AWC   紅の霧 〜ノルム王国の野望〜 (2)    宅急便


        
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★タイトル (DXM     )  95/ 9/23  15: 7  (101)
  紅の霧 〜ノルム王国の野望〜 (2)    宅急便
★内容

 俺はみゅらーず。今は、このどこか分からない森の中で出会った謎の少女
チャムに、これまたどこだか分からない場所に連れていかれてる最中なのだ。
 俺って、つくづくついてねーな。

 突然チャムが俺に言った。
「ちょっとあんた、名前は?」
「俺の名前か?俺はなー・・・・」
 そのとき、俺は名前を名乗るべきかどうか一瞬迷った。
 その俺の迷いを知ってか知らずか、チャムは言った。
「あたいを騙そうったって、だめだからね。嘘付いたらすぐわかんだからね」
「・・・・・・」
 チャムの言葉は、どことなく本当のような感じがしたので、俺は名乗った。
「俺はみゅらーず。何をしてたかとか、どこに住んでるとかを聞くんだった
ら、俺には答えられないがね」
「えーっ、何でー?」
 チャムはどうも不振げに俺の方をじっと覗き込んだ。
「・・・うーん、嘘は言ってないみたいね、じゃあさ、どうして答えられな
いのよ?」
「どうしてって言われてもなー・・・俺にもさっぱりなんだ。気が付いたら
この森の中にいたんだよなー・・・・」
「ふーん・・・」
 チャムは、俺の言ったことをじっと考えているようだった。
 そして、しばらくしてから、
「まー、じきに分かるかもね」
 と言った。なんなんだよー、まったく。人のことだと思いやがって・・・
等と内心で舌打ちしていると、
「そろそろね」
 チャムは言った。しかし、そろそろねと言われても、周りの景色が変わっ
たわけでもなく、ここが特別な場所のようには思えなかった。
「おいおい、何がそろそろなんだよ?」
 チャムは、何事かぶつぶつと言い始めた。
 そしてその後、突然目の前の空間がぐにゃりと曲がったような気がしたの
で、目をこすってよく見るとそこには穴がぱっくりと開いていた。
 穴の大きさは直径1mくらいだ。
「さぁ、これでいいわよ。どうぞ入って」
 チャムがそう言ったが、俺はその時何となくいやな予感がしていた。
「・・・なにしてんの?早くしないとしまっちゃうわよ」
「あ、あぁ・・・・」
 仕方なく俺はその穴に入った。中は真っ暗だったが、チャムがどこから出
したのか、明かりを持っていた。
「あたいについてきてね。もし遅れたりしたら出られなくなるから」
 チャムはそう言うと、すたすたと歩きだした。
「お、おいおい、ちょっと待てよ。いったい何が何だか分からんぞっ」
 俺がそう言うと、チャムは
「はいはい、知りたいことは着いてから聞くからねっ」
 そう言って、また歩きだした。またまた仕方なく俺も歩きだした。

 一体何分、いや何十分歩いたことか・・・・
「おい、まだなのかよ?もう疲れちまったぜ」
「まったく我儘ばっかり、でもねっ、そろそろ見えてきたわよ」
 チャムは疲れてないかのように、けろっとして答えた。
 そして、時間感覚が無くなるくらいに歩き続けて、やっと前方に明かりの
ようなものが見えてきた。
「やれやれ、どうやらやっと出口のようだな」
「着いたわよ」
 そして、俺とチャムは穴から部屋へと入っていった。

 部屋は全体的に暗く、窓もなかった。
 その部屋は、がらんとしていたが、壁の方にある本棚だけは、ずっしりと
この部屋に重くのしかかっているように見えた。部屋は全体的に暗く、窓も
無かった。そして部屋の真ん中には、占術師か魔法使いのような格好の老婆
が、魔法陣の真ん中に座っていた。
「よくぞまいられた。さあ、そこに座ってくつろいでくだされ」
「あんたは?」
 俺は老婆に聞いた。
「ほっほっほっ、おまえさんは私のことよりも自分のことを聞きたいのでは
ないかの?」
「たしかにそうだ、しかしな、俺は何にも訳が分からずにこんなところに連
れてこられたんだぞ。なんか最初に説明くらいあったっていいんじゃないの
か?」
「たしかにそうじゃのう、ほっほっほっ・・・」
 こ、このばあさんは・・・等と思っていた俺にチャムが、
「まったく、あんたって礼儀も何もないのね。それでよく宮廷騎士団のメン
バーになれたものね」
 と言った。俺はチャムに詰め寄った。
「宮廷騎士団だと?おい、おまえはもしかして俺のことを知ってるのか?」
「ちょっ、ちょっとあんた、レディーに対して失礼でしょ!」
「うるせーっ、そんなの知ったことか。さぁ、今すぐ俺のことを聞かせろ」
 すると、老婆が後から声を掛けてきた。
「ほっほっほっ、まったく気の早いお人じゃ。いいかの、私がそなたのこと
をこれから話して聞かせようと思っとるのどゃがの・・・まぁ、そなたのこ
とだけでなく、この世界のこともそなたの知らぬことも話してしんぜよう」
「ほんとか、ばあさん?じゃあ早く・・・」
「まったく、あんたってせっかちなんだから」
 俺が急いで聞きたがっているところへ、チャムが言った。
「とにかく、これからちと長い話になるでの、そこに座ってゆっくりと聞く
がよかろうて、ほっほっほっ・・・」
 俺はばあさんの前に座り、チャムはばあさんの横に座った。
「それじゃあ、まずは自己紹介をしてもらおうか?」
 俺が言うと、ばあさんはゆっくりと話し始めた。
「私の名前はキネム。かつては、占いを生業として生活しておったものです
じゃ。そして、ここにおるのは、おまえさんも名前は聞いているとは思うが
、チャムという私の孫ですじゃ。この子も魔法使いの素質があってのう、私
よりも優れておる」
 チャムは、「どう、すごいでしょ」と言いたげな視線を俺に送った。
 しかし、俺はそれには構わずにキネムに聞いた。
「それで?」
 キネムは、遠い目をして答えた。

 (3)につづくのであった・・・




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