AWC 推理小説的読書法「レディア・サーガ」5 永山


        
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★タイトル (AZA     )  96/ 4/21  20:30  (200)
推理小説的読書法「レディア・サーガ」5 永山
★内容
 男の首は、先程まで全く同じ口調で言った。そしてそれまで椅子に座っていた
身体がゆっくりと立ち上がり、首を拾うと、もと有った位置へと戻す。傷口は瞬
く間に消えて行った。
「な、なんなんだよ、こいつ」
 シンシアの声は震えていた。自らの死を覚悟した時よりも、激しく心臓が鼓動
をしていた。                          クグツ
「私は黒の一族、ラルム様の言われる『闇の者』。我が名はグァーバ、傀儡師グ
ァーバ」
「やはり、な。近いうちに、ちょっかいを出して来るだろうと思っていたが」
 ラルムはあくまでも冷静を保ったままの口調で言った。
「砂漠で砂使いがやられたと聞いて、あなた方がザッカに来る事は分かっていま
したからね。ですがまさかこの街に、あなた方が血眼で探していた人が居られた
とは、迂闊………いえ、幸運ですね。このザッカの街を任された時には、これで
出世のチャンスも潰えたとばかり思っていました。ところが、ラルム様たちがこ
の街に来てくれた。
 砂使いがやられたのを知って、私は心底嬉しかったですよ。まさかとは思いま
したが、万が一、あんな小物に貴男がやられてしまっては、折角のチャンスが消
えてしまいますからね。
 でもラルム様は、無事に街に着いてくれた。しかも………おお、何という幸運
なのでしょう。こんなしけた街に隠れていた、大物をも見つけだして下さった!」
 慇懃なグァーバは口調は次第に高まって行った。
「な、何を言ってるんだ? こいつは」
 ラルムと男のやり取りは、シンシアには全く意味不明の物であった。だが状況
からして、男の言う大物とはシンシアの事らしい。
「事情は後で話す。今は下がっていろ」
 シンシアの混乱を察し、ラルムが言った。
「後で話す? フフッ、残念ですが、あなた方に後は有りませんよ。私に剣が効
かない事は、先程分かった筈。それにほら」
 男の言葉が合図で有ったかの様に、辺りには焦臭い臭いが立ちこめた。

「くっ、火を放ったな」
 ラルムが気が付いた時、既に炎は激しい勢いで、宿を包み込んでいた。
「ここの主人は私の手下………正しくは私の術で手下にしたのですが。あなた方
を部屋に案内した後、火を放つように命じておいたんですよ。
 さて、如何なさいます? 早く逃げ出さないと、お二人とも焼かれてしまいま
すよ。もっとも、私が逃がしはしませんが」
「逃げてみせる」
 刹那、ラルムは剣を振るい、再度グァーバの首をはねた。
「無駄と言うのに」
 放物線を描きながら、グァーバの首はあざ笑う様に言った。
「逃げろ、シンシア。奴が頭を元に戻すまで、暫く時間が掛かる」
 ラルムの言葉を最後まで聞くまでもなく、シンシアは部屋の出口に急いだ。先
程までだいぶ混乱していたが、勘はいい様である。ラルムがグァーバを斬ったは、
脱出の為の時間稼ぎと察したらしい。
「お兄さま」「あんた」
 二つの声が重なる。
 シンシアの後を追って部屋の出口に向かっていたラルムは、そこで呆然と室内
を見ている妹を発見した。
「お兄さま、これは」
「話しは後だ。シンシアを連れて、外へ急げ」
 ↑こういう場合、「話し」ではなく「話」が普通。変換ミスだと思います。
 そう叫んだラルムの目に、リアと向かい合うシンシアの身体が横に跳ぶ姿が映
った。そしてシンシアの左肩を掠める短剣。
「畜生!」
「何をする、リア」
 咄嗟にラルムはシンシアを庇い、リアとの間に立った。横目で見ると、シンシ
アの傷は大した物ではなさそうだ。
「クソッ、あんたの妹も、奴の手先なのか」
 シンシアの言葉には答えず、短剣を握ったまま虚ろな目をした妹を見た。或い
は妹の姿を模した敵なのかとも考えたが、それは違った。そこに居るのは間違い
なく、妹のリアであった。
「あの時の水か」
「ご名答。貴男の妹さんの飲まれた水には、私の血を一滴、たらしておいたので
すよ。私の血を飲んだ者は、その血によって身体の全てを支配される。私が傀儡
師と呼ばれる所以です」
 既に頭を元の位置へ戻したグァーバが、さも楽しそう言いながら近づいて来た。
「お断りしておきますが、万が一私を倒しても妹さんは元には戻りませんよ。砂
使いのチンケな術とは違い、私の場合は相手の身体を、もう一つの私の身体に変
えてしまうのですから」
 今度の科白はグァーバではなく、リアの口から発せられたものだった。そして
グァーバの本体が「と、言う事です」とつけ加えた。
「さあ、どうします? 早く逃げないと、ほら」
 グァーバはリアの後ろの廊下を指さした。そこは炎と煙で一寸先すら、見通す
事が出来なくなっていた。
「選択の余地は無いのですがねぇ。私は不死身ですから、私を倒して窓から逃げ
る事は出来ない。出口を塞ぐ妹さんは、もう助ける事が出来ないのですから、彼
女を斬り捨てて、そこから逃げる。これしか無いですよ。
 ラルム様に妹が斬れますか? フフッ、でも斬らなければ、せっかく見つけた
お姫さまも貴男も灰になりますよ」
 剣を握るラルムの手に、力が込められた。


「母上、母上」
 興奮を抑えきれず、少年は勢い良く扉を開けた。
 実に十年ぶりの、母親との再会。興奮せずにはいられなかった。
 だが、扉を開けた少年は言葉に詰まった。少年は異様に重苦しい空気を感じ取
ったのだ。
 部屋には少年の母親の救出に携わった者と、彼等の指導者の老人が居た。そし
て彼等に取り囲まれる様にして、ベッドに横たわるやつれた女性。それが自分の
母親であると気付くのに、少年はしばらくの時間を要した。ベッドの傍らには見
慣れぬ少女が佇んでいた。
 少年はその場で、まるで時間が停止してしまったかの様に立ち尽くした。ベッ
ドの母は、少年の記憶の中に有る十年前の美しく健康な姿とは、まるで違ってい
た。老婆の様にやつれ果てた顔には、まるで生気が感じられない。或いは既に息
絶えているのでは、そんな考えが少年を支配し、恐怖した。
「ラルム様」
 少年に気付いた誰かが声を掛けた。部屋に居た他の者も、ようやく少年の存在
   ↓↑この場面はラルムの視点なのに、村人?の心理に立ち入っている
に気付き、顔を上げた。
 ラルムが勢い良く部屋に飛び込んで来たのさえ分からない程、皆深刻に何かを
考えていたらしい。
 そしてベッドの母も目を開き、ゆっくりとラルムの方を振り返った。
「ラル………ム、ですか?」
 久しぶりに聞く母の声。ラルムの胸に熱い物がこみ上げて来た。どんな姿でも
いい、ただ母が生きていてくれた。その事を深く神に感謝した。人前で涙する事
を恥ずかしい事と思っていたラルムだったが、両の目から溢れる物を抑える事は
出来なかった。
「お久しぶりです、母上」
「ああ、ラルム。会いたかった………もっと近くへ来て、顔をよく見せて下さい」
「はい」
 枕元へ歩み寄ると、一層母のやつれの激しさが実感された。それはとても十年
という、時の流れのみによって成された物とは思えなかった。ラルムと別れてか
ら、ラルム以上の苦労を母はして来たのだろう。それを思うと、ラルムの涙はま
すます止める事が出来なくなった。
↑変な文章。「……ラルムは涙をますます……」あるいは「……ますます止ま
らなくなってきた。」ぐらいが適当では?
 母もまた、顔中を涙で濡らしていた。身体を起こす力も無いのだろう。震える
両手でラルムの頬を撫でる。
「大きく………なりましたね。あなたももう、十五ですか。あなたの………お父
さまの、若い頃に似てきました」
 頬に充てられた母の手は冷たかった。それはラルムが感じていた不吉な物を、
立証するかのようだった。
『そんな事が有るものか! 十年、十年だぞ。やっと会えたのに』
「母上、これからはずっと一緒に、居られますよね?」
 やっとの想いで口にした。母が肯定してくれる事を期待して。
 だがそんなラルムの問いに、母は首を小さく横に振った。
「私はもう駄目です。そんな悲しい目をしないで、ラルム。あなたはラドウ家の
跡継ぎなのですよ………。その誇りに掛けて、レディア復興の日まで、感傷に浸
っている暇は有りません。ただ………リア」
 母はベッドの傍らで、遠慮がちに二人のやり取りを聞いていた少女を枕元に呼
び寄せた。
「この子の名はリア。あなたの妹です」
「妹!」
 思わず、ラルムは驚きの声を上げた。
「あなたと別れてからこの子が産まれました………。その事で、あなたやあなた
のお父さまに非難されても仕方有りません。でも、でもこの子に罪は無いのです。
ああ、ラルム、どうかお願いです………どうか、どうかこの子を………」
 母の手は、ラルムの手を握りしめていた。
「もし私を許してもらえるなら、この子を妹として、認めて下さい」
 母の涙を見ながら、この十年が母にとってどれ程過酷な物で有ったのかとラル
ムは思った。それはおそらくラルムのそれとは、比較にならないのかも知れない。
「何を言うのです。母上の産んだ子で有れば、それは当然私の兄妹。わざわざ念
をおすまでもも有りません」
 ラルムの言葉を聞いて安心したのだろう、母は初めて微笑んだ。その微笑みは、
十年間ラルムが想い続けていた母の姿そのものだった。
「ありがとう、ラルム」
 その言葉を最期に、ラルムの手を握りしめていた母の手てが滑り落ちた。そし
      ↑ここは「最後」でしょう。「最期」は命が終わることですから
て静かに閉じられた目は、二度と開かれる事は無かった。
「母上」
  ↑叫び声なら、やっぱり、「母上!」とやってほしい気がします。
 ラルムの叫びが、虚しく響いた。

「ラルム様」
 沈黙を続けていた老人が、初めてラルムの名を呼んだ。
 その声に振り返るラルムの目は、まだ赤く腫れてはいたが涙はもう無かった。
それが母の望みで有れば、泣くのは止めよう、ラルムは心の中で誓ったのだった。
「その娘、リア様の処遇についてですが………」
「母の望み通り、俺の妹として、これからは俺が守る」
「お気持ちは分かります。ですが………」
「だがなんだと言うのだ」
「その娘の父親は………」
 老人の口からは恐ろしい名が告げられた。しかしその名を聞いても、ラルムは
全く動じる事は無かった。
「リア」
 優しい声で少女の名を呼んだ。
 俯いていた少女は顔を上げ、ラルムを見つめた。その瞳からは大粒の涙が、止
                  ↑
  この場面、ラルムの視点なのに、リアの知覚描写をしている。
めどもなく溢れ、その身体は小さく震えていた。
 この少女も母の死を悲しんでいるのだ。その上、見知らぬ者たちが処遇につい
て論じようとしている。これ程悲しく、不安な事は無いだろう。少女の気持ちを
想うとラルムの胸は痛くなった。
「歳はいくつだ」
「九つ………九歳になります」
 消え入りそうな声で少女は答えた。
「俺の名はラルム・ザダック・ラドウ。お前の兄だ」
「ラルム様」
 叫ぶ老人を、ラルムは厳しく睨み付けた。
「この子は我が妹、リア・ザダック・ラドウだ。この事に何人たりとも口出し無
用!」
 そして再び少女へ振り返り、優しく言った。
「いいな、リア」
「あ………はい、お兄さま」
 初めて見せた少女の微笑みに、ラルムは母の面影を見た。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 一応、ここまでです。何か、凄くいいところで場面が切り替わり、なおかつ、
回想の方も気になるところで途切れていますね。連載はこうでなくちゃいけま
せん。(^^)
 少しだけ気になったのは、句点の少なさ。厳密に調べた訳じゃありませんが、
悠歩さんのこれまでの作品と比べ、句点が少ないような気がします。一文が句
点なしに終わっている箇所も見受けましたけど、故意にしているのでしょうか?

 悠歩さんの視点の取り方は、私の波長にかなり合っているようです。
 てことは、悠歩さんが推理小説に挑戦した際でも、スムースに文章を連ねら
れるはず? 前々から言われている推理物、期待しています。
 もちろん、「レディア・サーガ」もなるべく早めに完結させてくださいね。
お願いします。

 ではでは。




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