#2564/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (gon ) 04/12/17 05:07 ( 26)
傾城反魂香 久作
★内容
近松の戯曲っすが、これが途方もなく面白い。此処で云うも憚られるセクシャルな内容
もありますし。いや、美男子の絵師に惚れた御姫様が劣情に苛まれた挙げ句、侍女に絵
師を演じさせ「姫様可愛や」と台詞まで言わせて自分を犯させる(妄想を抱く←実は姫
と侍女は同一人物←上司によるセクハラ強制性交ではなく単なる自慰)。クライマック
ス(アクメではなく作品の最高潮場面)では、絵師に惚れた遊女に「そうかい分かっ
た、此の絵師は俺の夫となるべき男だが、その前に一週間だけ貸してやる。好きなだけ
イヂくり廻しな」と気前よく夫(予定者)を貸してやる。女同士の相姦……ぢゃなかっ
た相感のため、夫すら弄ばせる粋な気っ風は、まるで遊女を挟んだ男同士の穴兄弟ぶり
である(ってぇか其のリバースを狙っているのだろう)。
上中下の3巻本なんでふが、中巻は単純な色里風俗の称揚でファンタジックな内容では
ない(でも冒頭で、上巻に登場した悪役が唐突に殺されてて死体として転がっており、
意表は衝く)。やはり下巻が佳くって、御姫様が傾城太夫の如く気っ風が良いってのが
見所か(前出)。
全体の印象は、【ケ】たる現実社会の穢を集中させながらも【ハレ】の空間たる色里、
其の空間の論理を、人としての真実であると喝破している。翻って現実社会では、自分
では一歩一歩【常識的】に積み上げていった筈の行為が、【人間としての真実】から乖
離してしまい、矛盾を孕んでしまっている、其の大いなる矛盾。おバカなオヤジども
は、此の乖離を「仕方ない」と強いて納得してしまいがちだが、そろそろ矛盾は納得し
がたいレベルまで極大化しつつある。あまり無理をするから精神に異常をきたすのだろ
う。さすが我が日本は民主主義の国であり、そういう精神異常を内閣総理大臣の支離滅
裂スットンキョーな言説が代表しているけれども、責任者がオカシイと部下が割を食う
世の常、バカ同士の舐め合いは迷惑至極だし組織を滅ぼすだけなんだが、まぁ世の中そ
んなもん。そういった現在に於いて読むと、かなりの文学性を有する。人間に於ける端
倪すべからざる要素、セクシャルファンタジーを小賢く隠蔽していない所も、「人とし
ての真実」を語る資格を感じさせる。お暇な方は、読んで損なし(恐らく得もしないが
……)。