#5216/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 08/10/27 20:52 ( 37)
どうしてもネタバレしたいとき 永山
★内容
推理物を書く上で生じ得る困難の一つに、トリックのネタばらしがあると言
えます。
ネタバレが歓迎されないのは、ミステリに限らず、たいていのエンターテイ
ンメント物に当てはまるでしょうが、敢えてここで取り上げるのは、ネタを明
かすことで、作品の面白味をアップする効果を期待できるケースがあるためで
して。
たとえば――推理物を読んでいて謎が提示されたが、どうも、既存のトリッ
クAを使えば解決できそうだ。しかし、最後まで読むとトリックAでは不可能
であり、新しいトリックBが使われていたと分かった――こんな場合、読者の
受ける感銘は作者の思惑より小さくなるのではないか。トリックAではないこ
とを早めに示してくれれば、もっと楽しめたのに……。また、読者は作中の探
偵役が、何故トリックAが用いられた可能性を議論しないのか、奇妙に感じる
かもしれない。探偵役がミステリマニアなんていう設定ならば、尚更です。知
っていて当然の有名なトリックAについて言及しない不自然さ。
ために、作者は誘惑に駆られる。ここに描かれた謎は、既存の(他の人の作
品の)トリックAでは実行不可能であることを明示したい、と。
そうするにはどんな方法がいいのでしょうか。作品名を伏せてトリックのみ
引き合いに出すか、作品名も合わせて示すか。その前段階で、これこれの作品
のトリックについて触れていますと注意を喚起するか。どれも充分ではないと
思えます。
昔なら、ミステリ全体の作品数がまだ少なく、ミステリ読みを自負するなら
読んでおくべき作品数もたかが知れていました。言うなれば定理や公式のよう
に頭に入れて、新作に臨むべし。これで済んでいました。
今では状況が変わり、読んでおくべき作品だけでも相当な数に上るはず。実
際には読んでおけなんて上から目線で言うなんて、とてもとても。
理想を述べるなら、ミステリ研究家が何名か集まって、連日刊行される新作
を次々と読破した上で、この作品は**のネタばらしをしているから読むのは
**のあとにすべき、などという指針を作って公開してくれたら、それはもう
ありがたいのですが。まあ、現実的でない。
となると、作者各自が、本の帯かカバー折り返しにでも「本作では**のト
リックに触れています。未読の方はご注意を」云々と書くぐらいでしょうか。
これとて、問題がない訳ではないけれど、手間が一番掛からないかと。
他の方法、あるいは作中でのネタバレそのものに関して、別の考え方もある
と思います。あくまで私見ということで。
ではでは。