AWC 「続・ティアフルガール(迷子少女)」No2 大二郎


        
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★タイトル (AWJ     )  97/ 1/14  14:30  (116)
「続・ティアフルガール(迷子少女)」No2 大二郎
★内容


 カイは、ピタリと足を止めると、そのままポカン、としてしまった。
 確かにそこは森の出口・・・・というか、もう森の中ではなかったし、窓から灯のもれ
ている建物も、ちゃんとあった。
 ・・・・一軒だけ。それもとても大きなお屋敷が。
 ただ、ボロボロ・・・・とまではいかないにしても、なんだか妙に古めかしい。石造り
の壁にはビッシリと、コケやらツタやらがくっついているのが、月明かりに照らし出
されていて、なんとも“すごい”雰囲気を演出していた。
 カイくんの、最も苦手とする雰囲気を・・・・。
「ど、どうしようかなぁ・・・・」
 ゴクリとかたずを飲んで、ほかに行き場所はないか、とキョロキョロする。
 しかし、辺りにはほかに灯はいっさい見えなかった。建物の向こう側は大きな湖に
なっているらしくて、その岸辺をグルリと、淡く光る森が取り囲んでいるのが、深夜
だけによく判った。
 カイくん、ちょっとと言わずためらっていた・・・・けど、やがて意を決したか、建物
の玄関へと足を向けた。
 なにしろ、ここはどうやら森の中心らしいのだから、誰か住んでいるのだとしたら、
助けてもらわない手はないだろう。
「話のわかる相手だといいんだけど・・・・」
 とその時、サーッと雲が晴れて、完全に顔を出した月が、その建物の全貌を照らし
出す。
 お屋敷かと思っていたけれど・・・・それは、城だったのである。
 いよいよ、本格的に怖じ気づくカイくん。
 そりゃまー、無理もない。なんだか、吸血鬼でも出てきそうな雰囲気だけど、これ
はそのくらいのものが出てきたって、ぜんぜんおかしくない世界のおはなしなんだか
ら(吸血鬼が必ずしも、恐怖の対象だとは限らないのだけど)。
 ともかく、二人ともおなかがすいてることだし、もしかしたら道を教えてもらえる
かも知れない・・・・なんて、カイは自分を慰めながら、玄関・・・・というか、夜なのにな
ぜか開いている城門をくぐった。
すると・・・・
 ギギギーッ・・・・
 ときしんだ音をたてながら、城門がひとりでに閉まりだした!
「わーっ! ちょっとぉ!」
 カイくん、慌てて戻ろうとしたけれど時すでにおそし。
 ガコーン! と城門は閉ざされ、カイとシュンリーの二人は、その内側に閉じ込め
られちゃった・・・・。
「・・・・どなたですか? こんな夜更けに・・・・」
 カイがぼーぜんと立ち尽くしているところへ、背後から声がかかる。
 振り向けば、赤いドレスに身を包んだ、30がらみくらいの美しい女性が、ローソ
クの灯のともった燭台を手にして立っている。
 暗い城内、下からのローソクの灯だけで浮かび上がるその女性の顔は、美しいだけ
にかえって不気味だった(本人からクレームが来るかも知れない・・・・)。
「あっ、す、すみませんっ! 勝手に入っちゃって・・・・」
 と、生きた心地のしないみたいな様子で、叫ぶように言うカイくん。
「お静かに・・・・目を覚ましてしまいますわ・・・・」
 と、その女性は上を仰いで静かに言う。
「は、はい・・・・」
「それで・・・・なんのご用ですか・・・・?」
「た、旅の者なんですけど・・・・森の中で迷っちゃって・・・・」
 しどろもどろなカイくんが事情を一から説明すると、
「まあ、それは災難でしたね・・・・いえ、なにぶんこの建物もご覧のように老朽化が進
んでますから・・・・この自動ドアも、最近は故障が多くって・・・・」
 ものものしい城門を見上げながら、その女性は恥ずかしそうに言った。
 ずっこけたくなるのをなんとか抑えたカイくんが、
「あの・・・・いったいなんの建物なんですか、ここ・・・・」
 ときくと、その女性は、
「孤児院ですけど・・・・」
 とあっさり言ったので、カイは今度こそ大きく息をついた。
  ・・・・ビクビクして損した・・・・と、カイくんが思ったかどうかは定かでない。
「まあ、とにかく今夜はゆっくりお休みになられたほうがいいでしょう。わたくしも
もう、眠くって眠くって・・・・」
 と、どうやら保母さんらしいその女性は、口に手をあてながら大きなあくびをした
のだった・・・・。


「それじゃ、戦争が?」
「ええ・・・・この森の南の国と、北の連邦とで・・・・」
「あーっ! それ、シュンリーのなんですね!」
「いいじゃないかー、ケチー」
「いったいなんでまた・・・・こら、ナイフを振り回しちゃあぶないだろ」
「詳しくは知らないのですけど、なんでも最近、両方の国で、麻薬が出回っていると
か・・・・」
「もう怒ったんですねっ! えいっ!」
「あーっ! ぼくのチーズ・・・・どろぼー!」
「こらシュンリー、大人げないぞ・・・・麻薬が?」
「ええ・・・・それでお互い、相手側の責任を追求してて」
「うわーん、おねえちゃんのいじわるー!」
「なに泣いてるですか、男なんですねっ!」
「ほらほらぼくのをあげるから・・・・なるほど。大丈夫なんですか? ここは・・・・」
「ええまあ・・・・もともとわたくし達も、ここへ避難してきたようなものですし・・・・」
「なるほど・・・・あっ、こらっ、それはダメ!」
「うわーん!」
「大人げないんですね」
 翌朝、広間のテーブルを囲んでの朝食は、見ての通り賑やかだった。
 誰がどのセリフを言ったのかはさて置いて、あの赤いドレスの女性はここの責任者
兼、保母長さんで、名前をフレイアさんと言った。
 その若さで、とカイくん驚いたけど、実はもう40半ばを超えていると聞いて、も
っと驚いた。
「本当に、たまにお客さんが来ると、みんな喜びますわ」
 食事も終わりに近付いて、フレイアさん、言った。
「いやー、助けてもらってそんなこと言われるの、なんだか恐いなー、あはは」
 そう、冗談めかしてカイが言うと、
「うふふ・・・・とって食べたりしませんから、どうぞご安心を」
 とフレイアさんもしっかりと受けるあたり、精神的にはやっぱり若いみたい。
「そころで・・・・すぐにお発ちになられますか?」
「え? ああ、大丈夫ですよ。これ以上ご迷惑はおかけしませんから」
「あっ、いえっ、そうじゃなくて・・・・急ぎの旅でいらっしゃいますかと・・・・」
 慌てて付け加えるフレイアさん。顔が赤い。
「あっ、いえ別にそんなことは・・・・どうもすみません」
 何が『すみません』なのか良くわからないけど、カイくんも慌てて言った。
「“せいしゅん”なんですねー・・・・」
 しみじみと、紅茶をすするシュンリー。
「と、ともかく・・・・もし急がれないようでしたら、ひとつお頼みしたいことがあるん
ですけど・・・・」
「あ、はい、いいですよ。もちろん・・・・ね? シュンリー」
「はーい、なんですね」
 なんだかどうでも良さそうにこたえるシュンリーだった。
 と、食べ終わった子供達が、ガタガタと席を絶って、広間を出ていく。
「あ、シュンリーもいきます。おはなし、おにいさんがよろしくなんですね」
 そう言うとシュンリーも、さっさと席を立って、いってしまった。
 あとに残されたカイくん、ポカンとしちゃって、
「ど、どうしたのかなぁ・・・・なんだか様子がおかしかったけど」
「うふふ、さあ?」
 フレイアさん、そう言って、いたずらっぽく笑ってみせるだけだった・・・・。





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