#200/1336 短編
★タイトル (TEM ) 94/ 2/25 3:37 ( 22)
テレヴィジョン うちだ
★内容
友人Aとはじめて夜の街で遊んだ。そのあと行き場のないわたしたちは拾われて、
男の子ふたりについていった。わたしたちは男の子のアパートで、日が昇るまでの
短い時間、こたつでポーカーをした。負けてビールを買わされた。それだけでとに
かくわたしたちは家に帰った。それだけのはずが、男の子のひとりが気になってい
た。会いたくて夢にうなされて、気のない友人Aにまでいらぬ嫉妬をした。わたし
の好きになった人は、あの繁華街の裏側の古いアパートに住んでいた。それしか知
らなくて、何度もそのアパートに行った。いつもいなくて置き手紙をしたら、電話
がかかってきた。二度目の電話のときはこちらからしてデートの約束をした。当日
電話をしたら、気のない返事をされてすっぽかされた。あたまがくらくらして、何
度も乗った電車を三度も乗り間違えて帰った。そしてそれっきり。だけどアドレス
帳を替えるたび、その使わない電話番号をきちんと書き写した。時々、間違い電話
のふりをしてかけた。今ではその回線も“現在は使用されていません”と、アナウ
ンスが入る。六年もたつので、わたし以外の三人はきっともう覚えていない。あの
時、あの人はこたつで、アンプに繋がれないエレキギターを、古い洋楽に合わせて
気持ち良さそうに弾いた。聞くと“テレヴィジョン”の曲だと言った(わたしは知
らなかった)。Aはトランプを配るのが上手だった。部屋にかかっていた派手なシャ
ツを合方の男の子が笑った。わたしの手元に一枚だけ、後日探して買ったテレヴィ
ジョンのCDがある。そんなにいいとも思わなかったので、あまり聴いていない。
おわり