で卒業・・・・ここを出て、思
い思いの土地で自立していくことになります」
と、即答してしまうファズタ先生。それからふと気がついたように、
「中にはあたしみたいに、そのままここに残っちゃうような子も居ますけど」
と付け加えた。
「あ、先生はここの卒業生なんですね」
納得のいったらしいカイくん。
「はい・・・・あの、あたし仕事がありますからこれで・・・・どうぞごゆっくりしていって
下さいね」
鍵をかけ終えると、なんだかカイの前に長くは居たくないような様子で、そそくさ
と行ってしまうファズタ先生であった・・・・。
それを見送って、カイがポツリと。
「・・・・たしかに、ちょっと気になるかな」
「なにが、なんですか?」
不意に頭上から、聴き慣れた終わりの上がるイントネーションが降ってきて、カイ
はびっくりした。
「あっ、シュンリー! いつからそんなとこに・・・・」
見上げれば、お城の裏に面した部分にはベランダがあって、そこの手すりから頭だ
けのぞかせているシュンリーの姿があったのでした。
「さきから、ずといましたよ」
エヘヘ、という感じで笑いながら言うシュンリー。どうやらご機嫌は直ったと見え
てとりあえずはホッとするカイ。
そんなカイの前に、シュンリーはピョーン、とベランダから飛び降りて、とんっ、
と地面に降り立った。10.00。
「まったく・・・・身が軽いね。でも、どうしてあんなところに?」
「おにいさん、シュンリー捜してたんですね」
カイくん、言われて「あっ、そーか」と気付いたみたい。
「居なくて、よかったですか?」
「い、いや、良かった、助かったよ、うん」
いつものことながら、すぐシュンリーのペースに呑み込まれてしまうカイくん。
「でもなんですねー・・・・」
「え?」
いきなりシュンリーが、両手を腰の後ろで握るような格好でくるりと背を向けて、
しみじみと言ったので、カイはちょっとドキッとした。
「おにいさんもこけこっこな“ぷれいぼーい”なんですねー」
・・・・けっこうな、でしょ。
「・・・・どこでそんな言葉覚えてくるんだか・・・・って、ちょっと、人聞きの悪いこと言
わないでよ」
心外なご様子のカイくん。
「もてるおとこ、つらいですよ」
まーいいからいいから、とでも言いたそうな様子に、カイはさすがになんだかいや
な予感がしてきた。
「あのねー、ぼくがフレイア先生やファズタ先生と話すのは、別にそういう下心があ
ってのことじゃなくて、ただの社交辞令・・・・」
そんな単語を使っても、シュンリーにどこまで通じるか判らないということに気付
かないらしいカイ。
「おにいさんはファズタせんせがおきにいりで、シュンリーはいつか、みすてられる
んですねー・・・・」
るーるるー、と、いっそうしみじみとつぶやくシュンリーに、
「だーっ! ぼくがあの先生が気になるっていうのは、フレイアさんにあの先生の動
きに注意してほしいって頼まれてたからで・・・・」
「そなんですか?」
パッと振り向くシュンリー。その表情は別にいつもと変わった様子も見えなかった。
「そーなの! それにシュンリーのことはちゃんと家に送り届けるまでずっと一緒。
見捨てたりするわけないって!」
はあはあ、と荒い息をつくカイくん、ハッと我にかえり、
(い、いけない・・・・血圧が上がってしまう)
しかしシュンリーはそんなカイの心労にはとんと気付いた様子もなくにぱっと笑い
ながら、
「それ、ゆびきりなんですねっ」
と、小指を立てた右手を差しだしたので、カイはしかたなく自分も右手を出して、
シュンリーと小指を絡めた。
『ゆーびきーりげーんまんうーそつーいたーらはーりせんぼんのーますっ、ゆーびき
ったっ』
意外ときれいなハーモニーを奏でた指切りが終わるとシュンリー、今度は人差し指
を上に立てて、
「うそつかない、二番めにいいこと、うそつくのはいちばん悪いことなんですね・・・・
シュンリー、ぜったいにゆるさないですよ」
「わ、解ってるよ・・・・まったくだねー、あはは」
ずっと年下の女の子に説教されて、笑ってごまかすカイだった。
まー、ときに見られる大人と子供の図・・・・かも、知れない。