AWC RUN☆AWAY 〈3〉  Last Fighter


        
#101/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ     )  87/ 1/24  10: 8  ( 77)
RUN☆AWAY 〈3〉  Last Fighter
★内容
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「ほ〜、そうかそうか、おまえはこの狸と決着をつけにきたのか」
 篠原が横からあざ笑った。
 シャルは一寸の間おいて指先を狸から篠原へ、向けた。そして改めて言った
「篠原!貴様と、決着をつけるためだ!!!」
 さすがに今度は決まらなかった。
 同じセリフを言うからだ。女子生徒たちが、クスクス笑っている。シャルは
耳を真っ赤にしてさらに怒鳴った。
「さ、さぁ決着をつけようではないか!」
「ちょ、一寸まて!」篠原は、シャルの正面に立った。「なんで俺がみずしら
 ずの御前なんかと、決着をつけねばならんのだ?」
「フッ」 またもや意味の無い『フッ』がでた。美形の決まり文句である。
「貴様が知らずども、私は貴様をよく知っておる。何故ならば....」
 シャルは目をつぶって、横を向いてかっこをつけた。そして篠原に再度左手
の人差し指を突きつけた。
「貴様は、私のフィアンセである『リミ・セリア』を、奪ったからだ ー!」
(とどーん!)
 教室に少しだけ沈黙が保たれた。
「はぁ?」 篠原は全く覚えのないことを言われて次の言葉が出なかった。
「フッ、とぼけても無駄だ! リミがはっきりと言ったんだ!
 『昔、貴様にウ゛ァージンをとられた』、とな」
と、そのシャルのセリフは最後まで言いきれなかった。
 どどどどどどっ! と、クラスじゅうの生徒達が篠原へ駆け寄ったのだ。
「しのはら〜〜〜!きさ〜ま〜!!!」
「な、なんてうらやましい いや!とんでもないことを〜!」
「抜け駆けしおってからに!!!」
「篠原君!責任とるんでしょうね!」
「けだもの〜!」etc.etc....
と、その人ごみをかきわけて工藤先生が物凄い形相で突進して篠原の襟首をつ
かんだ。
「篠原 淳!!!!!」
と、篠原のフルネームを怒鳴りこんだ。
 (そーかー、こいつの名前は〈淳〉と、言うのかー)
 全身がわなわなと震えていた。
「篠原 じゅ〜ん!!! な、なんてことを!!!!!」
 工藤先生は学校いや、町内全域に届く位の大声をあげた。
 両腕は、篠原の襟首を高々と持ち上げていた。
「ご、誤解じゃ〜〜!!!」
 篠原は今、首吊り状態に陥っていた。
 両脚を賢明にジタバタさせた。
 じたばた じたばた じたばた じたばた じたばた じたばた
 篠原の顔が段々と白くなってきたのに気がついて、工藤先生はやっと篠原を
床に下ろした。
「で、どう責任をとるつもりなの?きみは!!!」
 腕組をして仁王立ちの状態で工藤先生は言った。
「ろうも(どうも)、こうも....」
 首を撫でながら、篠原はしわがれた声で言った。
「俺は!第一!リミなんて女の子は知らん!!」
 よっしゃぁ!これで疑いは晴れるだろう と、篠原は一瞬思った。
 甘い甘い。
 そう聞くと工藤先生は、目を細めた。
「ほ〜、君はリミなんて名前の娘(こ)は 知らないと、いうのかね?」
「ええ〜、まったく」
「ほ〜ほ〜」
 工藤先生は笑った。
 篠原は、やった!やっとあらん疑いが晴れた。と、確信した。
 しかし、篠原は工藤先生の右手の動きを見落していたのだ。
    ぱっし〜〜〜〜ん!!!
 工藤先生の右手チョップが篠原の右頬にサク烈した。
「あ、あにすんだよ〜。いきなり〜〜 ひてて....」
 篠原は、殴られた頬をおさえて泣き声まじりで言った。
 工藤先生が間髪を入れずに怒鳴りかえした。
「すると君は!名前も知らない娘を襲ったのね!!!」
「あ、あのですね〜〜〜! もうちっと!生徒を信用して下さい!」
「な〜にが『信用して下さい』よ! あなたの日頃の態度を見て、信用しろっ
 て言うわけ!? 無理無理、遅刻するわ、無断欠席するわ、早退するわ、宿
 題はやってこないわ、居眠りするわ、授業妨害するわ、早弁するわ、補導さ
 れるわ、etc... これだけやってて、今迄こんなことが無かった方が
 不思議な位よ!」
「うぐぐ....」
 「お、おま〜ら....」 篠原の足の方から地獄からわきでて来たような
声が聞こえた。見れば、シャルである。体じゅうに足跡がペタペタくっついて
いた。不幸にも押し寄せた生徒たちの下敷と、なったらしい。
 シャルは、ゆっくりと立ち上がった。
 いや、
 ゆっくりとでなくては、体が痛くて立ち上がれなかったのだ。
                〈つづく〉




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