AWC 我が矛盾論(2)   / オークフリー


        
#257/1336 短編
★タイトル (GSC     )  94/ 6/25  23:29  ( 37)
我が矛盾論(2)   / オークフリー
★内容
 人は生き物を大切にしなければならないと言いながら、その実、生き物を殺さずに
は生きていけない。
 『精進料理』と言っても、植物性食品は禁じられていないし、ヒンズー教徒でも、
 牛肉は食べないが魚肉は食べるであろう。
 武者小路実篤は、確か『幸福者』という著書の中で、「牛や豚を殺す場合、麻酔を
かけてから行なってはどうか。」と書いている。ところが世の中には、マグロの活き
造りや海老の踊りを珍重する風習もある。
 シュバイツァー博士は次のように言ったという。「牛馬に食べさせるために荷車一
杯の干し草を刈るのはよいが、  道ばたに咲く一輪の草花を摘み取ることは許されな
い。」
 私は、草原に寝転んで草笛を吹くのが好きである。幼い子供と一緒なら、なおうれ
しい。けれども、この穏やかで平和な一時も、植物たちにとっては死の苦しみとなる
のであろうか?
 「そんなことをいちいち気にしていたら、革靴も履けない、ペットも飼えない、家
 も建てられない、ゴキブリも殺せない。抗生物質を用いて細菌を殺すことすらでき
 ないではないか。おまえは馬鹿げた小理屈を並べて、人に不快な思いをさせるつも
 りか、それとも、どこか神経が侵されてるんじゃないか? 」もしもそう言い切れる
 人が居たら、その人物は幸せ者である。
 人は誰しも、自分の悪い所を認めたくないし、自分の行いは正当化したくなるもの
だ。人間どうしのつき合いでさえそうなのだから、まして他の生物や無生物のことな
ど考えている暇は無いとも言えよう。
 が、例え一瞬でもいい。無抵抗な動植物を思いやる心が欲しい! ひいてはそれが人
に対する思いやりにも通じるのである。

 さて、そう言う私も、夏休みには子供たちとボリショイ サーカスを見に行くし、
毎週日曜日ともなれば、『勝ち馬投票券』を買いたくなる。心の中で動物たちに「す
まない」と手を合わせつつ、それでもやっぱり娯楽は娯楽…。

 そして、私にとって一番の矛盾は、大好きな楽器ヴァイオリンについてである。
 上質の木材を何年もかけて乾燥させ、 あの優雅な形に造り上げた後、ガット(羊腸
弦)を張って、演奏に用いる。 弓は、フェルナンブークという木を棒状に削り、馬の
尾の毛を張った上に、松脂の粉を塗布して、演奏準備完了となる。
 ヴァイオリンの演奏が始まると、私は世のあらゆる矛盾を忘れ、ひたすら音楽に陶
酔する。美しい音色・激しいリズム・複雑な和音! これこそ、人間が造り上げた最高の
芸術、洗練された曲芸の限界である。
            OAK





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