AWC 機動刑事M・M  Act,1マーシャル刑事登場!   ネガ


        
#1750/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VGF     )  89/ 8/ 6  17:53  ( 79)
機動刑事M・M  Act,1マーシャル刑事登場!   ネガ
★内容
機動刑事M・M
                 Act,1 マーシャル刑事登場!

 夏の晴れた昼下がりの午後、小丘の上にある小さなハンバーガーショップ。
 腰掛けが横一列10席しかなく、通路と呼べる物すら存在しない店の一番左端
の席で一人の男が朝飯と称してカウンター越しにチーズバーガーをかじりながら
新聞に目を通していた。新聞には『アイドルのリン・ミンメイ引退!』、『ボク
サー矢吹丈あの世からのカムバック』、『レーサー・赤城軍馬追突で死亡』等々
の見出しが並んでいるばかりであり、事件という事件は皆無であり世の中は平和
そのものであった。
 アクション映画であれば、こんな時主人公がふと外を見ると銀行が銃を持った
男達に襲撃され、まさに犯人が逃走し掛かっているときにパッと飛びだし激しい
銃撃戦の末に無事に事件を解決するはずであるが、近くに銀行が在るわけでもな
く、第一犯罪が起こる気配すら無いのどかな昼下がりの午後であった。
 『商売、上がったりだな。かわいそうに…』
と誰に言うわけでもなく、その男はチーズバーガーを口に入れながらボソボソ1
人ふと呟いていた。
 彼の名は、マーシャル・マッキーバーこのイクスゥィーシティー第B地区の機
動刑事である。機動刑事とは、本来ここ数年急増している凶悪な強盗殺人・テロ
リスト等による機動兵器による都市破壊工作等の凶悪犯罪の処理だけを任されて
いるはずであった。しかし、とかく世の中が平和過ぎると、税金の無駄遣いを回
避する為という名目で何故か、赤ん坊の子守までさせられる事もあった。その為、
今日も彼は一人嘆いていたのであった。
 そんなマーシャルの深刻な悩みを打ち壊すようにカウンターの一番右端に腰掛
けていた客が何やら店の主人へと激しい口調で抗議していた。
 『火を借してくれって人が頭下げて頼んでんだ』
背丈はそれ程ない様だが体中が贅肉だらけのコロコロとした中年男が店の主人
にカウンター越に店中(店もそれ程広くはないのだが…)響き渡るような大声
で怒鳴り飛ばしていた。
 『し・し・しかし、先程も申し上げました様に、こ・ここのチェーン店では禁
煙を実施していますので喫煙は他でお願いしたいと…』
主人は初めの一声で驚いてしまい今にも消え入りそうな声で恐る恐る言っている。
 『人に頭下げさせておいて禁煙だと?。いいか俺はナ〜今日、やっとの事で狭
い務所から出てきたばかりでこの暑い中、昼飯でも食おうかと思ってわざわざこ
こまで来たんだョ。そしたらどうだい店は狭いは、扇風機すら無いからこんなに
暑苦しい、おまけに温かいもん食わされたら…本当、息抜きもしたくなるぜ。
え、そうだろう、違うかい?』
 と勝手にホットコーヒーを注文しておいて全く目茶苦茶な奴であったが、親切
にも狭い店内ではあるが、身振り手振りのジェスチャー入りで熱心に解説してく
れたのであった。
 店の主人と言えば、返答に困っており『は〜、しかし…、そうですか…でも…』
と声にならない声でただオドオドしているだけであった。
 他の客も、この場を離れては何をされるか分からないと察してか、誰一人とし
て動くことが出来ず「なるほど店が悪い」と言うように頷いて、早く事態を収拾
しろとでも言いたげに主人をみな睨み付けていた。
 そんな中、中年男が口に煙草を加え火を主人に催促すると、凄まじい轟音と共
に煙草に火が付いたと思いきや、アッという間に煙草が灰と化した。
 中年男は、いや店内にいた数人の客すべてが驚き音源である右方向へと目を奪
われた。そこにはコンクリート製の壁に穴が空いており直径…いや、あるはずの
右手の壁が全て崩れ落ちていた。そして、今また遥か彼方から閃光と爆発音が響
いてきたのであった。
 『惜しいな…』
静まり返った狭い店内にマーシャルの声が響いた。
 『あんた本当に惜しい事をしたョ。もし、こいつが火薬式の銃なら喜んで撃ち
まくって大好きな煙を腹一杯吸わせてやるんだが、生憎こいつはブラスター銃で
あまり煙が出ないんだよ。でも、あんたの頭をぶち抜いて暑さを凌がせてやる事
くらいなら協力できるぜ』とマーシャルが右手に大型の拳銃を構え、Eパックを
左手で交換しながら、「煙は腹で吸うものじゃないな肺の間違いだったな」と内
心考えながらも客の間を擦り抜け中年男に近付くと額に銃を突き付けて言った。
 彼の場合、只単に銃を撃つ事が生がいのような人間であり、仕事においても現
在その機会がないのだから余計にその欲求不満が募り頭にきていたのであろう。
 中年男は先程の火球が自分を狙っていたものだと分かると顔からは見る見る血
の気が失せ、あわてふためきながら襟巻トカゲの如く外へと逃げ出して行った。
 その姿を見届けると、マーシャルは慣れた手つきで銃を懐へとしまい込んだ。
 彼の銃は、D&M(ドライブ&メタル)製・M357、通称デビルブラスター
と呼ばれている機動刑事であるマーシャルの専用銃である。この銃は5段階のセ
レクトスイッチで火傷・気絶・殺傷・破壊・消滅と用途に合わせ選択できるよう
になっており、1回のEパック交換で通常(殺傷)36発を撃つことが出来る。
また破壊・消滅モードは対物用であり、テロリスト等の対機動兵器用としても使
用出来る様に設計されてはいるが、消滅モードにおいては全エネルギを一挙に放
出するため1回のみの発射となり、続けて攻撃する場合にはEパックの交換が必
要となるのである。
 『……。』
しばらくの沈黙が続いた。誰もが突如として起こった事態に対して声を出すこと
が出来なかったのである。
 そんな雰囲気の中をマーシャルはコンクリートの壁に空いた穴をふと横目で見
ながら静かに店を出ていった。
 そして、店を出ると「あんなでかい穴あけちまったのがバレたら、今度は首だョ」
と格好をつけ過ぎた事を後悔しながら一目散にその場から逃げ出したのであった。




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