#2565/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (gon ) 04/12/17 05:50 ( 26)
漫画的手法 久作
★内容
傾城反魂香に就いて、若干の感想を申し上げたが、文字の人である私も舞台は見ないま
でも浄瑠璃脚本ぐらいは当たり前に読むため、つい暗黙の前提は書き飛ばした。浄瑠璃
も舞台芸術のうちだから、映像表現を前提としている。浄瑠璃とは石橋(叩いて渡るブ
リジストン……イシバシ、ではなくシャッキョウ)の向こうにある文殊師利菩薩主宰の
浄土だけれども、其の語感から、思考/空想によって構築されたイデア世界であると、
まずは了解されよう。以前に本朝廿四孝に読本で触れたとき、其の展開の目まぐるしさ
に言及した。でも、何故だか読者は、ついていける。映像的描写だからだ。何たって脚
本だから、映像を前提としているは当たり前だけれども、読者の脳裏に映像を容易に想
起せしむる筆法だから、論理なぞ二の次、グイグイ引っ張る(人の思考能力を停止せし
むる映像表現の【怖さ】でもある)。
実は此の筆法、現代日本漫画に継承されているやに思う。飛躍も矛盾も絵の説得力で押
し込む(論理には正当性と説得力の二面がある)。傾城反魂香の場合は、表現はスット
ンキョーでありつつも、背景の【世界/思想】がキチンとしているから、前MSGの如
く、或る理論によって分析が可能となる。これが若し、矛盾を「当たり前」とする思考
停止した感覚的なストーリーを前提にスットンキョーな飛躍をコトとする映像羅列をさ
れたら、ついていけない。甚だ魅力的な絵によって、付和雷同の淵にでも飛び込まね
ば、同化できぬだろう。
輪郭線のある絵画表現の伝統を、西洋より長く延命させた日本が、延命を続ける範囲内
で大衆社会を迎え、漫画なる表現を成長させたことは、幸か不幸か。独り絵画表現のみ
ならず映像表現を鍛え抜き洗練させ、論理の飛躍すら映像でカバーできると熟知してい
た文化が大衆社会を迎えたは、幸か不幸か。デマゴギーの道具に堕さぬほどの強靱さを
得ていない段階では、魅力的である映像表現は、偶々天使にもなろうが、悪しき作為が
介入すれば容易に悪魔になる。
案外、八犬伝で有何時登場する絵師が悪役側に設定されている理由は、そんな所にある
のかもしれないと、酩酊の裡に思いつき。
そろそろ寝ないと、仕事が……。おやすみなさい。