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★タイトル (AWJ ) 97/ 1/14 14:31 (103)
「続・ティアフルガール(迷子少女)」No4 大二郎
★内容
「ほらぁ、さっさといきなさいよ、ジャン」
「わかってるってば。そうせっつくな」
と、先頭を歩く二人を見て、
「ほんと仲がいいわよねー、あの二人」
と、もう一人の女の子が、やっかみ半分に口を開いた。
「なんだよ、オレに不満でもあるみたいな言い方して・・・・」
彼女のパートナー役である少年は、ちょっと不機嫌そうな顔になる。
が、それよりもっと面白くない人間も居た。
「・・・・ったく、少しはこっちの身にもなってよね・・・・」
あの、上でシュンリーに声をかけてきた女の子である。
このコだけ、“お相手”の男の子が、急病で寝込んでいるらしいのだけど、どうい
うわけだか今日に限って、この地下への監視の目が薄かったので、ちょっと無理をし
て敢行した、ということらしい。
で、とりあえず数だけでも合わせよう、ということで、シュンリーに声をかけたの
だけど、やっぱり女の子どうしじゃ、いまいちノリが悪いようだった。
もっともシュンリーのほうは一人で、
「どきどき」
とでも言いたそうな顔して、前の二組のアベックのやりとりに見入ってて、それな
りに楽しそうだったけど。
「キャッ!」
と、不意に、先頭の女の子の声が上がった。
「いったーい・・・・なによ、これぇ」
「どうした?」
男の子・・・・ジャンくんが、少しつっけんどんに声をかけるので、
「少しは心配くらいしなさいよ! いたた・・・・」
と女の子が抗議の声を上げる。
「なんだ、転んだのかよ。暗くて判らなかった」
と、ジャンくん、ちっとも悪びれずにそう言って、その場に屈み込んだ。
「ほら、見せてみろよ」
「い、いいわよ別に・・・・」
と、普段は強がっていそうなあねごさん肌の女の子、いざ強引に足首を取られると、
途端に弱気な声を出す。
で、ジャンくんが優しく足首を動かし始めると、もう何も言わなくなった。
「・・・・大丈夫、怪我はしてないよ。立てる?」
と、ジャンくん、先に立って手を差し出す。
「う、うん・・・・キャッ」
その手に引かれて立ち上がった女の子、少々わざとらしかったけど、前のめりによ
ろけた。
で、当然ジャンくんがその身体を抱き止めることになって・・・・。
数秒の沈黙が、暗い地下を支配した。
「ハクショッ!」
という、シュンリーのクシャミが起こるまで。
「あ、ごめんなさいですね。どぞ、続きしてください」
と、シュンリー、言ったけど、
「あー、エヘン、エヘン」
もう一組のアベックの男の子の咳払いに、慌てて離れる前の二人。
『気が利かないわねぇ、もう!』
残り二人の女の子の声が、見事にハモった・・・・。
気を取り直して地下通路を進む一行。
やがてその前に、昇りの階段が目についたので、みんなそこで足を止めた。
「あれ? もう一周したかしら」
と、先ほどのことで、いままで少しばかり口数が減っていた先頭の女の子がそう言
うと、
「まさか。ずっとまっすぐにしか歩いてきてないだろ」
と、後方の男の子が言う。
そこまでは良かったのだけど、こいつってば、
「しょーがねーな、メアリーは」
なんて余計な一言を付け加えるものだから、
「うるさいわね! ・・・・リズ、少しバートのこと黙らせて!」
と、彼と彼のパートナー役の女の子に向かって叫ぶメアリー。
「そ、そんなこと言われてもぉ」
困った様子で応える、リズちゃん。
「やめなさいよ、あなた達」
後ろで、こういった事態にはどう対処して良いか判らなくておろおろしてるシュン
リーの様子を見かねたのか、シュンリーを誘った例の女の子が言った。
「フィオの言う通りだよ。バートも、少し口さがなさすぎるぞ」
と、ジャンくん。この中では一番の優等生みたい。
「冗談だて」
いきなり吊るし上げをくらってしまったので、慌てて言うバートくんであった。
「でも、どこに続いてるのかしら、これ」
「リズったら、一人で落ち着いてないでよ・・・・」
「出入り口だろ、たぶん。二つあったって不思議じゃないさ」
「・・・・それもそーか」
誰がどれを言ったのかはご想像にお任せとして、シュンリーがおろおろしてる間に、
この階段は出口であるという線で話は落ち着いたらしい。
そこへ、
「・・・・誰か・・・・そこに居るの・・・・」
暗い地下で、いきなり一の・・・・女の声が聴こえたので、みんな一様にびっくりした。
「な、なんだよメアリー、おどかそうと思って・・・・」
とはバートくんの言葉。
「あたし何も言ってないわよ。フィオでしょ」
「・・・・そっちのほーから、きこえたんですね」
シュンリーが、いきなり冷静な意見を述べると、
「うん・・・・この先から聴こえたみたいだ」
ジャンくんも同意してくれた。そこは通路が直角に、左に折れてる場所で、声はど
うやらその、左に向かった通路の先のほうから聴こえたみたく思えたのだけど・・・・。
「せ、先生だよ、きっと・・・・」
と、誰かが現実的な考えを打ち出すと、
「でも・・・・先生なら・・・・」
ジャンくんがそう言いかけた時・・・・
「こらぁっ! 誰なの? 勝手に地下に入ってるのは!」
という怒鳴り声が、今度は後ろ、みんながやってきたほうから響き渡ったのだった。
「あっ、やっべぇ、ファズタ先生だぜ」
「あの先生、ぜったいにSだよな」
「えすってなんですか?」
「え? えーっと・・・・それどころじゃないって!」
と、シュンリーの、終わりの上がるイントネーションによる質問はとりあえず無視
されて、みんないっせいに目の前の階段に駆け込んだのだった・・・・。