#1602/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FQF ) 89/ 6/ 3 8:52 ( 55)
思い出にラヘ゛ンタ゛ーのリホ゛ンかけて4 三才野菜
★内容
高田は無言であたしのことを睨み付けた。ちくしょう、判ったわよ。
殆ど売り言葉に買い言葉。あたしは一気にまくしたててしまう。
「だって普通、自分が振られた相手と仲良く話なんか出来る?せめて、せめて昔のい
い思い出にしようと努力して、なんでもないふりをするしか仕方がないじゃないの。
あたしにはこれが精一杯の努力なのっっ!」
なのに。あたしがこれだけ恥をしのんで言ったのに。高田の奴はあきれたような顔
をしてつっ立っているのだ。その気の抜けた顔が腹立たしくて、あたしは思いっきり
高田を睨む。
「なによ。当たり前でしょっ。」
「…ちょっと待て。お前いつ俺に告白なんかしたっけ?」
「卒業式の日よっ。電話したでしょっ。」
「…ああ、確かに掛かってきたことは掛かってきたよ。でもあれは…確か今西の方か
ら一方的に切らなかったか?」
「だって、あたしが名乗って、そしたらあんたが黙り込んじゃったんじゃないの。そ
したらああこれは望みがないんだな、って納得するしかないじゃないの。」
「…あのな。勝手に思い込むなよ、頼むから…。」
え。何、どういうことよ。
高田の方は完全に気が抜けた風で、先刻までの怒ったそぶりはすっかり消えている
。 でも、今のは聞き捨てならないわ。
「どういうこと。説明してよ。」
ことと次第によっちゃ…。
「おれはてっきり今西は沢田の橋渡しをするつもりだと思ったから…。」
ずるずるずると壁に沿って座り込む。頭を掻きながら。あたしもつられて座り込ん
じゃったけど。
沢田ね。沢田というのはあたしの親友だった子で、あの子も高田が好きだった。
でもねぇ。
ははは。何だかあたしも気が抜けちゃったわ。結局一人芝居だったってことか。
振られたと思い込んでただけとはね。道理で。
高田には罪悪感はこれっぽっちも無い訳だ。はははは。なーんだ。
「あーあ、ばかみたい。」
壁を背に体育座りをして膝を抱える。隣には高田。二人とも気の抜けた顔で。
誰かが見たらさぞかし変だろうな。
「結局俺ら、両思いだったんじゃないか。」
「ほーんと。 …え?!今、なんて…」
嫌だ、あんまりさらっと言うんで聞き逃す所だったじゃないの。
「両思いだったって言ったんだよ。」
ん。抵抗する暇もなく、唇を掠め捕っていかれてしまう。何て手の早い奴なんだ。
「今のは中学のときできなかった分。」
いたずらっぽく笑ってみせる。ずきん、と胸に響いた。
ああ、やっぱり好みだなぁ。
「で、今の分。」
今度はあたしもちゃんと目を閉じる。完全に身を委ねちゃって。
校舎内でこんなこと、見つかったら「不純異性交遊」かな、なんて思いながら。
今度こそ思い出を、ラベンダー色のリボンで括って、しまってしまおう。
思い出す度ほろ苦い思いをすることがないように。
だって、次の未来が今、戻って来たんだもの。
Ende