#6046/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 10/04/05 21:08 ( 23)
本の感想>『閉じた本』 永山
★内容 10/04/12 20:24 修正 第2版
・『閉じた本』(ギルバート・アデア/青木純子訳 創元推理文庫)
13/4441
著名作家のポールは、海外での交通事故で両眼を失った。それをきっかけに
隠遁生活状態に入っていた彼は、自伝を執筆するために口述筆記その他をこな
せる人物を募集し、ジョン・ライダーなる若者を雇い入れる。
執筆はまずまずの滑り出しをみせ、ジョンも筆記だけにとどまらず、取材や
手伝いなども無難にこなしてくれた。だが、ある日ひょんなことから、ポール
はライダーの“誠実さ”に疑いを持つ。それは徐々に大きくなっていき……。
会話体と独白のみで構成されたサスペンスミステリ。
本格として評価の高い『ロジャー・マーガトロイドのしわざ』と同じ作者の
手による作品だから、もっと本格本格したミステリを期待していたのですが、
そういう意味では期待外れに終わったかな。サスペンスというかスリラー的な
色合いが濃く、ミステリの仕掛けはあまり感じられず。
その代わりと言っていいのかどうか、リーダビリティは高かった。会話が大
半を占める構成も大きな理由でしょうが、とにかくすらすら読めました。この
先どうなる?という興味とも少し違う、でも続きが気になる。そんな感じ。
終盤の展開は凡庸と言えば凡庸で、もう一回ぐらいひっくり返してくるのか
と身構えていたおかげで、肩透かしを食らった気分になりました。あとに続い
た締め括りはなかなか。ただ、なるほど!と膝を打つ快感がもっとほしかった
です。
ではでは。
#6065/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ *** コメント #6046 ***
★タイトル (AZA ) 10/04/15 18:26 ( 31)
本の感想>『ロジャー・マーガトロイドのしわざ』 永山
★内容
先日の感想で、この書籍の感想を過去にUPしたと書きましたが、UPして
いなかったと気付きました(汗)。元の書き込みは訂正済みですが、ここに改
めて。
本の感想>『ロジャー・マーガトロイドのしわざ』
(ギルバート・アデア/松本依子 訳 ハヤカワ・ミステリ)15/4542
一九三五年、英国のダートムアは雪深いクリスマスを迎えていた。そこに建
つロジャー・フォークス大佐の家で、事件が起こる。多くの招待客で賑わう中、
招かれざる客のゴシップ記者が、屋根裏部屋で拳銃に撃たれて死んだのだ。現
場は密室状況で、凶器は行方不明。しかも被害者は、集まった人々の醜聞を掴
んでいると臭わせ、全員から恨みを買っていた。
折からの大雪で、警察の到着が遅れる。そこで出馬を請われたのが、近所に
住む元警部のトラブショウ。彼は関係者からの事情聴取に着手するが、霧は晴
れず、さらに……。
アガサ・クリスティ著名作品へのオマージュに満ちた本格ミステリ。
この書籍の裏表紙にあった粗筋と、実際の展開が前後逆だったため、何だか
同じことを繰り返し読まされている気分になり、ちょっとかったるかったので
すが、事情聴取が一段落してからは、俄然、興味を持って読めました。
密室トリックは脱力系なんですが、犯人の詰め方がなかなか面白い。動機を
中心に、ここまで詰めるとは。
大きな不満点はふたつほど。まず、探偵役が最初のとっかかりとする手掛か
りは、少なくとも私にとって厳しいなあ。詳しく書くとまずいので、触れるだ
けにしますが。もう一点は、仕掛けがあからさまだったこと。上記梗概で触れ
たクリスティ作品について、事前情報を得ていたため、もしかしたらあのパタ
ーンかなと意識しながら読んでいたら、それで当たりでした。何の予備知識も
なしに読むべき作品ですね(本作のタイトルに“それ”は暗示されているので、
分かる人には分かるそうです)。尤も、予備知識がなくても、“これ”は巧み
とまでは言えない気がします。
ではでは。