#2288/3615 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 22/07/18 17:18 ( 28)
壁と障子が入れ替わるお話 永山
★内容
WOWOWの松本清張ドラマ「眼の壁」全五回を録画視聴。ネタバレ注意です。
原作は松本清張の同名小説で、一部読んだ覚えがあるのですが、ドラマは記憶とだい
ぶ違った感じ。まあ、時代がバブル末期というか終わりを迎える一九九〇年に変更され
ており、それだけでもだいぶイメージや設定が変わってくるものなんでしょうけど……
やっぱり違いが気になって、検索してみたら大幅に変更していることが判明。トリッ
ク、全然違うやん(苦笑)。
ドラマのストーリーを極めて大まかに記すと、電器メーカーの課長が手形詐欺に遭っ
て二億円の損失を出し、責任を感じて取り返そうとするも拉致され、死に追いやられ
る。電器メーカーは会社の信用にも関わるため、どうにか内々に済ませるべくすべては
課長の責任として幕引きを計る。そればかりか、課長の自作自演まで疑い始める始末。
課長の部下だった若い男が責任と義憤から、単独で真相を探り始めると、そこには思い
も寄らない裏があった――ってなところになりましょうか。
一応、部下の若い男が主人公であり、探偵役を務めるのですが……実に頼りない。意
志は強いのですが、探偵能力は素人、打つ手は行き当たりばったり、思い付き。次善の
策を考えていない、ラストでは虎穴に乗り込んでいくというのに警察に知らせていな
い。で、結果、助ける助けると宣言していた課長は遺体で見付かるし、他にも三人ぐら
い死者が出た。
探偵役が失敗することがあるのは仕方がないとして、まるで成長しないのはいかがな
ものか(清張作品なのに ^^;)。思いの強さだけで突っ走り、最後も命の危機にさらさ
れながら、運よく助かるという……正直言って、推理小説らしさがほとんどなかったな
あ。ただ、この部下役を演じたのが小泉孝太郎なんですが、かなりのはまり役に見えま
した。正義感がやたらとでっかくて、でも甘くて空回り。
焼け死んだように見せ掛けて他人になりすますのが、本ドラマのミステリの肝になる
でしょう。一九九〇年なら、時代的にぎりぎり成り立つかな。DNA鑑定はまだ黎明期
だったはず。その一方で、昔からある身元特定の手掛かり――歯の治療記録に犯人が何
ら頓着していないのは、いささか不自然ではありますが。
ではでは。