AWC 大型中型ゐんば小説小説《京都特許許可局》    ゐんば


        
#1668/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (GVB     )  89/ 7/ 1   2:12  ( 39)
大型中型ゐんば小説小説《京都特許許可局》    ゐんば
★内容

松本喜三郎は今年の春 三本松大学を卒業し京都特許許可局に入局した
「じりりりーん!」
かれのデスクのベルがけたたましく鳴った
勢いよく喜三郎は受話器を取ると
「はい!キョウトトッ、トッキョキョ、キョアキョグです」
生まれて初めての挫折にがっくりきた喜三郎をみて
声をかけたのは先輩社員の杉野森弥三郎だった
「やっちまったな 気にするな最初は誰でもやるんだ
あわてて言おうとするからいけないんだ ゆっくり言えばいい」
その時また電話がけたたましく鳴った
弥三郎は「みてな うちの局には古くから伝わるコツがあるんだ」
というと受話器を取った
「はい、」と弥三郎は応えると息をゆっくり吐いて 吸って 吐いて 吸って 突然
「キョー」
と一声高く叫んだ そして辺りを見回し声をひそめ
「と」
とつぶやいた そして受話器を持ったまま三歩進んで
「トッ」
二歩下がって
「きょ」
右を向いて
「許」
左を向いて
「可」
そして左からゆっくり顔を右に向けながら腹の底から絞り出すように
「きょーーーーーーーーーーー」
と低い声でうなり出した そして顔の紅潮が限界に達したという頃
ふっと力を抜き 床にひざまずき肩を落とし
聞こえるか聞こえないかの声でつぶやいた
「ク」
電話といえども笑顔を忘れずは会社生活の基本である
にこやかな微笑みを浮かべ 弥三郎は優しく受け答えした
「です」
弥三郎の助言により自信を取り戻した喜三郎は
若手官僚として大いに活躍した
そして後に三重県の津特許許可局局長になったという

                             [完]




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