AWC 推理小説的読書法「『天使の歌声』」1 永山


        
#4684/7701 連載
★タイトル (AZA     )  96/ 5/ 4  10:39  (190)
推理小説的読書法「『天使の歌声』」1 永山
★内容
 ついに発見、記念すべき第0回(実際のUPは第三弾)。らいと・ひるさん
の夢天シリーズより、「夢から醒めた天使 第二章 『天使の歌声』」(一九
九一年六月UP)を取り上げてみます。ボード名が『CFM「空中分解」2』
なんですよね、この頃の作品。うむ、懐かしい。
 私が実際に感想を書いたのも一九九一年の時点でして、当時の私はあらゆる
ジャンルの小説を推理小説を読むのと同じように読んでいましたから、多少、
的外れなことを書いたかもしれない。ってことで、自分の感想を読み直して、
不適切な箇所を最小限、削りました。
 でも、読み方はこれまでのと基本的に同じです。推理物を読むときの読み方
を金科玉条の物としていたか否か、その意識の違いがあるだけと言ってもいい
でしょう。
 それでも念のために記しておきますと−−。
 主に、視点に注意して読みました。佐野洋が「推理日記」(講談社文庫)で
主張する「一シーン一視点の原則」を課した場合、不自然と思われる箇所を、
いくらかピックアップして指摘したつもりです。
 漢字や言い回しについては個性だと思っていますので、なるべく指摘しませ
んが、例外もたまにはあります。また、ダウンロード後の都合で、改行位置等
が変わっている箇所があるかと思いますが、ご了承ください。
 なお、指摘箇所を手っ取り早く読もうとする場合は、↑を検索してください。

>#997/1002 CFM「空中分解」2
★タイトル (NKG46776)  91/ 6/ 7  23:16  (193)
夢から醒めた天使 第二章 『天使の歌声』 らいと・ひる
 空は雲に覆われ、月どころか星のひとつも見えぬ夜。
 その恐怖は舞い降りた。
 ふいに闇夜に浮かぶ奇妙な光。それは、飢えた獣の目のように不気味に鋭く輝
いている。まわりの空気はしだいに張りつめていく。
 一瞬、耳につくような奇怪な声帯の響きが、辺りを微かに震わせる。
 その響きの直後、徐々に正常に保たれ始めるまわりの空気。すべてのものが、
恐怖の呪縛から解き放たれようとしていた。
 そして、恐怖の去った後に起こる永い沈黙。
 しばらくして、雲の陰から現れる円く満ちた月。恐怖から安らぎへと、空気が
静かに変わろうとしていた。
 だが、安らぎは訪れなかった。その月明かりは、確実に恐怖の爪痕を浮かび上
がらせていたのだ。
 明かりに照らされた地面に見えるのは、二つの生命の抜け殻。
 それは、言い方を変えれば、無惨にも喉元を抉られた男女の死体であった。


「未希。」
   ↑閉じかっこの前に句読点はいらない(※現在は直ってますよね)
 ショートカットの美人ではないが人懐っこそうな顔をした少女が、未希の寄り
 ↑「美人ではないが人懐っこそうな顔をしたショートカットの少女」ぐらい
 の方が、読者に理解されやすいのでは?
掛かっている廊下の窓際まで駆け寄ってきた。
「和美、おそーい。」
 未希は振り向きざまに岡野和美の顔を冗談っぽく睨むが、すぐに優しい顔で微
笑みかける。
「ごめーん。担任の山崎先生に用事を言いつけられちゃってさ。」
 和美は片手で小さく拝むように謝ると未希に微笑み返し、そのままいっしょに
歩きだした。
 ここは、私立緑が丘学園。今年、創立五十周年を迎える伝統的な学園であった。
 未希は、透の妹水口未希としてこの学校に2020年に入学し、今年2年生に
なる。学校に通わせたのは、透達より未希本人の希望であった。それは、未希が
未希である為の生活をさせるのに、かかせないものだからだ。
「きゃはははは………それで?」
「………でねぇ、貴子ったらさぁ……………………」
 楽しそうな笑い声が校内へと響いていく。たわいもない会話ではあるが、彼女
達にとっては幸せな学園生活の思い出の一つとなっていくのだろう。未希は、こ
うしている間は自分が何モノであるかを忘れる事ができる。ほんのわずかな幸せ
でも、それは勇気を作り出す事ができる。透の言っていたように、楽しい思い出
を、いつか来る辛い時の為に心に刻んでいるのだ。
 ふと、彼女達の耳に入ってくる軽やかなピアノの伴奏と透き通るような歌声。
透き通るようなソプラノヴォイスは、彼女達の会話を一時中断させるほど心が洗
われるようなものであった。

(※歌詞部分カット)

「この声………」
 未希は、その透き通るようなソプラノヴォイスに何かを感じとった。しかし、
その結論を出す前に和美の説明に遮断されてしまったようだ。
                        ↑未希の視点なのだから、
                        「ようだ」は不要では?
「コーラス部の坂上さんの声ね。…ほら、1年生に転校生が来たって言ってたで
しょ、その子よ。………きれいな声ね。邪心もなんにもない、まるで透き通るよ
うな声………未希の声とタメはってるんじゃない?………」
 未希は、なぜか声の主が見てみたくなった。理由はわからなかったが、心に引
っかかるものを彼女は感じていた。
「ねぇ、行ってみない?」
「おぬし、そういう趣味があったか………かわいい子も好きだけど、あたしゃ、
かっこいい男の子の方がいいな。」
 和美は、片ひじで軽く未希をこずきながら、冗談っぽくいやらしい目つきをす
る。
「……違うわよ……あたしは…ただ近くで歌を聞きたいだけ………」
 未希はとりとめのない言い訳を和美と、そして自分自身に言う。未希は何か引
っかかりを感じたのだが、ただの思い過ごしだと思いたかったのだ。
「わかってるって、そんなムキにならなくても………」


 重厚な輝きを放つグランドピアノの横に一人の少女が立っている。背は未希と
同じぐらいであるから、身長約百五十五センチ程の小柄な体型だ。幼顔で、髪型
             ↑どちらか削る ↑
もストレートのロングというのも未希と同じである。全体的に、未希に感じが似
↑_____________↑「も」が重複。前者を「が」にしてはどうか?
た少女であった。
 ピアノのある音楽室の窓は全て開けはなってあり、そこから春まっさかりのあ
たたかい風が流れてくる。
「あれっ、二人しかいないよ。」
「そういえば、今日はコーラス部の練習日からはずれているから……たぶん、自
主練習じゃないかな?………」
 未希と和美の二人が音楽室へと、練習を邪魔しないようにそっと入っていく。
 だが、ピアノの奏者は未希達の見学に気づいたようで、演奏を止めると和美に
向かって手を振りだす。
「和美せんぱーい!」
「ひさしぶり!洋子も元気そうね。」
      ↑「!」「?」のあとは一升空ける(※現在は直ってますよね)
 洋子と呼ばれるピアノ奏者に、和美はにっこりと微笑み返す。どうやら、知り
合いのようだ。
「そちらは?」
 洋子は、未希の方に目をやり、和美に問いかける。
「同じクラスの未希よ。いっしょに歌を聞きに来たの。練習の邪魔はしないから、
続けていいわよ。」
 未希は、洋子と翼に軽く挨拶をすると座席の所に座り、練習を続けるその可憐
        ↑誰? 坂上某のことだとは思うけど、説明が必要では ↑
                                  |
          広辞苑には「可憐」の意味は「意地らしいこと、かわい
          いらしいこと」とありますけど、「かわいらしい声」で
          いいのでしょうか? 好みの問題かもしれませんが、私
          の感覚では、「透き通るような歌声」なる表現イコール
          「芯のしっかりした、凛としたきれいな声」っていうイ
          メージがあります
な歌声に聞き入っていった。


 西暦2021年、東京。
 文明の急速な発達は、都民の生活環境を確実に変えていった。その大きな産物
が、東京湾の人工島建設と『MSE』と呼ばれるサイボーグの存在であった。
 人工の過密を穏和する為に開発された東京湾人工島計画。それにともなって住
             ↑「計画された東京湾人工島建設」の方が適切?
宅地に開放された地区。だが、それらは首都圏にさらに人工の過密を促す結果と
なってしまった。その影響で、公安はオーバーワークを強いられ、首都圏全区域
の治安維持は事実上不可能となっていた。
 それが、この東京の現状であった。
 そして、もう一つの大きな産物である『MSE(Medical Synth
etic Engineering)』と呼ばれる医療用サイボーグ技術。もう
八年以上前から、人体の九割以上を人工物に変える研究がなされていた。
 全て機械で造られた内臓部分、特殊合金で造られた軽量な人工骨、関節部に組
み込まれた小型アクチュエーター、そして内肉及び外皮は人工タンパク質、その
保湿機能及び自立神経器官への情報のフィードバックを行う為に体内を流れる人
工体液、これらによって『MSE』の身体は成り立っている。
 だが所詮人工物、たいていの者は拒絶反応を示し、成功率はほとんどゼロに近
かった。
 そのせいで、『MSE』の研究は五年前に中止されていた。しかし、科学の進
歩は早いものである。二年前に発表された『S型バイオチップ』と呼ばれる生物
学的素子が人間の『MSE』への拒絶反応を抑え、やっと『MSE』の存在を世
間に公表する事ができたのだ。


「いってーなー!」
 廊下の角で未希と和美の二人は、走ってきた一人の生徒とぶつかった。
 百六十四センチのわりと小柄な身体は、二人にぶつかりバランスを失ってその
まま床に倒れこんでいった。
「気をつけろよな!」
 優しそうな顔とは反対に、厳しい言葉を吐きつけるその男子生徒は、起きあが
ると同時に未希の顔を睨む。
「………なによ!ぶつかってきたのはあなたじゃない?規則で廊下は走ってはい
けないと決まっているでしょ。」
 意外にも、未希の方が先に口を開く。この二人、じつは初対面ではなかった。
 ↑何が意外なのか? 以前の作品に示されているのかもしれませんが……
 一年の時の同じクラスで、テストの点を競いあったライバルなのだ。といって
もそれは、この男子生徒の方が一方的に思っているだけのことであった。
「うるせぇ!とろいおまえが悪いんだ。」
 この男子生徒、名前を滝沢勇生といい、華奢な身体つきではあるがスポーツ万
能、成績優秀、未希以外の者には優しい所もある。未希につらくあたるのは、成
績でのライバルだからというのがまわりの意見であるが、本人の気持ちは別なと
ころにあったようだ。
「論点がずれてるわよ。謝りなさいよ!」
 未希は強気に出る。こういう未希の姿はめずらしく、横にいる和美もあっけに
取られていた。
「うるせぇ!」
 そう捨て台詞を吐くと、未希から目をそらしそのまま去っていく。
「……どうしたの?未希らしくない。」
 和美はそうささやく。普段の未希はもう少しおとなしく、八面美人なぐらい誰
にでも優しいのだ。
「だって、筋が通ってないんだもん。」
 未希は、少し遠くを見つめながら小声でつぶやく。
(あたしにも、わからないのよ。あいつに会うと、心の機能が麻痺しちゃって…
…よくわからないのよ………)
 ↑上の場面丸ごと、作者の視点(ないしは神の視点)で書いたんですよね?
  (※確認の意です)

 闇の中から聞こえてくる恐怖に満ちた声。
 その声は、黄金色の二つの奇妙な輝きに向かって吐かれているようだ。
「やめて……ねぇ……あたしが……悪かったわ…………」
 奇妙な輝きは沈黙を守り、声の主に答えることはなかった。
「ぎゅぇっ…ぐあっ!!!!……」
 肉がちぎれるような音とともに、断末魔が闇の中響いていく。その声が消える
と同時に、水のしたたり落ちてくる音があたりに聞こえてくる。
 明かりをつければそれが、喉もとから流れてくる血液だとわかるだろう。闇は
恐怖を誘うが、それを越えた恐怖を闇は隠していた。




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