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★タイトル (DXM ) 95/ 9/20 22:37 ( 70)
紅の霧 〜ノルム王国の野望〜 (1) 宅急便
★内容
それはいつのことだったか、どこで起こったことなのか・・・・
俺はいつものように、どこかに向かっていたはずだった・・・
どこに? ・・・分からない
何のために? ・・・それも分からない
しかし、分かっているのは、俺がそこに行かなければならないということ
だった。
どこにいくのか分からないのに、その場所に行かなければならないと思う
のは変かもしれなかったが、俺の本能がそう告げるのだ。
俺の名前は・・・・・えっと・・・・・・そーだっ、俺の名前は・・・・
”みゅらーず”、これが俺の名前だった。
俺は背が高いほうに入るだろうな。あと、体格は普通くらいかな。
歳は20だ。
俺はどこで何をしていたんだろう・・・なんか、記憶が曖昧だった。
とにかく今俺は、あてもなく森の中の道を歩き回っていた。
とくにあてがないので、道に沿って歩けばここがどこなのか、多少なりと
も分かるだろうと思っていた。
・・・しかし、その考えが甘いことに気付いたのは、それからまもなくの
ことだった。
突然道が無くなっていた。
「こんなのありかよ・・・」
俺はつぶやきながらも(なんとなく変だ)と感じていた。
そして、今来た道を引き返そうと後を振り返ったその時、
「動くな!」
声がしたかと思うと、俺の後ろから、首筋にダガーの刃と思われるものが
当てられていた。
「動くとこいつがおまえの頭と胴体を別々にするからね」
「・・・・・・」
俺は一瞬抵抗しようかどうしようか迷った、がやめた。
「よーし、いい子だねー」
それはどうやら女のようだった。しかし、俺の後ろにいるので見ることは
できないが、背は俺よりも低いようだった。
俺が抵抗しないのを確認すると、
「じゃあとりあえず、あんたの装備を全部置いてここから立ち去りな」
と言って、俺の首筋からダガーを外し、俺の前に回りこんだ。
そいつはローブを頭からすっぽりと被っており、顔も見えない。しかし、
体格は華奢なようで、背も俺より頭ひとつ分は低いようだ。
「装備っていってもなー・・・」
その時持っていた俺の装備はというと、コインの入った袋が1つ、そして
ショートソードが腰に差してある。
バックパックもあるが、中身は確認していない。しかし、それは軽かった
ので、特に大事なものが入っているとも思えなかった。
あと俺が身につけているものといえば、マントくらいのものであった。
「早くしな」
そいつは、急かすように言った。
「ところで、何が目的・・・!!!」
そいつは突然懐からナイフを投げ付けてきた。
「な・・・なにしやがんだ、あぶねぇじゃねえか」
危なく俺の顔に傷が付くところだったが、俺のすばらしい反射神経のお陰
でどうにかかわした。
俺って結構身軽だったんだ・・・等と考えた一瞬の後に、
「あんた、なかなか身軽そうだけど、まだまだのようね」
そいつは笑って、ダガーを懐にしまいこんだ。
「まぁ、いいわっ。あんたなら大丈夫そうだから」
「???」
俺が訳が分からないと言ったような素振りをすると、そいつは、
「あたいはチャム、こう見えても魔法使いなのよっ」
そう言ってフードを下ろしたその顔は・・・やはり女だった。
しかもかなり若そうだった。円らな蒼い瞳をしており、髪は肩のところま
で伸ばしていた。
よく見ると、チャムはどうやら魔法使いのローブを着ているようだった。
「おいおい、いったい何がどうなってるのか説明してくれよ」
俺は、本当に困惑した表情でチャムを見た。
「分かったわ、だけどここで立ち話もなんだから、こっちにいらっしゃい」
なんなんだこいつは、と内心で思いながらもこれで情報が手に入るかも
しれないという期待で、黙ってついていくことにした。
(2)につづくのであった・・・