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★タイトル (AZA ) 05/10/20 22:47 ( 36)
本の感想>『御手洗潔対シャーロック・ホームズ』 永山
★内容
「ホームレス」と書いてあるのを一瞬、「ホームズ」と読んでしまうミステ
リ好きのさが。 orz
本の感想>『御手洗潔対シャーロック・ホームズ』(柄刀一 原書房)
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ノーベル賞授賞式会場にて、御手洗が受け取った盾の役割とは(「青の広間
の御手洗」)。遺跡の逆さ階段を昇る妖精、そのそばに逆様に置かれた遺体は
紫色のペンキで塗られていた(「シリウスの雫」)。現代日本で暮らすホーム
ズとワトソンが、犯罪現場を再現した研究室で起きた、密室での死の謎に挑む
(「緋色の紛糾」)。依頼により、秘密の写真を奪還するため、愛鈴・アドラ
ーの邸宅に入り込んだホームズ達は、そこで予想外の殺人事件に巻き込まれる
(「ボヘミアンの秋分」)。巨人の仕業としか思えない不可思議な現象を、シ
ャーロック・ホームズと御手洗潔が鮮やかに解き明かす(「巨人幻想」)。
ミステリファンの夢を実現させた中編を含む、ホームズシリーズおよび御手
洗シリーズのパスティーシュ。
ホームズの推理ぶりを一部茶化している「緋色の紛糾」を除けば、どれも名
探偵に敬意を表した作品に仕上がっており、パスティーシュとしての標準ライ
ンを充分にクリアしているでしょう。「緋色の紛糾」もパロディとして楽しめ
ます。
ミステリとしては、「青の広間の御手洗」にはほとんどミステリ風味はない
ものの、残りの四編は文句なく、本格ミステリとして成立しています(出来映
えにばらつきはあるが、いずれも合格点は出せる)。「青の広間・」にしても、
いかにも島田荘司の書いた御手洗潔の近況報告といった感じで、悪くはありま
せん。
編中の白眉は、やはり「巨人幻想」。御手洗もホームズも単独で名探偵なん
だし、二人で取り掛かる必要ないだろと思わないでもないけれど、そこはそれ。
二人が初めて会う場面には、ぞくぞくさせられました。御手洗達がホームズ達
を当たり前のように認識するのではなく、なるべくきちんと段階を踏んで描い
ている点もよし。
巻末に付された島田荘司による“石岡とワトソンの往復書簡”は、遊び心に
溢れていて、笑ってしまった。この二人の記述者なら、さもありなん。
ホームズ物、御手洗物の双方を知っていないと、存分には楽しめないかもし
れないが、それでもなお、一読の価値あり。
ではでは。ホームズに自転車と来れば、「美しき自転車乗り」。