#2637/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (gon ) 05/01/12 14:43 ( 58)
発明の大化……対価の改新 久作
★内容
朝刊を読むと(もう午後やがな)愛媛県は瀬戸町出身の技術者(研究者)の発明対価が
6億なんぼだかだとあった。昨年は600何だか億と云われたものなのに(一審支払い
判決は、請求金額が200億だから200億満額となっていた)。いや、発明の対価と
して幾らが適当か、私には見当もつかない。ただ一般論もしくは日本語の問題として、
ちょっとヤヤコシイことになっていることを取り上げる。
一審判決に於いて、氏の受け取るべき発明対価は604億となっていた。なるほど、地
方裁判所は、そのように考えたわけだ。が、氏が200億しか(しか?)請求しなかっ
たので、支払い判決は200億となっていた。なるほど、別段、不自然ではない。此の
訴訟で注目された点は、サラリーマン研究者が個人として受け取ることが出来る「発明
対価」が、いかばかりか、即ち主張できる権利として、如何程度まで考えられるか、で
あった。それまで何となく、「あんた発明が仕事なんだから、自分の仕事を全うしただ
けでしょ……とは云っても、御褒美ぐいらいは上げるよ」(氏の場合は2万)みたいな
感じだったのが、特許法に明記されている市民の権利を氏が主張してしまった。産業側
は、まるで水滸伝の伏魔殿、開かずの岩が開けられて、恐ろしい魑魅魍魎一〇八星が飛
び出したわけでもあるまいに、「今まで飼い殺しに出来てたのに……なんでバレた!」
と慌てたことだろう。
このように考えれば、一審に於ける「発明対価」は、なるほど飽くまで604億だ。支
払い判決の200億って数字は、氏は本来ならば604億受け取ることができるっての
に、欲のないことで、其の三分の一しか請求しなかったため、即ち自分が手に入れられ
る権利のうち三分の二を予め放棄していたがゆえに、判決の形にしてもらえなかった。
しかし、考えようによっては、この「200億」も「発明対価」と云い得る。何故な
ら、支払い判決が200億だったからだ。実現しなかったが、履行されていれば、氏は
【発明対価として200億を受け取る】ことになった筈だ。
しかし今回の高裁勧告による和解(まぁ実質的には判決と同じようなもの)では、どう
も各種メディアは6億なにがしを「発明対価」として言及するよう仕組まれている。ど
うやら和解の文書に「発明対価として」云々との文言があるような書き方であった。ま
ぁ間違いではない。しかし、この「発明対価」は、上記の支払い判決200億分に相当
する内包、すなわち然るべき権利としての「発明対価604億」ではない。
記事をザッと読むと、氏の寄与度は5%とある(一審では50%)。これが前の「発明
対価604億」に相当する部分だ。が、この「5%」に当たる金額は、全く書かれてい
ない。そして、ただし6億を上限とする、と高裁和解案は云ってるようだ。まぁ最終的
な政治的決着、「発明対価」6億数百万の数百万はオマケなんだろう。
即ち、高裁は「発明対価」に「上限」を設けちまってる。本来なら「5%」の取り分が
あるのに、何かの事情で上限を設定したのだ。「何かの事情」とは恐らく、【本来の取
り分は巨額だが、そんなに取られたら企業が潰れる】ぐらいのものだろう。刑事裁判だ
ったら潰れようが如何しようが、執行すべきことを執行するよう判決を下すべきだが、
民事だから【大人の事情】が働いたってわけだ。
また上限いっぱいを若干でも超えて和解が成立しているところから、「5%」が実は、
6億より遙かに太い額だったと知れる。一審から考えれば、60億ぐらいあっても不思
議ではない(ただし一審の数字も私には根拠が、よく解らなかった)。まぁとにかく、
本来受け取るべき「発明対価」が6億ぐらいのものではなかったことは、容易に察せ
る。故に、6億とは、本来支払うべき「発明対価」では全くなく、企業側が支払える上
限が6億ぐらいだろう、と高裁が察した額ってことに過ぎない。本来としての「発明対
価」ではない。氏は、事情は知らぬが、本来受け取るべき「5%」を下回る6億で我慢
したことが窺える。その「我慢した額」としての「発明対価」に過ぎない。即ち、6億
とは一般に適用できる基準では全くなく、単に今回の案件の特殊事情が絡んだ結果に過
ぎない。
故に6億を強調するとは、特殊事情により縮小された「発明対価」を積極的に強調する
姿勢を示している。……とHPを見回せば、朝日そしてプロ野球問題を大金持ちのスト
とか何とか誹謗中傷した読売でさえ、6億を強調せず和解総額で穏当かつ良識的に伝え
ていたが、日経は「発明対価」6億を強調していた。まぁ日経だから、そういう感覚な
んだろうな。経済関係情報の詳報・速報は評価しているけれども、この感覚は、ちょっ
となぁと思うのだが、それはそれで一般紙とは異なるスタンスってだけの話で、別に構
わんけども。
ただ、この6億が一人歩きすると、せっかく「発明対価」って(って実は大昔からの権
利なんだが)新たな地平を矮小化するんじゃないかなぁと、思うのですぢゃ。まぁba
ka同士で舐め合う歪んだ「成果主義」の御時世に、正当な発明対価なんて望む方がオ
カシイのかもしれんが。