#484/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (NNH ) 87/11/10 18:19 ( 66)
『すくらんぶる交差点』 (4) 小嶋 淳
★内容
すくらんぶる交差点
小嶋 淳
4
宏美の言った店は、センター街を少し入った所にあって、白い壁に赤いネオン・サイ
ンで『チャールストン・カフェ』と書かれていた。
所々に観葉植物が置かれていたりして、南国コピーって感じのカフェ・バーでさ。
宏美とおれは、奥のカウンターに腰掛け、『エメラルド・フィズ』てのをオーダーし
た。
「いい感じね、あの2人」
ポツリと宏美が呟いた。
「美樹本と由美ちゃん?」
「そっ」
宏美は、グラスを指で弾きながら、羨ましそうな瞳をしていた。
今、此処にいるおれ達だって、傍から見たらあんな感じに見えるんじゃないかな。
そう考えると、何か妙にくすぐったいような、
そんな気がした。
考え過ぎかな?
「伸君もいい感じなんでしょ、彼女と」
知合いがいないと『伸君』だもんな。
調子いいよ、宏美は……。
「あのねぇ、そんなんじゃないの、碧とは」
「ふーん、碧なんだ、新しい彼女って」
あっ、まじい。
「ん、まあ……。あ、でも付き合ってる訳じゃないからな」
「そお? じゃ、碧は伸君の何なの?」
「絡むねぇ、今日は」
「はぐらかさないでっ」
宏美はマジな瞳で、じっと見詰めててさ。
「何なのって言われても……。いいじゃないか何だって」
(焦らせたい、妬かせたい)
と思う気持ちが先にたっちゃってさ。
で、ついきつい調子で返しちゃって。
「……そうね」
宏美の瞳が、一瞬悲しそうに見えた。
「あ、いや、そういう理由じゃ……」
まずいなぁ……。
あーあ、sigh。
気まずい雰囲気が、しばらく続いた後、
「あのさ……」
「ん?」
やっと宏美が、口を開いてくれた。
「あんまり講習さぼってると、通ってる意味が無くなるよ」
ほっ、話題が明後日の方向に向きかけた。
「分かってはいるんだけど、意地悪な睡魔がいてさ」
「何言ってんのよ。バカね」
宏美が、小さく微笑んだ。
地上に向かう階段を1/3程昇った所で、宏美のきゃしゃな肩をグっと引き寄せた。
驚いた様に立ち竦む宏美に、ゆっくりと唇を重ねる。
閉じていた唇が少し開くと、宏美の冷たい歯に、おれの舌先が微かに触れた。
宏美は、うつむいたまま、
「誰とでもこんな事するの?」
とつぶやいて、また階段を昇り始めた。
「まさか」
おれは、宏美の後を少し遅れて、追いかける。
自分でも、何を考えているのか分からなかった。
宏美を家まで送った後、今日一日の出来事が、テープの早送りの様に、頭の中を駆け
抜けた。
−Screen4 end…To be continu