AWC リレーA>第12回 潜伏  AWCの隠れファン


        
#311/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (EFC     )  87/ 9/ 6  11:50  ( 93)
リレーA>第12回 潜伏  AWCの隠れファン
★内容
 それから数カ月、新聞を賑わすような出来事は起こらなかった。高倉源三は心筋梗塞
による死亡、ナオミは新人類の理由なき蒸発事件ということになった。ナオミの母はい
つのまにか家から消え、その家も別人がすむようになった。ぼろぼろの車は無断放置車
ということで処理された。超能力者同士の戦いを目撃したものはなく、世間の人々の話
題にものぼらなかった。
 高倉源三の担当していたプロジェクトはただちに後任に引き継がれた。このプロジェ
クトで一番の問題となったのは超能力者をつくり出すことの難しさもさることながら、
いかに超能力者を制御するかということであった。薬物に頼ると肝心の精神集中がまま
ならず、報酬を使えば彼らは増長する。結局今後の日本のためという理想的なおためご
かしを使うか、ろくでもない人物には定期的に解毒剤が必要な毒を発生するウィルスに
感染させていた。しかし加奈−ナオミにはそのような防護策を行なっていない、組織に
とって非常に危険な存在であった。そのうえ彼女は敵対勢力である自由超能力集団、及
びバイカーンと手をくんでいる上に彼女の恋人黒沢健はサイボーグになってしまった。
彼らはホッパーにとってなんとしてでも抹殺すべき対象となってしまったのだ。日本の
中枢に食い込み、支配とはいかないまでもかなりの影響を与えているホッパーもその半
分合法的な部分があるという面が災いになることもあった。彼らが黒沼をアジトに連れ
込んだとき、彼の手術の最中にホッパーの本部へその情報は伝わっていた。しかしホッ
パーの各支部は非常時態に対応できるように堅牢につくられており、電力も非常用電源
が使えるようになっていたので外部からの攻撃は不可能に近かった。そのような堅牢な
要塞に攻撃をかけるのはホッパーをためらわせるのに十分だった。とりあえず電源をき
ったもののその非常用電源で彼らは2週間居座っていたのだ。余りに世間を騒がせては
自分たちの存在が明るみにでてしまうことになるのでそれ以上の措置はためらわれた。
つまり彼らは、アジトを占領されるということを想定してなかったのだ。今までのエス
パーを使った暗殺部隊は一般人を人知れず殺すのには大いに有効だった。しかしそれが
対エスパーとなると話が変わってくる。この反省から彼らは対エスパー用の暗殺部隊の
養成をはじめることにした。しかしそれにはたくさんの時間が必要であった・・・。

 「まだ彼らがどこにいるのか分からないの!?」
高倉源三の後任となった北野祥子は今日もまた部下をどなりつけていた。
 「彼らをたたくなら早い方がいいに決まってるじゃないの。」
 「確かにそうですが・・・」
返事をしているのはうらぶれた雰囲気の男だった。
 「彼らは2週間ここにいました。それだけは分かっているのですがそれ以上のことは
  ・・・」
 「それじゃあ全然進んでいないじゃない。サイボーグってのは作られたすぐは木偶の
  坊なのよ。でもそろそろ自分の体を使いこなすかもしれない、今はもうそれほど危
  険な時期なのに。」
 「われわれホッパーはこれまで攻めることはあっても攻められることはありませんで
  したからねぇ。」
 「おだまりっ!そんなことが言い訳になりますかっ!!」
男はむっとした顔になったがすぐに自制した。
 「後数日で配属される調査部隊がくれば成果はきっとあがるでしょうけど。」

 黒沢健はかなりの時間を睡眠教育に使っていた。マニュアルを見るのはとうの昔に諦
めており、内蔵された補助頭脳に内容を登録することに決めたのだった。バイカーンは
再び学校に戻った。加奈−ナオミはときどき病院に横たわった加奈の魂の抜けた体をの
ぞいている。彼女の体には厳重な監視が付けられているようだ。しかしホッパーはナオ
ミと加奈が一つの体にいるとはまだ気づいていないようだった。気づいていれば加奈の
体は裏切り者として人質となるか処分されていただろう。しかしそれが分かるのも遠く
はない。ホッパーはこれまで一般人に対する工作しかしていなかった。しかしこの事件
を境にエスパーに対する攻撃をもくろむようになっているようだった。自由超能力集団
はこれまでのホッパーの圧力に対しやすやすとはいかないまでも身をかわしていたのだ
が、彼らが事件を引き起こして以降その追求は非常にきびしくなっていた。
 彼らはいま、同士を集めていた。ホッパーに見つけられ、彼らの奴隷にされる前に超
能力者をできるだけ手にいれたかった。しかし加奈のホッパーに付いての知識はすぐに
現在のものとあわなくなり、またホッパー内部のモニターも難しくなっていった。明ら
かにホッパーは彼らへの対策を打っているようであった。それでもなんとか対超能力者
用の暗殺部隊が訓練されていることまでは突き止めることができた。
 「やはり先手を打つしかないだろう。」
自由超能力集団のリーダー、長沢均はいった。自由超能力集団はナオミたちが施設を占
領していた際にそこのコンピュータを使ってホッパーのシステムをいじり、ホッパーの
施設の中に臨時の基地を作るのに成功したのだった。ホッパーの施設を使っていたのだ
った。
 「先手、というと?」
 「暗殺部隊が完全に訓練される前に彼らを全滅させるんだ。」
 「そんなことができるの?」
 「できる、というよりやらなければならないんだ。」
 「しかしだよ。われわれはそういった攻撃の練習すらろくにやっていないじゃない
  か。」
 「そう、われわれがホッパーの施設を占領していた2週間と、そのあいだに
  コンピューターを工作して手にいれた別の施設での1カ月。それくらいしか使えな
  かったのは残念だ。ここにはそんなことをする余裕がない。」
 「だいたいあと幾つの施設を使えるんだ?」
 「もしプログラムがかぎつけられていなかったら5つだ。」
 「武器はかなり手にいれた。しかし新しいものほどすごいものになっていくじゃない
  か。こうなると分かっていれば彼らがきたときにすぐにホッパーを攻撃していれば
  よかったんだよ。」
 「それは買いかぶり過ぎだ。彼らが数組来たとしてもホッパーとの差は大きすぎる。
  仮面ライダーのようにはいかないもんだよ。」
 「長沢、ちょっと見てくれ。」
ホッパーの端末をいじっていた男が彼を呼んだ。
 「どうした?」
 「すごいものを見つけたぞ。暗殺部隊の養成所と武器開発及び生産工場だ。」
 「なんだって。それはどこだ?」
 「養成所は長野県の山奥だ。工場は豊田にある。」
 「豊田だって?やけに開けたところにあるもんだな。それこそこんなものも山奥にあ
  るものじゃないのか?」
 「カモフラージュさえちゃんとしておけば部品調達がいいとこを選ぶさ。」
 「そうか、暗殺部隊はなんとかして叩き潰したいが、この工場は手にいれたいな。」
 「豊田ならバイカーンの協力を求めることができますね。」
 「それでは具体的な計画を作っていこう。」
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