AWC THE LONGEST POEM IN THE WORLD <猫>


        
#1752/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (SZA     )  89/ 8/ 8   6:26  (200)
THE LONGEST POEM IN THE WORLD      <猫>
★内容
案山子やや肩傾ぎかす刈仕舞
コスモスの貌突き出せし鉄ヘンス
焼酎で生傷洗ふ時雨峡
画鋲にも確と恃みぬ文化祭
抱擁に初恋の残些木の葉髪
 いとこが今にも死にそうな病気で喘いでいた
 病院は吉祥寺にあって見舞いに行った
 妻と妻の妹と三人で
四人部屋でドアよりに北枕で寝ていた
点滴が三、四本まとめて
胸に突っ込まれていた
妻の妹 彼の妻が看病していた
彼の妻も窶れて乳房の膨らみもなくしていた
病人と語った
  俺よりもあんたは強かったのにね
  そう 今度の今度は参っちゃった
病人は素直だった
息遣いが激しかった
ふた言も話をしない内に催尿を訴えた
その度に場所を彼の妻と代わった
 心臓が苦しくないか
  いや 腹が気持ち悪いだけだ
やせ我慢しているな
腹が破裂せんばかりに張り詰めていた
風船でもあるまいに
連れの洋子には洋子の亡母を懐かしんでいた
妻の母親でもある
俺の義母でもある
 元気になって 飯坂温泉に行きたい
飯坂温泉は俺の家の近くだ
東京の吉祥寺から想いは馳せた
広大なファイルだ
 俺がさよならをするときは上の空
 まさに雲の上を歩いているように見えた
 うんうんうんう
 「ん」が小さく寄り添っていた
まもなく意識不明になって天国に逝った
東京の吉祥寺から福島の拙宅に
電話があったのは朝方3時頃であった
 告別式と火葬を兼ねた葬儀は
 鎌ヶ谷市馬込の斎場で行なわれた
いろいろあっていろいろと悔いていた
喪主の和子が挨拶すべきだった
でしゃばりの佛の弟が挨拶させなかった
世話好きだった佛は別のファイルで
ニコニコ笑いながら 懸命に
何かと話しかけていたが
一向に声が届いてこなかった
 斎場の庭に猫達が棲んでいた
 春に生まれた子 夏に生まれた子
 一緒に母親の周りに集まっていた
 母親にそっくりのいちばん小さな子は
 母親に寄り添いつづけだ
つつじの薮から グレーの大人の猫が現われた
父親だ  見事な睾丸をぶら下げている
だが 何としたことか
首輪に前足をねじり込んでしまって
前足が使えない 脚の肩にばっしりと食い込んでしまって
肩の肉が二つに裂けて鮮血をしたたらしているではないか
金星を設えてある本皮のネックレースだ
止め金の端が仰け反って
早く外してくれと叫んでいる
俺は大きなガラスのドアを押し開けて行って
チチチチチtと家のチコの名で呼んで
 首輪を外して遣るからオイデ
無念 その度に薮に姿を消してしまう
もう見ていられない
無理をして仮睡した なんとかして遣らねば
 灰皿洗い 紙屑まとめは
 肢体不自由な身体傷害者の仕事だった
 床にべったりしゃがんで汚れるだけ汚れて
 皿をやっと捕まえて皿を拭いていた
 もう一人は 紙屑に負けてなるものか  と
 およそ意思とは反対に動く腕と格闘していた
 待合室の各部屋の出入口では
 紫一色の生地を着流した
 胸には己が名前を飾った女が
 客がくる度に頭を下げていた
妻と洋子は淳のジープで帰った
俺は新幹線で帰った
前の電車に間に合わなくて次の電車 8時
下痢が止まっていた
斎場の冷たいビールとご飯が良くなかった
俺は家に10時に着いた
妻は12時過ぎに着いていたようだ
俺は夢現で起きなかった
 音が凍み出した
 寒い寒いと俺が俺に云った
 チコはペッタンコと俺に寄り添った
 トイレに行かなくちゃならないのだろう
 そっと懐から降ろして遣る
限りなく音楽が愛を奏でていた
生きている限り歌い続けた
召されて天国へ行った人達に聴かせるために
いま天国に旅立とうとしている人達のために
またしてもしがない(不必要な修飾語)俺のために
 退勤時に あれ 雲がちぎれて飛んでくる
 どこやらの木の葉だった
 そいつらが俺の車にまつわりつくんだなあ
 何と仰って
 これが神の摂理よ 苦しい苦しいイ
そして潔く車に引かれて あと忘れ去られた
俺も家へ帰ってから 2合の酒をグイ飲みして
あとは眠むりたいだけなのさ
 夕焼けの色の紅さが足りなかった
俺のまなじりがそれを見て
真っ赤な夕焼けも見もしないで
交通事故を起こしたくない
 チコが妻の寝ている布団の中から顔を出している
 さっきから俺の一挙指一動に気を配っている
 俺は起きざまに彼女の頭を掌で包んでやる
俺がコンピュータの仕事をしていると
俺にだっこをしながらコンピュータの顔と
対面していなければならないという
チコを抱っこしていては仕事にならないので
ドアを閉め切っておくと
爪を立てて うるさく 中に入れさせろと云って聴かない
よく訳を話して ドアを閉めきったままにして置けば
催促をしなくなった
安心していると ある日あの時
俺がトイレに入っている内に忍び込んで
机の上のコンピュータの前に立って
しげしげと待ってるではないか
一本やられたな
 神様 俺はそれにどう対処すべきなのか
 神様曰く 改善しなさい
眼に余る現実に直面す
砂ぼこりを吹きすさぶ嵐はいつまでも続くまい
 云うことをきかない犬を飼っていた
 飼った以上は云うことをきかせねばならないし
 死ぬまで一緒の覚悟でなければならない
 さもなければ 殺せ
保健所の大量虐殺よりはよっぽど畜動的だ
再び問う 神様如何にすべきか
答えて 飯を食ってまず活力だ
 殺る筈が殺られてをりぬ木の葉髪
 定住の共にふた年歳庭木枯れ
 裏に川ありて白鳥立ち寄れり
 愛らしき御足なげ出す炬燵猫
白髪狸は俺が寄って行くと話を止めた
割り込むなと言っているようだった
イライラが見透いた
 数学教師のブスがプリンターを
 乱暴に扱っていた
 後に使う人が迷惑しますよ
 だが 俺の忠告をせせら笑っていた
本が並んで立っている
その上に植木鉢など置いてはいけない  と言えば
能面蝙蝠が
 ああら 十年この方の習慣よ
 十年以上も間違っていたというの
そうよ 全く不自然だ
もっともそれ以上も経っている感じ
実も蓋もない
  私が間違って居るんだってえー
雌の仲間に 自嘲しながら 加勢を求めていた
それでよし
彼女の本体も見届けた
 皆信じられぬ
 信じられぬは信じられるの謂いなり
 信じられぬ実体があるのだ
 信じられぬ実体は大凡信じられる実体に等しい
 立派なファイルではないか
 現に実存するのが何よりの証拠
 それを避けていては 大事な大事な真実を失う
 良いことに気がついた
 希望と言う名の概念と重なってくる
 確かな実感 これは新しき志向に相応しい
だが又信じられぬファイルはとるに足らない
何一つ協力しようとしては来ないからだ
在ったら邪魔になる位のもので
無くて丁度良かったと思ってよい
あてにしなければよいという意見
そう あてにするな と自分にいいきかせて
きれいに抹殺してしまう
抹殺できないまでも なみあむだぶつと努力する
なみあむだぶつ なんみょうほうれんげきょう
アーメン ソーメン 腹空かね
 自分の事ばかりで
 他人の事を爪の垢ほども思えない職場だ
 お茶を注がれても毒が入ってるとしか思えない
 佛様にお茶である
 前日に休んだおんっざんがそのお茶を呑んで
  うわー殺される と叫ぶ
 お茶などは注いで貰わなければいいのだ
 三日間 注ぎ忘れたお茶
あのチンコロめ
あの奴めの嫌な一面をちらっとは見たが
まあ程よい感動の塊か いいとしなくちゃ
これからが奴の正体の見せどころじゃ
 未だ一度もお会いしたこともない人が夢に現れた
 翌日 草野心平先生が亡くなっていた
 お会いしたい気持ちが通じたのかも知れない
思うこと感じることみんな肝心がらめ
にっちもっさちも行かぬとはこのこと
 若年寄りの御尊父の逝去の告別式が
 丁度日曜日にかち合わないで
 おれも俳句会に行けるというもんだぜ
俺が死んだときは賑やかにしないでおくれ
頼む ほんとに 奴のことを家にいれてはならないよ




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