#434/1158 ●連載
★タイトル (a-s ) 05/08/29 08:42 (467)
「月のない夜でさえも[エピローグ1]」 紅
★内容 05/08/29 08:50 修正 第2版
こちらでは初めまして。
* a stupid butterfly * 管理人の紅と申します。
初めて書いた作品なのでお恥ずかしいのですが読んで頂けたら幸いです。
[エピローグ1]
静かな静かな夜
冷たく澄んだ空気
夜空に輝く小さな星々
「あ…。」
夜空を見上げていた凛音は小さく声をあげた。
「月がない…」
そう。
今日は丁度新月の日だった。
暗い暗い夜の空で、いつもならばどの星よりも煌々と輝いている月が今日はない。
「……」
白い息を吐き、手を擦り合わせながら、いつもより暗い夜空をみつめた。
色の違う小さな星達だけが夜空に儚く散っている。
月のない夜空は常より更に悲しさを増していた。
なんとなく物足りない、寂しい雰囲気が漂う。
「……」
凛音は、絶対に手に入らないものを欲しているかのような切なさを込めた声音でつぶや
いた。
「……月…」
真っ暗な夜の闇の中に凛音の掠れた声だけが虚しく響く。
「……っ」
凛音はその言葉を口にした途端、手で口を覆いその場に崩れ落ちる。
「月っ…。月…っ!―――っ」
目に涙を浮かべ、悲痛な声で狂ったように叫ぶ。
何度も何度も―――。
胸がはちきれそうなくらいズキズキと痛かった。
どうしようもないくらい辛かった。
まるで走馬灯のように全ての記憶が、過去が…蘇ってくる。
楽しかった日も、苦しかった日も。
月と過ごした全ての日々を。
鮮やかに、鮮やかに、過去が、現れては消えていく。
「……」
凛音の頬を涙が伝った。
美しいけれども悲しすぎるものが、星の儚い光を受けてキラキラと輝きながら…。
「――っ。月ぃ……っ!」
顔をくしゃくしゃにしながら押し殺した声で欲する。
アスファルトの地面に凛音の涙がポトポトと落ちていった。
「ひっく…っく…――」
しゃくりあげながら、声にならない声で叫ぶ。
胸の辺りがひどく締め付けられた。
――心が痛くて、痛くて…。
慣れることの出来ない夜空
慣れることの出来ない痛み
慣れることの出来ない寂しさ
いつまでもいつまでも…きっと私が死なない限り解放されることはない。
何で?…なんで……?
その言葉だけが頭の中で繰り返される。
あんなに一緒だったのに
愛していたのに
幸せだったのに
――全てが消えた。
毎日が月のない日々。
「いないじゃない…」
ののしった。
「嘘つき…ッ!」
ここにいない人を。
「月があったって…」
愛しかった人を。
「なくたって…」
憎んだ。
「何でよ…。なんでなのよぉっ…?!」
やりきれない想い。
どうしたらいいの?
堅い地面を何度も何度も殴りつけた。
皮が破れ、血が滲んでも。
痛みさえ感じることなく…。
まるでそうすることでしか胸の痛みに耐えられないとでもいうように。
胸の痛みのほうがよほど痛いのだとでもいうように。
――切ない響きが夜の闇に吸い込まれていく…
「わたしを…ひとりにしないで…っ――」