#1677/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (HYE ) 89/ 7/ 8 21:30 ( 96)
ケンダマ NINO
★内容
ケン玉
「よお、宴会やってる」
「まーだ。いつもの通り、先生がさ、話しこんじゃってるんだ」
「そうなのよ。また例の病気がでちゃってんの」
「そうよ。それくらい分かってんでしょ」
「いったい誰が話し込んでんだ」
「森田だよ。森田に決まってんだろ」
「そうよ。それくらい分かってんでしょ」
「そんで何話してるの」
「聞いてみりゃわかるよ」
「そうよ。それくらい分かってんでしょ」
「いい加減、腹話術やめろよ、誠」
「ゴメーン」
「いったい何を話してるんだ……」
「……だからだな。これはオバさんと言われている連中が、どうして男のように見える
のかという問題なんだよ」
「オバさんなんかどーだっていいんですよ」
「いや、どーでもよくない」
「しつこいなぁ。先生」
「うるさい。私の論を聞きたまえ!」
「はいはいはいはいはいはい」
「いいかな。女性というのは、男と女を同時に含んでおる」
「はいはい、それからどした」
「子供も生まず、結婚もしない中年女性が、なぜ綺麗か?」
「綺麗なわけないでしょう。美しくないから結婚できないんだから」
「これは言い方が悪かったな。なぜ、男のようにならないか?」
「女だからでしょ。当り前ですよ」
「ちがーう。結婚しない女性は、女を失わないのだ」
「わけわかんないから、もう宴会しましょうよ」
「女の定義を言ってみろ」
「定義なんてないでしょ」
「女とは、子供を育てるものである」
「なんなんだこの人は」
「つまり、オバさんは子供を生み、育てているから、女を失っているのだ」
「よくある話だ」
「なにおー」
「……ちょっとこれって、やばいんじゃない」
「喧嘩になるかな」
「ならない、ならない」
「そうよ。それくらい分かってんでしょ」
「だから、お前は黙ってろって」
「ちょっと質問していい? ……この部屋に何人いるのかな」
「わかるわけないだろ」
「そうよ。それくらい分かってんでしょ」
「向こうの部屋は森田と先生って名前があるけど、こっちの部屋は……」
「名前があるのは「誠」だけだな」
「そうよ。それくらい分かってんでしょ」
「俺も腹話術の人形もってくりゃ、作者が名前つけてくれたのに……」
「なあなあ誠、その人形の名前、なんてぇの」
「私の名前はルーシー」
「気色悪い奴ぅ」
「ところで、喧嘩はどうなったんだ……」
「よろしい。そこまで言うなら、君の論を述べたまえ」
「人間はケン玉である。そして、人生はケン玉遊びである」
「ケン玉だとぉ」
「そうですよ。つまりこうです」
「ほう。君はケン玉を持ち歩いてるのかね」
「ケン玉というのは、ケンの部分と玉の部分に分かれます」
「よし。大体君の言いたいことは解ったぞ」
「人間はこうやってケンとタマがひもで繋がれている状態で生まれてきます」
「つまり、性別というのは単に、ケンの方を持つか、玉のほうを持つかという違いなん
ですよ」
「君、きみ。それは表現がストレートでないかな」
「人間は自分のケンを他人の玉にさしこみたい、とか、自分のタマにケンを入れて欲し
いとか思うわけです」
「やめたまえ。話がいやらしいぞ」
「ところが結婚した女性、特に中年になってくると、ケンとタマの遊びに飽きてくるわ
けです。そうすると人はケンやタマを握るのではなく、ひもを握ることになるのです。
だから、おばさんは男のような顔をしている」
「まったく下品な奴だな。お前という奴は」
「こっちのほうが理屈っぽいでしょうが?」
「ただ下品なだけじゃないか」
「……いっ、いやらしぃわぁ」
「ケン玉ねぇ。なかなかいい表現だと思わないか」
「しかし、森田らしい理論だな」
「人間はケン玉かぁ……」
「あれ、宴会まだなの?」
「おお、いい時にきたな」
「そお?」
「ここで問題です。お前さ、ケン玉遊びするとき、どっち掴む?」
「遊び方は色々あるしな……両方」
「おまえ、両刀使いかぁ?」
『あはははは』
「おまえら何ウケてんだ? ……エミちゃん顔真っ赤だよ。どうかしたの? 俺なんか
変なこといったかなぁ」
おわり