AWC 『Get Sets』 〈2〉 Last Fighter


        
#132/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ     )  87/ 2/22  10:55  (106)
『Get Sets』 〈2〉 Last Fighter
★内容
.
 たいした広さの喫茶店ではない。
 客は時間が時間だけに、おれたちを入れても10人ばかしだ。
 大通りに面している壁はすべて透明強化プラスチックとなっており、外の景
色が一望できる。場所的にはいい所だ。時間によってはかなりの客が入る。
 おれがいつも、暇つぶしにくるいつもの店だ。
 おれは、コーヒーをすすりながら聞いた。
「−−−で、どんな依頼なんですかぁ?」
 聞いている相手は、もちろん先程おれにレイガンをつきつけて電撃ショック
まであたえてくれた、彼女である。
「簡単な事よ」 彼女は、レモンティーを飲みながら答えた。
「ある仕事を、あたしと一緒にやってほしいの」
 ある仕事だーぁ?
 どうせ、こんな事をしてまでするのだからろくな仕事じゃあるまい。
「ある仕事?」 おれは、覚悟を決めて問い返した。
「そう」彼女は真っすぐおれを見た。「N地区に入ってある人物を殺ることを
手伝ってほしいのよ」
「.....!」
 おれは飲んでいたコーヒーをふきだした。
 ろくな事ではないと思っていたが、まさかN地区とは....いくらなんで
も、ひどすぎる。
 −−−N地区−−−
 20世紀のアメリカ、ニューヨークのハレムに似ている場所である。
 この星の暗黒地帯。
 あらゆる犯罪の拠点ともいわれている。ギャング、マフィアは勿論。ゲリラ
やその他もろもろ国際警察のブラック・リスト者の見本市のような所だ。
 一般人が入っていったら、何が起こるか判らない。
 死体がみつかれば良いほうである。
「じょ、冗談じゃないぞ!!! おれはやだね!そんなとこ!!」
 当然おれはこういう反応を示した。
「そう」と、彼女はポケットから先程のスティクを取り出した。
「ま、まて! わ、わかったよ!!」
 電撃攻撃はもうされたくない。
「そう、ならばよろしい」
 彼女はにっこり笑ってステックをしまった。
 −−魔女め!
 おれは、心の底でこの世のありとあらゆる神々を呪った。
「それじゃ、引き受けてくれるのね?」
 にこにこ笑いながら、彼女が言った。
「あぁ、不本意ながらね....」
 おれは、ぶすっとして横を向いてぶっきらぼうに答えた。
と、激しい電撃がおれを襲った。
「うぎゃぎゃぎゃぎゃーーーーー!」
 店の客たちがほとんど、おれの方を向いた。しかし2,3秒で何事もなかっ
たように、首をもとにもどした。
 おれははいあがって、彼女の方を見た。
「不本意?」
 彼女はスティクを片手に目を細めて、おれを見ている。
「い、いえ。よ、喜んで.......」
「よろしい!」
 彼女は、再度ふたたびにっこりした。
 この世のありとあらゆる神に誓って言います!!
 『今日は、ぜったいに女難付きの厄日だ!!!』
「ところで」
 ひと呼吸おいて彼女が口を開いた。
「あなたの名前、まだ聞いてなかったわね?」
「おれだってまだ、君の名前聞いていないぜ?」
「あーら、あなた女性から先に自己紹介させるき?」
「わーったよ!」おれは大きく息を吸った。
「おれの名はリカード・マックストルド。通称マックス。年齢22才。先にも
 言ったとおり探偵だよ。出身はクラトル星。クラトル国立アラテス大学中退
 血液型O型。宗教は興味がない。身体健康精神万全!これでどうだ?」
 おれは一気に、ここまでしゃべった。
 はあはあ息を切らしながら彼女を見た。
「そう」彼女はゆったりとした口調で言った。
「あたしの名前はミラーン・カーセスよろしくね相棒さん!」
 おれは前にずるっこけた。
 まぁ半分、予想はしていたが...
「それだけか?」
「これだけよ」 ミラーンが、きょとんとした顔をした。
「も少しほかのことも言わんのか?」
「言う必要ないでしょ?」
 おれは彼女をまじまじと見つめた。そして、
「OK」ふーっと、溜め息をした。「君の性格がだいたい判ってきたよ」
「そう?ありがとっ!」
 コーヒーが電撃ショックやらなにやらですっかり無くなっていたのでおれは
ウェイトレスに追加をたのんだ。ウェイトレスが秋葉原の歩行者天国で、逆立
ちしながら歩いていくカバでもみるような目つきで、おれを見ながらオーダー
をとっていった。
−−−あのウェイトレスしばらく話題にこと欠かないだろうな
 おれはふところから、タバコを取り出して火をつけた。
「ところで−−−」
「なぁに?」
 ミラーンがゆったり答えた。
「具体てきな話に移ってもらいたいな。」
「そうね」ミラーンがセリフと同時に写真を突き出した。
 写真には、ミラーンと一人の成年が共に微笑みながら写っていた。バックは
よく判らないが、どこかの公園だろう。
 おれがしげしげと、その写真を見ているとミラーンが口を開いた。
「三ケ月前の話だけど....」ミラーンが話始める。「N地区の北で殺人事
 件が起こったわ。被害者は五人。全員何者かによって体中がズタズタに引き
 裂かれていた。なかには原形すらとどまっていなかったわ。」
「おぼえてる」 おれはテーブルに写真を置いた。「あの事件ならね。ひどい
 話だぜ。どれが五人の手だか脚だか解らんくらいだったらしいな。かなり報
 道されたよ。結局、N地区の者の犯行だと思われて、迷宮入りが確定したん
 じゃなかったっけ?」
「そう」ミラーンは横を向いた。
「N地区の者が犯人では迷宮入りは、99%確定だから。」
「なるほどよめたぜ、その被害者の内のひとりに君と一緒に写っている青年が
 いたのか」
 ミラーンは目をつぶって静かにうなづいた。
「で、この青年と君とはどんな関係なんだ?」
 おれは写真をさしながら聞いた。
 ミラーンは目を開いた。
「ラフル・カーセス、あたしの兄よ」
               〈つづく〉




前のメッセージ 次のメッセージ 
「CFM「空中分解」」一覧 尉崎 翻の作品
修正・削除する コメントを書く 


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE