AWC 『Get Sets』 〈1〉 Last Fighter


        
#131/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ     )  87/ 2/22  10:47  (106)
『Get Sets』 〈1〉 Last Fighter
★内容
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      『Get Sets』  by 八木 裕介
                     (Last Fighter)
.
 おれはただの探偵である。
 それ以上でも以下でもない。 −−−はずだった。
 探偵といってもやばい事には一切、手を出さない主義であった。
 それなのに......なのに..........
 なんで 今!
 レイガン片手に撃ち合いをしなくちゃならんのだ!? しかも相手は10人
やそこらではない、どんなに少なくみつもっても50人はいるだろう。
 ふと、左手首を見る。そこには金色のリングがはまっている。
「こいつさえ、はまってなきゃぁ........」
 ため息まじりで、つぶやいた。
「なんかいった!?」敵に向かってレーザーガンを乱射させているミラーンが
答えた。
「別に......」
「あなたも、レイガン撃ちなさいよ!死にたいの!?」
「へいへい、わーってますよ!」
 おれは、敵に向かってガンのトリガーを引いた。
 50人 VS 2人
 どうやって、勝てっちゅーんじゃ? たてになっているエア・カーも崩れは
じめている。 後ろは壁ということが幸いして、後ろから攻撃はされんが同時
後ろには撤退出来ない。
 ちくしょう! なんでこうなっちまったんだ!!!
 やっぱり今日は厄日だ!!!

 おれの名は、リカード・マックストルド。通称マックス。年齢22才。
 小さい探偵社の所員(下っぱ)である。
 探偵とはいっても。ほとんどの任務は、どこぞの夫婦の浮気捜査が半分をし
める。ひどい時は、何でも屋まがいのこともさせられる。
 腕っぷしは、いっちゃあなんだが強いほうだ。喧嘩じゃ負けたことはない。
自分より強そうなやつとは、喧嘩をしない主義だからだ。
 おっと!卑怯者とは思うなよ!正義のためならば、どんな強そうな相手でも
向かってくぜ!ただ、そのまま脱兎にいたるかもしれんがな。
 まあ、面倒なことには首をつっこまないほうがいいからな。
 そんな時に、この事件とぶつかったわけだ。
 今日は朝からさんざんだった。
 目覚まし時計が故障したのが原因だった。
 朝飯を食わずに家を出て、エア・カーに飛び乗るとエンストが起こった。直
そうと思って、エンジンのBOXを開けたさいに頭を角にぶつけた。どうして
もなおらないので。歩いて(走って)行くことにしたら。途中で財布を落とし
た。カードは別に持ってたからそれを使って、電車に乗ったらハイヒールをは
いた女性に、思いっきり足を踏まれた。そのあとも、エアカーに激突されそう
にもなるは、チカンに間違われそうになるは、こけるは、等々々!
 とにかくさんざんな朝であったのだ。
 仕事場につけば、突然所長に呼ばれてこないだの事件の報告書の書き方が悪
いだのなんだのと、説教を聞かされた。もちろん、説教の言葉など90%おれ
は聞きながしたが。そもそも、この探偵社は人手不足なのだ。新しい人材が入
ってこないのが悪いんだ! おれは、やり場の無い怒りをそこにぶつけた。
 この日はおれは特に仕事は無かった。
 コーヒーでも飲みに行こうと思って外に出た。
 外は快晴。ぽかぽか日和である。こんな日は仕事などうっちゃって(今もう
っちゃっているが)、かーいぃ子とデートでもしたい陽気だ。
「うーーーん」
 おれは、両腕をあげて大きなのびをした。
と、その時。
 コツンッ
 おれの背中に硬い物が突きつけられた。
「んっ?」おれは、のびをしながら振り向こうとすると。
「ふりむかないで」女の声だ。
「あ?」
「背中から風穴をあけられたくなかったら、言うことをきくことね」
「なっ!」
 おれは直感した。背中に突きつけられているのはレイガンか何かだ。
 しかし、なんで?おれは人に恨みをかうような人間じゃないぜ?
 なんとか反論をしようと思って口をひらこうとした。と、目の前に金色のリ
ングがつきだされた。
「それを左手首につけて」
「はっ?」
「はやく!」
 こんな状態じゃいいなりになるしかない。おれはリングを言われるままに左
手首につけた。ふと、周りを見渡す。人通りは−−−−−−ない。
「よーしいいわ」
 おれの背中から硬い物が離れた。
「ゆっくり振りかえって」
 なんなんだ?いったい?
 おれがいわれるままに振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。
 おれと、同じくらいの年頃だ。髪と瞳は黒。中国系か、日系の娘だろう。
「な、なんなんだ!?君は!!」
「あなた、この探偵社の所員?」
 だしぬけにその娘は、尋ねてきた。ふと、娘の右手を見るとそこにはレイガ
ンが握られていた。
「そ、そうだけど」
 そうおれが答えると、娘はにっこり笑って笑顔でしゃべった。
「依頼したい事があるの。一寸、そこら辺の喫茶店に行かない?」
「はぁ?」
 おれは、わけがわからずとっぴょうな声を出した。
「依頼なら、中に入って所長のとこへ.....」
「そうはいかないの」
「だけど規則だから」
「どうしても?」
「どうしても」
 規則である。これはどうしようもない。所長の了解無しで依頼を受けるのは
もちろん、話を聞くのもなるたけ所長の前にしないと後でなにを言われるかわ
かったもんじゃない。加えてここは探偵社の真前なのだから。
「仕方ないわね」
 と、そういうと娘はポケットから5cm位のリップステック状の金属片を取
り出した。中央に金色の線が入っている。
 それを左手でおれの目の前にもってきた。そして...
「これでも?」
そういうと、彼女は金属片の上部をまわした。
 すると、おれの左手首にはまっていたリングが鈍く光った。途端におれの体
じゅうに電撃にも似たショックが走った。
「ぎゃ、ぎゃ〜〜〜〜〜〜!!」
                     〈つづく〉




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