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詩篇 空中の書18 直江屋緑字斎 |
#330/1850 CFM「空中分解」 ★タイトル (QJJ ) 87/ 9/11 12: 2 ( 16) 詩篇 空中の書18 直江屋緑字斎 ★内容 <静謐(せいひつ)のひととき 16行> 静謐(せいひつ)のひととき 静かな睡り、ときとして凍るような夢 幼年期の薄墨色の景色か ら、渦巻の形をして浮かび上がる極彩色の洪水 耳鳴りを伴って 訪れる体表の微妙な顫動(せんどう)、輪転機に附随する独特の 匂い 蜜柑の涸(かわ)いた皮、ソーセージの包装紙 夜が好き というのでもなく、嫌いというのでもなく 眼の芯にあたる空洞 に棲む者たち、栓をした頭脳などと…… 銃口がこちらを向いている、空間には紫の翳(かげ)が流れる 声を出してはいけない、頭の禿げたフランス人が囁(ささや)く 燈を点してもいけないのだろう 革表紙の書物の位置がずれてい る ときおり数本の蝋燭が濡れたように光っている 罰を、鞭を、割れたビール壜(びん)を 数秒ののちに静けさの 極限を迎える、喉から弱い息が洩れるだけに……
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