AWC 狂気の勇者達。the diamond dust (3)  早川龍胤



#261/1160 ●連載
★タイトル (yiu     )  04/04/30  22:49  ( 28)
狂気の勇者達。the diamond dust (3)  早川龍胤
★内容                                         04/05/13 21:14 修正 第2版
狂気の勇者達。the diamond dust(3)「粉雪」
 自らの精鋭部隊を失うのに嫌気がさした神々は、自分等の身分を棚に上げて兵糧や領
土開発に手を加えるという約束をし各武家に自分を祭り上げさせた。
 つまり、武家は神の、命を受けて闘うという形になったのである。これで他武家の領
地に攻め入る名目は整った。戦乱は激化の一途をたどっていた。
        *                      *
この日もバザバ家は浪人が集まっていた。仕官の為である。バザバは未開のウッドミド
ガルドを開拓しウッドミドガルドの資源を独占していた、金もある。武具もある。木々
もある。地理的には行軍しにくいが資源が有り余るほどある為に、中々強かった。槍や
剣を磨いたり、これからどのように出世していくかと話していた。その中にはカラスが
いた。バザバ家の庭に押し込められた浪人はバザバ家当主、クヅギ・バザバを待ち望ん
でいた。クヅギは父親の没後、身内争そいを自分を慕う七人の家臣と力を合わせ二ヶ月
で終わらせた。その後、顔に朱子色で虎の紋と呼ばれる彩色を施し、決意を固めた。そ
の威厳ある面構えは『ウッドミドガルドの猛者』と異名をとる位である。
 カラスには悔いはなかった。たとえ、ハイマイゼルと別れ様とも。故郷に帰るつもり
はなかった。家にある大切な物は全て持ってきた。武家に仕官して勲功を上げると所帯
が持てる。そういうのが仕官者に対する御礼の表し方だからだ。アラガスで約半年貯め
たお金で買った槍を磨きながらハイマイゼルを思っていた.
---------------最後は喧嘩離れになっちゃったな・・・・・・。時代が時代だ。あいつ
も、旗揚げをすればいい。それなのに・・・・・。
すると、クヅギが現れた。浪人達の話し声はピッタリと止んだ。
「おう。者供。よく我が家に仕えてくれた。感謝する。」
と云うな否や、また奥に消えていった。浪人達は布で覆われた場所に案内されてそこで
木で出来た棒を振り回し稽古が始った。
「やっ。っや。やっ。」
甲高い声が響いた。その光景をクヅギは天守閣から見ていた。
「やぁ。時代、ここにあり。始るはバザバにあり。終わるはバザバにあり。」
とクヅギは叫んだ。




#277/1160 ●連載    *** コメント #261 ***
★タイトル (yiu     )  04/05/13  22:36  ( 44)
狂気の勇者達。the diamond dust (4)  早川龍胤
★内容                                         04/05/16 21:36 修正 第2版
リクト・ベルガニアは今日も絶壁の上に立つ居城の裏のベルガニアの森で狩りをしてい
た。この時、リクトは十四だった。馬の腹を蹴り、獲物を追う。そして城下町の名工に
作らせた弓で射抜く。これがリクトにとって快感でしかなかった。
 評定の時間になった。
 今回の評定は異例で分家のミク・ナウ両家が参加した。と云うのもウッドミドガルド
の猛者、クヅギがベルガニア平原に攻めはいるという噂が世間に流れていたからだ。
「ナウ家、情報は手に入ったか?」
リクトが云った。
「はっ。此方の密書でございます。」
ナウ家は世間には知られていない。何故なら、ベルガニア家の隠密を司っていたから
だ。さながら、『影のベルガニア』といったところだ。後に、このナウ家からテンガマ
と名の忠臣が生まれる。
「ウッドミドガルドの猛者、現在、着々と軍備を整えているように候。又、緑が豊富な
土地故に兵糧は有り余る勢いで候。大工を集めウッドミドガルド城築城に着手した様子
で候。」
リクトは軽く読み上げた。立ちあがると、
「皆者、ウッドミドガルドの猛者どうやって倒してやろうか。」
家臣がざわついた。
「我々はどう掻き集めても少数。奇襲はどうでしょう。」
「いや、駄目だ。我々は降りる。」
云うや否や、一人の家臣から反論がとんだ。
「何を仰いますか!殿は御家のことを考えていますのか!」
するとリクトは其の家臣に近づき家臣の頬に力いっぱいの拳を叩きこんだ。其の家臣は
いきなりの出来事で物を云えなくなり泡を食って倒れた。リクトは其の家臣の顔を踏み
つけ、
「貴様に俺は発言権を与えていない。貴様はいつも俺の策を馬鹿にしたよな。」
と云って家臣の顔を二度三度蹴った。十四の少年がすることとは思えない。戦慄した家
臣等は俯いたままだった。
        *                      *
「御館様が今度手に入てようとしているベルガニア平原のベルガニア宗家の主君は評定
で家臣を殴り倒したらしい。」
同僚とカラスは話していた。今度攻める土地のこと。つまり其れはカラスにとって初陣
になるのであった。軍備と整えるために特別に設けた倉で門番をしていた。領民は米を
献上した。又、武器は全国の刀鍛冶をよびよせて城で毎日作らせた。領民は門番のカラ
スにも頭を下げて倉に入る。それがカラスにとっては嬉しくてたまらなかった。この領
民の行為もクヅギが民政に力を注いでいるためだとカラスは悟った。
 そんな事を思っていると、地響きがした。『ドスン、ドスン』と響く。又、怪鳥に似
た叫びも聞える。果たしてその騒ぎの張本人は、ヌーグヴェルだった。
 ヌーグヴェルは普段人々が移動手段として使用している馬を一踏みで殺してしまう程
の巨大な体の持ち主。動物だ。鼻が長く垂れていて、その隣からは牙が生えている。体
毛はなく皮を露にして体色はペパーミントグリーン。
 上の方で声がした。
「これが天下の動物のヌーグヴェルとやらか。」
クヅギだった。




#279/1160 ●連載    *** コメント #277 ***
★タイトル (yiu     )  04/05/16  22:54  ( 25)
狂気の勇者達。the diamond dust (5)  早川龍胤
★内容                                         04/09/19 09:26 修正 第2版
ハルカは山奥の小さな庵への移住の意思を固めた。それは、住んでいたアラガスで商人
を殺害したからである。ハルカには狂気に似た人を殺す癖がある。
 そして五日経った。
「ハルカは居るか.」
「おう。入れよ。」
入ってきた男は大柄だった。着れる服がないのか上半身を露に、下半身は様々な布を縫
い付けた物を履いていた。そして目につくのは上半身全てにハルカの刺青と同じ刺青が
彫ってあった。男は紙で包んである荷物を机で書物を読み漁っているハルカの前に置く
と其れを開けた。
 中には書物や食料や茶器があった。
「いつも悪いな。夜盗なんかさせて。」
ハルカが呟いた。無論、書物を読みながらだが。
「気にするなよ。他にすることもないし、実際楽しいものだぞ。」
「そうか。」
ハルカは作り笑いをした。
「ところでハルカ、何を読んでいるんだ?」
「神学や兵法とか。」
「何故だ?」
「何時か、神に喧嘩を売って神を殺して俺が神になるんだ。」
「面白いな。其れ。」
男は正座しハルカを見た。そして、
「このゴリゴラス、ハルカに一生ついていこう。」
その言葉を聞いたハルカは微笑した。
「そうか。」といって白い歯を見せた。





#339/1160 ●連載    *** コメント #279 ***
★タイトル (yiu     )  04/09/19  10:29  ( 28)
狂気の勇者達。the diamond dust (6)  早川篠村
★内容
サルナス。ハイマイゼル達が住む大陸の中で通常、天に棲んでいる神々が姿を現す場
所。
聖地である。
 そこで、事件は起こった。
 ハルカが移住した十ヶ月後のこと。神々たちの行動を決める評定にて人間に対し友好
的な政策を推進した神々のリーダー、正一位大神軍官ノーデンスが崩御した。この機に
乗じてノーデンスの支配の下発言力が弱かった、ナイアーラトテップは今は亡きアザ
トースを復活させるために行動を開始した。対して、ノーデンスの意思を継ぐヴォルヴ
ァドス等、対人間友好派はノーデンス崩御に殺害説を提唱。犯人断定のため捜査を始め
た。
 という一連の事件を耳にしたハルカは好機と見て神位を得るために戦闘集団「噸兵
隊」を結成した。本陣は庵のあるカラドゴラド山脈に決定。巷で暴れているゴロツキを
雇い、集まったのは十八人。
十八人集まったところでハルカは声を挙げた。
「我々噸兵隊は近い将来サルナスに攻め入る。そのためには武器や金、食料が必要であ
る。それらを得るには商いが盛んなアラガスを手に入れるのは必須である。」
アラガスで夜盗に入っていたゴリゴラスは助言をした。
「アラガスは俺が夜盗として入っているためか警備を強化している。自警団の装備も豪
華なものになってきているぞ。」
ハルカは見向きもせずに続けた。
「大気が乾き、東南の強風の日の夜、火を放ち夜襲をかける。ゴリゴラスは十一人引き
連れてアラガスに潜伏してくれ。」
「わかった。」
とゴリゴラスは言った。
 一方、カラスが籍を置くクヅギ家は奉じていたノーデンスが崩御した為に急遽、ベル
ガニア総攻撃を中止。クヅギは民政に力を注いだ
 ベルガニア側は喜んだ。これを機会に侵攻を目論見始めていた。
 アラガスのハイマイゼルはただならぬ胸騒ぎを感じていた.




「●連載」一覧 早川慧16才の作品
             


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE