AWC 本の感想>『鼓笛隊の襲来』   永山


        
#5162/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  08/09/20  19:11  ( 31)
本の感想>『鼓笛隊の襲来』   永山
★内容
・『鼓笛隊の襲来』(三崎亜記 光文社)13/4441
 赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生! 予想進路上にある家々では、対
策に大わらわ。防音スタジオのない園子の一家は、果たして無事に切り抜けら
れるのか?
 表題作他、独特の日常的な非日常世界を描いた短編集。

 ミステリではありませんが、一部で評判の高い作者なので、一つ選んで読ん
でみました。
 うーむ。この手の小説を読むには、私の読み方は現実主義的に過ぎるのでし
ょうか。
 あり得ない状況をぽんと出して、そこから話を進める――というのが作者得
意の手法らしい。示される非日常はユニークで、繰り広げられる物語も悪くは
ない。
 ただ、現実主義的読み方をする人間は、立ち止まってしまう。
 たとえば、「遠距離・恋愛」。特区として空に浮かぶことにした街、という
物が示されるのだが、何のために空に浮かぶのかというメリットが、高原野菜
を作りやすいことしか触れられていない。対するデメリットを考えると、不釣
り合いで空に浮かぶ意味が見出せないのだ。
 あるいは、「同じ夜空を見上げて」。ある列車が走行中、乗員乗客とも何の
前触れもなく消えて五年が経過した。鉄道会社に明確な責任がないため、裁判
は難航しているらしいのだが、そんなことはあり得ないだろう。しかも原因不
明なのに、鉄道はずっと営業を続けているという。これもなさそうだが、原因
がどうしても分からなければ、そのまま営業再開するかもしれない。しかし、
消えた列車の便は運行されなくなった、というのは何でだ?
 必要のない場合でも非日常な出来事を入れるがために、瑕疵ができているよ
うに感じる。先述の「同じ夜空を見上げて」、何も列車を消さなくても、ロケ
ットで旅立って行方不明になった、で充分じゃないかな。
 きれいに映像化して、テンポよく見せられたら、もっといい作品だなと感じ
るかもしれない。

 ではでは。





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