#1607/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (CGF ) 89/ 6/ 4 12:49 ( 95)
『土』(3)&(4) 舞火
★内容
(3)
最も火星に近い……。
植物が生い茂る、自然保護区となる筈だった……。
今は唯、渇いた大地のみ……。
それは。
『アーク』No.99ステーションの『ゲー』。
地平線がせり上がっていた。
荒野の中に、一本のハイウェイ。
透明カプセルに包まれたそれに、一台の車が走る。
ハイウェイ・コントロールに制御を任せ、笹井真理亜は窓の外を見つめていた。
広がる茶色の大地。
どんなに目を凝らしても、生命の一点すら見付ける事はできない。
「……」
そっと目を伏せる。
−−−渇ききった大地。
こんな色の大地って、火星と似てる、ね。
冷たいよ、この土地は……。
真理亜は目を開け、大地を睨む。
言葉が漏れた。
「死んでる、この土は……」
ハイウェイの終点に小さな都市があった。
公的機関の建物で構成された、『ゲー』唯一の都市『ホーライ』。
僅かに真理亜の口許が綻んだ時、運転席のパネルのランプが点滅し、ブザーが鳴っ
た。
インプットしていた目的地が近付いたせい。
すぐに、そこが視界に入った。
『環境管理局』という名の、れんがを模した壁を持つ、8階建てのビル。
南側は透明プラスチックの窓の群。
そして、真理亜を引き付けて止まない物が、東西の壁に存在する。
車が地下に吸い込まれる寸前。
それは、その姿を表わした。
巨大な。樹木のモザイク画。
赤茶色の大地に、焦げ茶の幹。
そして。
何よりも願って止まない。
−−−あれは、希望……。
人々の願いを込めて、そこに広がるのは。
緑……。
(4)
環境管理局、3階。
『ゲー緑化対策プロジェクト』のプレート。
真理亜は、そのドアを開けた。
中にいるのは、唯独りの女性。
真理亜は懐かしいその後ろ姿に、声をかけた。
「リーン」
声をかけられた女性は大きく体を震わした。
反動によるキーの誤操作で、警告音が部屋に響く。
女性は振り返り、そして。
「真理亜!」
真理亜の親友−−−リーン・海原は立ち上がり、真理亜に笑いかけた。
「おかえりなさい!」
にっこりと微笑む真理亜。
「またチーム・メイトね」
「ええ、一緒にがんばろーね」
リーンは大きく諾く。
1年ぶりの再会。
「ちょうどいいわ。ね、休憩行かない?」
「うん」
リーンは真理亜の腕を取り、食堂へと連れて行った。
食堂は8階にあった。
3時には少し早いせいか、人が少ない。
2人は、コーヒーを取り、席についた。
「D地区の様子、どうだったの」
D地区は、『ゲー』最北端に位置する。
真理亜は、3日前までそこの出張所勤務だった。
「なんとか、サボテンの類が生えて来たってとこね」
「少しはなんとかなりそうな感じ?」
「ええ、D地区はなんとか雨を呼ぶ事が出来るから……」
「雨……か。雨さえ降れば、『ゲー』の緑化も早いのに……」
リーンは溜息をついた。
−−−『ゲー』が荒野と科した原因の一つの、気象コントローラーの異常。
僅か、3日間の異常によって『ゲー』の自然は、完膚なきまでに痛め付けられ、
その結果が、完全なる荒野。
それ以来。
雨雲は、『ゲー』全土に広がる前に消える。
瞬く間に……。
それは。
今だ、何人も説明できない現象。
−−−だけど……。
「雨、だけの問題じゃないと思うの」
真理亜が言った。
「雨だけの問題だったら、雨の恵みを受けれる筈のD地区が緑にならない訳ないもの」
「それは……そうね……」
リーンも諾き、そして、つぶやいた。
「雨……よりもここの大地そのものに問題があるんじゃないかしら、って最近、私も
思ってるの」
「私もよ。なんとなく、だけど……」
真理亜も諾いた。
*******************************つづく****