AWC 感想を書こう(16)  みのうら


        
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★タイトル (ARJ     )  96/ 1/23  20:31  (197)
感想を書こう(16)  みのうら
★内容
 以下は$フィン(XVB03501)氏からいただいた感想です。
 順番としては松虫さん、YOUNGさんお二人の感想、私のレスポンス同封で読
んでいただいた後にいただいたものです。
 途中で改行等を加えておりますのでちとずれちゃったりするところもあるのです
が、そこはまあ、それと言うことで。
 公開に同意していただいた$フィンさんに、感謝いたします。
 読んでる方には何度も同じ話を読むようになってしまって申し訳ない(笑)。
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 山が、身震いした。
 男はしこたま飲んでいたので、その震えに気付かなかった。
 大地が震える。細かく、小刻みに、やがて大きく揺れる。
 大地の振動も、胎動も、男の濁った身体は感じない。べたりと座り込んだのは揺
れのためか酔いか。
 街がざわめき始める。地震?いや、噴火か。
 山の端が崩れる。裾に広がる黒い森から、鳥が飛び立つ。
 森のあちこちに火が見えた。獣の鳴き声が大きくなる。
 なぜ?
 噴火ではない。
 頂上は不気味なまでに静まり返っている。
 黒煙が上がり、風にあおられ火勢が増した。
 街が目覚め始める。
 物の壊れる音。小さな悲鳴。子供の泣き声。
 見たのは、男だけだった。
 身震いする神の峰、ティシュトリヤの山の腹から巨人が、ひとのかたちをしたも
のが起きあがるのを。
 鋭く抉られた月は中天。
 街を揺り起こす、最初のドラムが打ち鳴らされたのはその時だった。

   1 段落が多い。小説道場の中島梓がいうには、「初心者は四百字一枚につき、
    四つ段落を規準にしておけばまちがいない」そうです(わたしも気もつけ
    たいと思う)。
   2 プロローグとしては読者(わし)から見て、男がどこにたっているのか迷
    うところ。男が、山の中で酔っているかと思えば、街の中で酔っているの
    か、最後まで瞹昧です。
  3 「大地の振動も、胎動も」、同じ用語の重複は不用。 
  4 三行目から四行目「大地が震える〜〜男の濁った身体は感じない」まで、
    一段落でまとめるべき。
  5 六行目 「地震?いや、噴火か」疑問符、感嘆符の後一字開ける。以下省略。

*1*

「かっぱらいだぁ!捕まえてくれぇ!」
 市がざわめいた。
 スリやかっぱらいなど日常茶飯事の場所で、そのかっぱらいは特別だった。
 組んだばかりの柱の上。帆布をかけた屋根の下。
 人と人のざわめく隙間を、それは影となって駆け抜けた。
 悲鳴や怒号が影に合わせて移動する。
 日は中天。
 影は色濃く大地に落ち、影は一瞬たりとも止まらない。
 果物を積んだ箱を蹴り上げ、馬車の荷台を飛び越え、罵声を上げる男の股の間を
すり抜ける。
 彩り豊かな港町の、市には珍しい白い二人連れがいた。影は突進する。
 一人は女。にしては背が高い。濃い栗色の髪を銀の輪で束ねている。衣装の陰影
からやはり女と知れる。
 もう一人は男。にしては背が低い。いや、子供だ。
 よく似た仕立ての白い服を着て、あたりの騒ぎも耳に入らないのか何事かを話し
つつ歩いている。
「かっぱらいだ!『飛び魚』の奴だ、捕まえろ!」
 男が一人、貝の詰まった箱を振り降ろした。
 影は右手で受ける。
 箱は砕け、茹でたばかりの貝が湯気を立てて飛び散った。
 わっとばかりに人溜まりが切れ、空間が生まれる。影が影でなくなる。
 影は跳んだ。影であるために。
 手近にいた、子供の頭を踏み台にして。

 1 プロローグ十八行目でも中天を使用している。作者の癖が気になるところ。
 2 十二行目。句点からいきなり、「にしては」は少しおかしいのでは?
 3 十三行目。2と同じ。
 4 二十一行目、二十二行目、「影が影でなくなる。影は跳んだ。影であるために」
   影の状態がどうなっているのかわからない。

「そこの、危ないぞ!」
 怒号が響くより早く、ルースは頭を蹴られた。
 正確に言うとかっぱらいは、ルースの頭で弾みをつけて、より遠くへ跳んだのだ。
 頭布の端をひるがえし、たちまち人混みに消える人影を、あっけにとられてマイ
ラは見送った。
 そのそでにまろび寄って屋台のおやじが叫ぶ。
「神官さま!神官さま、捕まえて下さい!あいつ、あいつがお尋ね者の、『飛び魚』
ですって!」
 次々に被害者が取りすがる。白い神官服は目立つのだ。
 たちまち取り囲まれた。
「売り上げをやられました!」
「焼けたばかりのカバブを三串!」
「上等の織物を一巻き!」
「神官さま!司法神官さま」
「待って、待って、待って下さい!」
 両手を広げて辺りを制す。右手に鉄杖の、輪がざらりと鳴る。
 女ながらに長身の、堂々とした趣のある若い司法神官マイラ・ジェネリーズは声
を張り上げた。
 澄んだ水色の目に、よく響く深い声が凛々しい。
「私は確かに司法神官の、マイラ・ジェネリーズです。が、ご当地にはこのたびの
災害で派遣されたばかりです。
 事情がわかりませんので、どなたか代表の方ご説明を!」
 生肉の串を握りしめた肉屋が答えた。
「わしはこの市場の顔役じゃが、あの『飛び魚』はお尋ね者のかっぱらいだ!街の
司法神官さまは山崩れの後始末で、取り締まってくれんのだ。大公さまも」
「ああやって飛び魚みたいに逃げるからな」
「これが似顔絵だ!大公さまが賞金までかけてくれたが、若いもんも生活で手一杯
だ。誰も奴を捕まえられん」
 差し出された手配書を見てマイラは眉をひそめる。
「まだ子供ですね……」
「奴は強盗もやる。山崩れからこっち、火事や津波で親なし子になった子供らが流
れてくるのをまとめてるんだよ」
「旅人も襲われる。旅商人が襲われちゃあ、こっちも商売がなりたたねえや」
「船もやられるんだ!」
 そこここから声が上がる。
 その背後からまた怒号が上がった。
「奴だ!『飛び魚』だぁ!ちくしょう」
「おれたちをからかって遊んでやがる」
「神官さま!」
 意を決したか、マイラは荷物を背にくくりなおした。そして連れを振り返る。
「ルース、追いますか?見過ごせませんが」
「……」
 場の視線がマイラの後ろに集まった。
 誰もいない。
「……ろ」
 声は、足下からした。
「ルース?」
 見回すマイラ。
「……追いかけろ、追いかけるぞ!僕の頭を蹴倒した奴を、絶対捕まえてやる!」
 ならしたての、まだ柔らかい道に顔を半分埋めて、ルースはうなった。
 枯れ草色の髪に子供らしい大きな瞳。柔らかそうな頬を怒りに染めて叫ぶ彼を、
傍らの中年女が抱き起こす。
 肉屋がそっと尋ねた。
「あの……坊ちゃんで?」
 司法神官も、位によっては結婚が許されていない。が、公に出来ない子供を持つ
神官は俗に多い。
 自分の半分もないルースの背中を払ってやりながら、マイラはきっぱりと答えた。
「いえ、上司です」
 呆気にとられる群衆に、本人にかわって説明する。
「ルース・リンクス。王都神殿の十四人いる神官長の一人で私の上司です。彼は亜
人種なので年をとることはありませんが……」
 彼の体格に合わせて切り詰められた鉄杖を拾い、遠くの悲鳴を聞いた。
 まだいる。ルース・リンクスの頭を蹴飛ばし、逃げていったかっぱらいが。
「いくぞマイラ!絶対ぜったい捕まえてやるからな!」
 駆け出した子供を目で追い、
「それでは失礼。全力を尽くします」
 少し笑って彼女もその場を後にした。
 白い神官服が翻る。二人はたちまち人の波に消えた。

 1 三行目 かっぱらい=影=飛び魚だとわかっているのだから、かっぱらいよ
   り飛び魚とした方が適当
 2 十二行目、カバブが何であるのか不明。カバブを説明するのならする。しな
   いのなら魚が鳥で手を打っていた方が無難。
 3 三十一行目、三十二行目、山崩れが起こったのはこの街ではないのか、子供
   らが流れてくるのはおかしい。「子供をまとめているのだよ」と言わせた方
   が適当。
 4 三十五行目 「そこここから」読んでいて舌を切りそうになった。
  5 四十九行目 ルースの言葉、「・・・追いかけろ 中略 絶対捕まえてやる」
    後の文章で、亜人種で賢明な人であるならば、子供じみた怒り方をするだろ
   うか

 街中で『飛び魚』を追うのは楽だった。
 悲鳴と怒号が上がり、振り回される凶器を避けて飛び魚のように跳ねる姿が見え
る。天幕が引きずり降ろされる。
 市には石組みの建物はない。木で組んだ柱に帆布を張っただけの店がところ狭し
と軒を並べる。
 二人は人混みの中を無人の野のごとく駆け抜けた。
 すいすいと泳ぐように抜けて行く。
「マイラ、奴の姿を見たか」
「顔は見ません。姿からすると、子供ではなく、女のように見えます」
 金物屋の角を曲がり、軽食の屋台を越えて影を追う。
「そうだな、僕も女だと思う。それも少女の体つきだ……その角を右に」
「回り込みますか」
「人混みではまずい。向こうはこっちに気付いてるぞ」
「えっ!」
 走りながらマイラは目を凝らす。
 飛び魚が跳ねる。頭布で隠した顔の、目だけが確かにマイラを見た。
「目を見たか。あれだけ逃げながら、こっちを見て笑うんだ」
「どうします」
「奴は、店の柱を蹴って跳んでいる。我々が真似するわけにはいくまいから、どっ
ちにしても後手後手で追うことになる。
 市場の中に奴の根城はない。ここは地震の後の更地にできた市で、隠れようがな
いからな。
 南の港には廃船が山ほど溢れているし、旧市街には石組みの家がまだ随分残って
いる。どちらも取り壊しの予定は立ってない。どっちに逃げると思う?」
 息も切らさずルースは尋ねる。
「海か山か、ですね。どちらも危険ですが、逃げる足を考えれば海では?」
 また跳ねた。今度は革細工の店が崩壊する。
「いや、このエサウは元々港町だ。奴は女で、子供を使っている。そんな船が、本
業の海賊と戦う大公家の警備船に追われたら、逃げ切れまいよ。船を襲ったと言う
が、停泊中の貨物船か、人の住んでる家船をはしけか何かで襲ったんだろう。奴は
旧市街だ。裏には森も山もある。何かあっても、いくらでも逃げ込めるさ」
 旧市街の廃屋には、家を失った市民がいくらか残っている。危険なので立ち退き
が命ぜられてはいるのだが。
 人目のあるところに盗賊が隠れるだろうか?
 マイラは釈然としない。
「賭だと思いますが。賭けますか?」
「いいね。賭けよう。
 マイラ、右から回り込め。港に追い込むように動くんだ。背が高いんだから思い
っきり目立ってやれ。僕は左から行く。
 奴は旧市街側にさりげなく移動するだろうから、待ち伏せしてくっついてやる。
旧市街の門柱に印をしておくから、陽動は適当に切り上げてそこで待て」
「わかりました」
 二手に分かれると、マイラは『飛び魚』との距離を詰めた。
 獲物はたびたびこちらを見る。消えたルースを探しているのか。




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