#312/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (HWA ) 87/ 9/ 7 1:36 ( 95)
リレーB>第10回 そろう面々 AYASE
★内容
ジャンさんの導くままに洞窟を進む。 歩いているうちに、心が落ち着いてきた。
ここは、もしかしたら「鬼門の門」かもしれない洞窟。 だから、何があっても
不思議じゃない。 だけどなぁ。 いきなり剣でお出迎えだなんて、ないんじゃナ
イ。 アレが「賢者の剣」だって(?) 冗談キツイよ。まったく。 主人でも間違え
てるんじゃ...ワァァァァァッ! ドッ。
「芳岡さんっ!」
「...ッテテ。 大丈夫デス。ジャンさん。 ちょっと、つまづいただけです。」
実際は「ちょっと」どころではなかったが、先を行ってたジャンさんには分かる
まい。 ...にしても、この洞窟。 いやにウネウネとして広く、凹凸が激しい。お
まけに暗いときてるから、足場は最低。 初心者には相当キツイ筈なのだが... ジ
ャンさん。 あの人はなんなんだ。 初めて来たにしては、僕を先導する立場にい
て、難なくこの道を行く。 それに僕が持ってる剣についても知ってたみたいだし
。。。 ヴーム。 初めはタダの郵便屋だと思っていたけど...
「何、惚けてんです(?)」
いつの間にか戻ってきたジャンさんが、呆れ顔で僕に云う。 僕はコノ謎の人物
に疑問を抱きながら、ゆっくりと立ちあがった。
「シッカリして下さいよっ。 そんな事じゃ、剣があなたを認めても、仲間はあな
たを認めはしない。 私も然りです。」
「!! ジャッ、ジャンさん。 一体、あんたって人は・・・」
驚いている僕を見ながら、かすかな微笑を含んでジャンさんが話だす。
「フフ。 芳岡さん。 もう気づいてらっしゃるかもしれまへんな。 郵便屋とは
仮の姿。 まっ、少し堂がいってましたけどな。 わい、なりきるタイプやさかい。
んなことより。。。 コホン。 ホンマは、いえいえ、本当は、私もあなたと同じ選ば
れし者なのです。 証拠は、ホラッ。 ご覧のとおり。」
「...アザだっ。 左手首にアザがあるっ。」
アザといっても、そう目立つタイプのモノじゃなかった。気づかないワケだ。
「私の場合、炎の夢を見た翌朝、手首にコレができていました。 そして、その日。
私の大切なひとが消えたのです。 あなたの時と同じ。「鬼門の門」というメッセ
ージを残してね。」
薄々カンジてはいたが、真っ正面から言われると信じたくない気もする。あの、
お調子者の郵便屋が、妙な語調でシャベリまくるジャンさんが、選ばれし者。
そしてまた、偶然か。 境遇も同じなのだ。 大切なひと。 啓子。 「鬼門の
門」。。。 なんてこった...
「ジャンさん。 それじゃココは例の場所なんですか。」
「おそらく...」
「ジャンッ! なーにが、おそらくよっ。 しらじらしぃったら、ありゃしないっ。
ハッキリ云えばいいでしょっ。その子に。 ここは、「鬼門の門」への直行通路だ
ってサッ。 アタシ、しびれ切らしてんだからっ。」
なんだぁ(!?) 岩の出っぱり部分に人がいる。 髪が黄金色。剣と等しく光って
はいる。女か(?) ウーム。顔が見えない。 しかし声が。。。 これは、これは、
テノール並ではないだろうか。 いや、バスまでいくかも...
(たくっ。あいつはー。)とかジャンさんは小声で云って、その男女(オトコオンナ)に向
きなおった。 男女は地面に着地、スタッと決めた。
「ジャン。 早くしないとアンタの「いい人」も、アタシにも良いことなんにもナ
イのよ。 3人寄らなきゃ意味ないの。アンタだって、腹に据えてる筈よね。
そのボケ面の坊やで「賢者」候補7人目だったかしら。 適正みるんなら早くし
ましょう。」
そいつは。女みたいだった。 整った顔立ち。きゃしゃな体。 いわゆる「美」
という文字が頭につくタイプ。 しかし、コイツは女じゃなかった。 その、あま
りにも原始的な服の下には、ふくよかな胸なんて何処にも見あたらない。
また、コイツは選ばれし者の印を持っていた。 額に光る、ルビーである。
「パーム。口が悪いぞ。 確かに彼は賢者に選ばれた者だ。 適正なら私はマルだ。
あとは君と彼が納得すればいい。 時間がないのは確かだが、そう手荒くては彼が
困るだろう。」
全く人の変わったジャンさんがいた。 落ち着いて、何でもお見通しな感じの。
僕はあまり今度は驚かなかった。 慣れというのはコワイ。 にしても、コイツ−
パームとかいう奴は、言うことがケンカっぽい。
「僕は日本人だ。だから外人に比べると、年の割に若くみられるが、少なくとも僕
よりも君の方が”坊や”だろう。 容姿については言わないでもらいたいね。君だ
って、容姿は女。声は男の男女じゃないか。人の事言えないだろ。
それに適正ってなんだよ。 「賢者の剣」は既に僕を選んでいるぞ。」
「うるさいわねっ。 でも、アンタ何にも知らないんだ。 選ばれただけじゃダメ
なのよ。 「鬼門の門」には既に行ってるわ。 そこには、番人が常時待ち構えて
るの。 倒すには3人の互いの「信用」が必要なのよ。 だけどね、いつも「賢者」
は裏切るの。 あまりにも賢くて、次々と考えるからかしら。 自分だけを信じる
ようになって、アタシ達は崩れてしまう。 おかげで、大損ばかり。。。 アタシとジ
ャンは「信用」硬いわ。 長いつきあいだからね。 でも、アンタはどうかしら。
また、裏切られるのは後免よ。 ジャンは認めたみたいだけど、アタシはアタシの
やり方で、決めさせてもらうわ。 アンタも先へ進みたいなら、どうするか決める
ことね。」
そんな事を言いながら、パームはジリジリと動きだした。 僕は、ジャンさんは
ともかく、このアンバランスな奇人・パームを信じれるのか不安でいた。
*** つづく ***