AWC お題>「聞いて極楽見て地獄」 クエスト


        
#1685/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (AWC     )  89/ 7/16  12:20  (102)
お題>「聞いて極楽見て地獄」 クエスト
★内容

 なんといってもビルカ星は最高だ。遥か離れて暮らすうちに故郷の地球を
忘れてしまいがちな島流し、いや宇宙勤務の俺達にとって、地球そっくりに
惑星改造されたビルカ星は憧れの星である。
 そのビルカ星に俺とソフィーは新婚旅行にやってきていた。つまり最高に
最高である。

 朝の爽やかな光に誘われて気分よく目覚めた俺は思いっきり窓を開け放し
た。

 ゴワァーーーーーーーーーー

 物凄い熱気が部屋に吹き込んできた。俺はあわてて窓を閉じた。ビルカ星
はまだ改造の途中で、気温は朝とはいえ40度以上はありそうだ。
「うーん、あっつーーーい。あなたー、窓開けたんでしょー」
 ソフィーは不機嫌そうにベッドから起き上がると目をこすりながら俺を
睨んだ。
「いやー、ごめんごめん、ついうかっりと...」
「ふっふっふっ、罰として今日は別行動だな。おじさん」
 ソフィーはにやりと笑いながらかわいい顔に似合わない言葉を吐いた。
「そ、そんなー、僕はソフィーと一緒にいたいのに。夫婦なんだからー」
 俺はソフィーのそばににじり寄ると彼女の手を握って懇願した。
 ソフィーはまだ二十すぎの若さ、勤務先の惑星管理局に臨時職員として
働いていたのを俺が見初めて無理やり、いや口説き落して結婚にこぎ着けた
のである。まあとても可愛い妻なのだが、どうも俺はソフィーのいいなり
というか尻に敷かれそうである。

 俺はソフィーをなだめすかしながら地球郷土料理の朝ご飯、パンに味噌汁、
そして生タマゴといちごジャムを混ぜて食べた。
 管理局の味気ない定食とは全然違う実に味わいの深い料理、地球からはる
ばるシェフを呼んでいるだけはある。
嘘だと思ったらあなたも試してみたらいい。
 食後、俺達は浜辺を散歩した。くつろいだひとときになるはずであった。
「きれいな景色だねー、ソフィー。青い空、明るい二つの太陽、赤い海...」
 実際、二つの太陽はまぶしすぎた。灼熱のビーチの気温は60度を越えて
いる。強酸性の海が不気味ですらあるが、憧れのハネムーンを盛り上げない
といけない。俺はソフィーの手を耐熱服越しに握ろうとした。
「暑苦しいのよねー、おじさん。離れて歩いてよ」
「まわりは熱いのにソフィーは冷たい。熱くなろうよこのビルカ星のように。
ねえ、ソフィー」
「ねえ、おじさん、地球ってやっぱしこんなとこなの?」
 ソフィーは俺の言葉を完璧に無視していった。
「そうだなー、僕が地球にいたのはもう20年前なんだけど、大体似たよう
なもんだったけどね。もう少しすずしかったかなー」
「ほら、サーファーだ!地球では僕もうまかったんだよ」
 強酸性の波頭に耐熱服で身を固めた男がボードをあやっつているのが
見えた。
「きゃっ、すごぉーいーーーー」
 しかし見る間もなく男とボードは波に呑まれ、ジュッという感じで白煙が
上がりやがて白骨が波間に漂った...
「彼は根っからのサーファーだったんだ。ビッグウエンズデー、波に乗る誘
惑には勝てなかったんだ...」
 俺は思わず涙ぐんだ。
 ソフィーはそんな俺を不思議そうに見ていた。宇宙で生まれ宇宙で育った
彼女にはそんな気持ちはわかってもらえそうもない。宇宙で愛を育むのは大
変だ。

 それから何事もなく1ヶ月がたった。とはいってもビルカ星では太陽が
回るのが早いので実際には地球でいうその日の夜になったところである。
しかし夜。新婚旅行。むふふ、わはは、ひっひっひ...である。
 ところがソフィーは熱い気候、慣れない環境に疲れたのか、俺の執拗なま
での誘いをかわし、シャワーを浴びるとさっさと一人寝てしまった。
 あての外れた俺は一人もんもんと酒をあおった。しかし、わがまま娘の
御機嫌とりで溜ったストレスはそんなことでは癒されはしなかった。

 ガタッ

 俺は意を決して立ち上がると部屋を出た。
「女の子、優しい女の子を探そう」
 ソフィーにばれたら即離婚ものだが、そうでもしないとやってられない。
今日の仕事は辛かった...

「いらっしゃい、どうなさったの?ハンサムなお顔が愁いに沈んでいるわ」
 ここはホテルのラウンジ、結局街に出るわけにもいかないしまあこんな
とこかと落ち着いてしまった。
「いやー、いろいろあってね、でも君みたいな奇麗な人がいればハッピーだ
よ」
 実際、彼女は美しかった。ラウンジの雰囲気とか照明のせいかも知れない
が、フィリピン娘も真っ青というか...彼女はプリシアといった。
 別に下心はなかったのだが、どういうわけか結構プリシアとは話ができた
りして、結局彼女の部屋に行くことになった。
 そして全然そういうつもりはなかったのだけれど、抱き合ったりしてる間
におかしな雰囲気になって俺と彼女はベッドにもつれこんでしまった。
 何ということだ、俺にはソフィーがいるのに、しかしかえって刺激が...
そしてまたプリシアがとんでもなく好きというか...
 というようなことはあっさりと済ませて...
 要するに彼女は絶頂に達した。

 ウギャオーーーーーーーーーー

 プリシアは異様な叫び声を上げるとその身をかきむしった。
「うわ!」
 彼女の美しかった裸体が不気味に変化して、目は飛び出すは、鱗は出るは、
尻尾は生えるは、そうか要するに彼女はもとはビルカ星人、惑星改造計画に
合わせ整形手術を受けて地球人相手に働いていたのだった!頂点に達した
ことで内分泌のバランスが崩れ体がもとに戻ってしまったのだ。
「う!」
 締め付けが一段ときつくなり、俺は耐えきれなくなりながら思いだしてい
た。そうだあれはプレイボーイで読んだんだっけ、ビルカ星人の女は情交の
後で本能的に男を食い殺してしまうと...

                    FIN




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