#103/1850　ＣＦＭ「空中分解」
★タイトル (DGJ     )  87/ 1/24  10:22  ( 85)
ＲＵＮ☆ＡＷＡＹ　〈５〉　　Ｌａｓｔ　Ｆｉｇｈｔｅｒ
★内容
．
「雌雄を決する？どうやって」
「こうやってだ！」
　シャルが両手を高々とあげた。
　するとそこに、剣が二本あらわれたのだ！ふわんっ！という音をたてて。
　わいて出たと言ったほうが、いいかもしれない。
　シャルは左手に出現した剣を篠原に前に投げ出した。
「さぁ！剣を取れ！正正堂堂と、闘おうではないか！」
「ちょちょちょっとまて！！！」
　篠原は、別に突然の決闘を驚いたのではない。
　すでにこの展開には慣てしまっていたからだ。
　ただ．．．．．．渡された剣が．．．．．．．．．．
「どうした！おじけずいたのか？」
　シャルが人を馬鹿にするような口調で言った。
「違う！」篠原は、投げられた剣を拾い持った。
「あんだよ、これは」
「見りゃ分かるだろ！剣だ！」
「違う！俺が言いたいのは」篠原は、剣をゆびさした。
「この不公平はなんだ！？」
「不公平だと？」
　シャルの手に持たれている剣は、長さは約１ｍ、柄にはモダンな彫刻がほど
こしてあり、刃はすばらしくきらめいている。いかにも切れそうという感じで
ある。
　一方、篠原に渡された剣といえば。長さ約１０ｃｍ、柄はプラスチック、刃
はほとんど光っておらず、いわゆるペーパーナイフである。
「そうだ！」
「うるさい！要は、両者が刃物を持っていれば良いのだ。少しの差は関係ない
　いくぞ！！！」
　シャルは思いっきり剣を振り上げた。
　女生徒たちがキャーキャー言って、シャルと篠原の周りからはなれた。
　篠原は、あわてて横へ逃げた。
　とたんにシャルの剣が振り下ろされる。篠原のいた机と椅子が真っぷたつに
分離した。床までひびが入った。
「おのれ〜！」
　シャルが再び剣を振り上げた。
　が、今度は上げすぎだった。勢がつきすぎた。上半身のバランスが後ろに崩
れ、後頭部から床にぶっ倒れた。
「く、か．．．か．．．ひてて」
　シャルは後頭部を押さえながらわめいた。
　篠原は、このときばかりぞ！と、思って。ドアをガラッと開けて廊下に逃だ
した。
　シャルが起き上がって前をみると、目には廊下に逃げていく篠原の姿が写し
だされた。
「おのれ〜！よくも〜〜〜！」転んだ怒りを、勝手に篠原に向けて追い始めた

　シャルの剣さばきは、決して良いとは言えなかった。むしろ悪かった。
　いや、悪すぎた。
　篠原が逃げ出してから小一時間たった。
　シャルは、飛びながら剣を振り廻しているが全然あたらない。
　篠原には傷一つついていないのだ。
　そのかわりと言ってはなんだが、シャルが一回振り廻すたんびに校舎が破壊
されていった。　壁がくずれ、机がこわれ、椅子が裂け、ドアが切られ、黒板
が割れ．．．．
　追っているはずのシャルの全身は、何故かぼろぼろになっていた。
　なんせ剣に振り廻されている。と、言った方がいい状況だった。
　壁にゴチゴチぶっかって、何度もあっちゃこっちゃに激突した。一度は、女
子更衣室に突っこんで、女子に悪い意味でもみくちゃにされたのだった。
「おっのれ〜！ちょこまか逃おって！！」
「やかましい！こっちだって命掛じゃい！」
「婚約者を取られて、そやつまでにも逃げられたとあっては！ブラーン家末代
　までの恥！まて〜〜〜！！！」

　と、そのとき
　一筋の光線が、シャルの剣に直撃した。すさまじい音と共に剣の破片が四方
に飛び散った。光線の源は窓の外である。シャルと篠原はきょとんとしたまま
互いに顔を見合わせていた。
「ま、まさか．．．．．」シャルがおそるおそる、窓に近寄った。
　篠原も続く。
　いた。
　窓から１０ｍばかしはなれた空中に。
　ライト・ブラウンの髪の毛。
　透とおるような瞳。
　美人と言うよりは、かわいい　と、表現するようなタイプである。
　３年前の間があいていたが、篠原には一発で判った。
−−−あの娘だ！！（あっ、やっぱりそうだと思いますよね？）
　服はスペオペに出てきそうなジャケットを着ていた。スペースジャケットだ
　片手にレーザーガンみたいな代物をもっている。おそらく、先程の光線の源
はそれであろう。
　シャルの顔が一気に青ざめた。
　　　すささささーーーー
　と、血の気が引く音が聞こえたようにも思えた。
「リ、リミ．．．．．」意識的でない声が、シャルの口からもれた。
「シャルゥ．．．．．」リミが、低いトーンの声が帰ってきた。目がギラッと
光っていたりする。
　　　　　　　　　　　〈つづく〉