AWC レディア・サーガ =第一章(3)=   悠歩


        
#4634/7701 連載
★タイトル (RAD     )  96/ 2/26   0:59  ( 81)
レディア・サーガ =第一章(3)=   悠歩
★内容

「とうとう捕まえたぞ! このクソあまめ!!」
 男は地に伏した娘を踏みつけ、誇らしげに言った。
「手こずらせやがって。だがそれも今日で終わりだ。いままで俺様の店から、散々売
り物をかっぱらってくれた礼、たっぷりとさせてもらうぜ」
 どうやら男は商人の様だったが、その粗野な話し振り、長髪に伸ばし放題の髭といっ
た風貌、顔や手足に見られる無数の傷跡。それらを見る限り、真っ当な商人とは思え
ない。その見て呉からは盗賊と言った方が、皆が納得しただろう。
「おい、このアマをふん縛れ!」
 男が命令すると、後方に控えていた巨漢の男がその手に持っていた縄で、娘を後ろ
手にして縛り付けようとした。
「くそっ、汚い手で触るんじゃねぇ! こら、デブ、離しやがれ!!」
 娘は男に負けない口汚さで叫びつつ抵抗した。
 しかし巨漢の男は手足をばたつかせた娘の抵抗など、全く気にせず、瞬く間に縛り
上げてしまった。
「よーし、上出来だ」
 縛り上げられた娘を見下ろし、長髪の男は満足げに言った。
「畜生! あたいをどうする気だ!」
 自由を奪われてもなお、娘は挑戦的な目で男を睨み付ける。
「さあて………どうしたものかなあ」
 周りを取り囲む野次馬達に向けて、少々芝居がかった口調でそう言うと、長髪の男
は値踏みをするかの様に、娘の身体を見つめた。
 均整の取れた身体は小麦色に焼け、それが娘の若さを強調している様だった。短い
が、見事なまでに輝く黄金の髪が、肌の色によって一層引き立つ。その身体を袖の無
い一枚布の服を腰の所で、革のベルトで止め、隠している。しかしそこから延びた、
すらりとした手足、そして袖口から覗く豊かな膨らみは娘自身が意識していなくとも、
その色気を主張していた。
「こうして見ると………ふん、なかなかいい女じゃないか。えっ、シンシアよ」
 男は屈み込み、シンシアの顎を指でしゃくり上げた。
「どうだ、俺の女にならねぇか? そうすれば、これまでの事は水に流してやるぜ。
それにこれからは、いい思いのし放題だぜ」
 男の顔に唾が飛んだ。
「ふん、そう言う科白は、鏡を見てから言いやがれ」
 一瞬、シンシアの口元が笑みを作り、次の瞬間には唾が吐き出された。
 唾は男のこめかみ辺りに当たった。
 その唾を拭うより先に、男はシンシアの顔を力一杯に叩き倒した。更に男は、右足
で倒れ込んだシンシアの顔を踏みつける。
「上等だ、クソアマめ」
 男が目で合図を送ると、無口な巨漢の相棒が一振りの剣を差し出した。
「知ってるよなあ、シンシアよ? このザッカの街の決まりを。確か、捕らえられた
盗人の裁きは、捕らえた者がつけられるんだっけなあ」
 そう言って、男は集まった野次馬達を見回した。野次馬達から、何も反論が無い事
を確認し、満足そうに笑った。
「てめぇも盗人なんぞをやっている以上、覚悟は充分出来てるんだろうな………」
 悦に入った表情で、男は手にした剣に舌を這わした。
「もう一度訊いてやる、これが最後だ。俺の女にならないか?」
「誰が! 人間の女が、貴様の相手なんかすると思ってるのか?」
 シンシアの顔を踏みつける、男の足に力が入った。
「決まったよ、てめぇの裁きが。斬首だ」
 男が足を退かすと、すかさず相棒がシンシアの身体を押さえ付けた。
「アニ……キ、これ」
 巨漢がシンシアの首の辺りを見ながら、言った。
「ん、なんだ、こりゃあ」
「こら、気安く触るな」
「うるせぇんだよ」
 男はシンシアの胸をまさぐる様にして、それを引き出した。
「こいつは………すげぇ」
 それは銀細工のペンダントだった。
 円形の縁の中にその弧と接する様に、正方形を二つ、均等な間隔でずらして作った
星形。円と星形との間は、蔦と葉が細かく精巧に細工されている。星形の中央には、
真紅の宝石がはめ込まれ、その周りにを白く輝く四つの宝石が、十字を描く様に囲ん
でいた。さらに星形の八つの頂点には、それぞれ異なった八色の宝石。そして、中央
の以外の十二の宝石の周りには、星の中央から宝石を抱え上げる様にして、神々らし
姿が刻まれていた。
「おい、シンシア。こいつを何処で盗んだ? これだけの細工物、そんじょそこらの
金持ち程度が持てるモンじゃねぇ………そうだな、王族、それも昔のレディアぐらい
の大国でないと………が、まさかてめぇ如きが忍び込める訳もねぇ。いや、第一レディ
アの王族連中が滅んだのは、てめぇが産まれたがどうかの頃だ………」
「ごたくを並べてねぇで、返せ! これはもともとあたいのだ」
 シンシアが首を振ると、ペンダントは鎖に引かれて男の手から跳ね飛んだ。
「ケッ、まあいい。そいつはてめぇの首をはねてから頂いてやる」
 男は剣をゆっくりと頭上に上げた。
「安心しな、これでも俺様は嘗て、レディアの兵士だったんだ。小娘一人の首なんぞ、
一振りではねてやる」
「フン、お前見たいなヤツが? 嘘をつくんじゃないよ。レディア兵は鍛え抜かれた
兵士だったそうじゃないか………顔中に傷を付けられる程度の腕のヤツが、ね」
「減らず口もそこまでだ」
 渾身の力を込めた剣が、シンシアの首に振り下ろされた。

                    第一章(4)へ続く





前のメッセージ 次のメッセージ 
「連載」一覧 悠歩の作品 悠歩のホームページ
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE