#220/1336 短編
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実録>ぼくは君だけは許さない 丈留
★内容
以下の物語はノンフィクションであります。
が、全てが私個人の物語ではありません。
第一話
九州の湯布院に鏡のように周りの山々を写し出しているな小さな
湖がある。その湖畔の辺にある素敵なホテルで二人は過ごした。
星空の下、二人は湖畔の遊歩道を並んで歩いていた。お互いの会
話が途切れたとき、その事件は起きた。
突然、M氏がK子へ囁いたのだ。
「結婚しよう!」
その瞬間、強烈な右フックがM氏のアゴにクリーンヒット。
唖然としているM氏にK子が一言。
「たった二度目のデートで簡単に言わないでよ!!」
第二話
テレビドラマで「101回目のプロポーズ」なんてのがあった。
「いやみなドラマだ」と、F氏は呟いた。
そう、23歳から毎月のように見合いを繰り返し、今はもう3
5歳になった。93回までは、数えていた。しかし、半ば頃から
相手の顔ですら憶えていない。大台を数えても、思い出すのは
最初の見合いだった。二人でドライブに出かけた時、緊張のあま
り車を公園に乗り込んで、終いには長い階段を車で降りてしまっ
た。「ごめんなさい! あの方は、もう結婚したのだろうか」
でも、許せない見合いもあった。
東京の銀座にあるおしゃれなレストランで、1時間前から待って
いた。時間より遅れた彼女は、F氏の正面に座ると、直ぐに腕時
計を見始めた。話を続けようとすると、その腕時計を見る間隔が
短くなり、しらけ鳥が宙を舞っていた。
「おい、帰りたいんなら、帰れ!!」
P.S.
その後、F氏はめでたく結婚され、幸せに暮らしているとさ。
第三話
通勤ラッシュは、事件が多い。しかし、世にも奇妙な出来事が起
きてしまった。現場は、横浜線の淵野辺駅のホームである。
いつものホーム位置で電車を待っていたM氏の視線は、日経新聞
から女子校生の群れに移動した。悲しいかな、M氏の足は女子高
生の群れに引き込まれていったのである。ところが、十数名もの
女子高生は、何やら大きな荷物をみんなが持っている。そう、修
学旅行である。電車が来て、一斉に乗り込んだ時、車両の中央に
荷物の山が積まれた。その縁に立ったM氏は、左側が人の圧力、
右側が荷物の圧力によりサンドイッチ状態となった。悲劇は、次
の駅からである。そこは、町田駅であった。乗車率が極限状態と
なった瞬間、M氏の体は左側の人の圧力に押し上げられ、足が宙
に浮いたかと思ったら、右側の荷物の山に乗り上げたのである。
世にも奇妙な状態、それは満員電車の中で、体が水平状態となっ
た。それからM氏は、横浜までの20分間というもの、女子校生
の笑いの的になった。
「おい、おまえら誰のせいやと思とんのや!!」
P.S.
エリートのM氏は、冗談も言えない真面目な人だったのです。
第四話
会社の帰宅途中であった。駅前広場を歩いていたT氏は、前方から
向かってきた可愛い女性に呼び止められた。可愛いからといえど、
勧誘等には、無愛想なT氏である。いつものように、無視して颯爽
と歩くのであった。ところが、あまりの強引な呼び止めに足を止め
たT氏は、話だけ聞くことにした。すると、その女性が言うには、
「あなたを幸せにする光を与える」と、言うのである。「しばらく
眼を閉じていて下さい」との指示に従ってみた。瞼を閉じると、そ
の女性は、T氏の頭上に手のひらを掲げた。「念」でも送るかのよ
うに・・。T氏は棒立ちの状態で、アゴを引き、頭を凭れていた。
長いこと黙祷の状態が続いた。しかし、何時まで経っても終わらな
い。待ちくたびれて、瞼を開いてみた。
すると、そこには誰もいなかった。当然、その女性も・・。
ただ、駅前広場を往来する人の視線が、とにかく冷たかった。
「おい、何処へ行きさらしたんじゃ!!」
P.S.
それから、二度と勧誘には応じないT氏であった。