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★タイトル (TRG ) 95/ 6/11 0:45 ( 56)
パソコン通信を使った環境問題論議 久礼嶋努
★内容
ちと芸風を変えてみたくなったので、新しいハンドルを使ってみた。
最近AWCで環境問題がはやってるようなので、尻馬乗りである。
まずパソコン通信で環境問題を語ること自体が、毛皮のコートをまとって動物
愛護を訴えるようなものであろう。ハイテク(と世間が思ってる)メディアを
使って「資源を大切に」「自然に近い生活を」などと唱えるのは、どう考えて
も悪い冗談である。
データや物性資料などの情報だけを交換するならともかく、「地球が微笑んで
います」などと個人的感情を書いたり顔文字を使うのは資源の無駄遣い以外の
何物でもない。同じ口から「地球は生き物ではありません」と出てくるような
人に至っては、何をかいわんや、である。微笑みと見えたのは煤煙と海洋汚染
のあとであろうか。
環境によくないとわかっていればだれでも何とかしようとする、というのも、
少なくとも原生人類には通用しない。たとえば、身近な環境問題として、喫煙
というものがある。
たばこを吸う人の肺癌発生率が吸わない人に比べて高いのは、厳然たる事実で
ある。さらに喫煙中の煙が周囲の人や物に与える影響も無視できない。喫煙者
の家族の肺癌発生率が喫煙者のいない家庭より高いという報告も聞いたことが
ある。また、風邪や喘息などでのどの具合の悪い人にとっては、たばこの煙は
命取りにもなりかねない凶器になる。
また、たばこの煙が鼻と舌をばかにして、食べ物の味が変わるだけではない。
あるテレビ番組の実験によれば、たばこの煙が食べ物にかかった場合、表面に
ニコチンとタールが付着して、食べ物そのものの味わいまで変わってしまうと
いう。当然ニコチン・タールは直接体内に入って胃を荒らしたりもする。
さらに、たばこの吸殻の問題もある。数年前に第一位を「放火」にゆずったも
のの、火災発生原因が煙草の火の不始末である率はまだ高い。投げ棄てたたば
こが山火事を起こしたという話もたまに聞くし、私がバイクで走行中に前の車
から投げ棄てられた火の付いたたばこが体に当たったこともある。
だが、それだけ害のあるたばこが地上から姿を消したという話は、寡聞にして
知らない。
たばこの害については、環境よりも前から言われているし、たばこがなくなる
ことでたばこ製造にかかわる人以外にはなんら不都合がないにもかかわらず、
である。
パソコン通信での環境問題提起がさらに致命的なのは、読む人の関心の問題で
ある。環境問題に敏感な人は、パソコン通信でなくてもほかの媒体ですでに情
報を得ていることが多い。だから、パソコン通信で環境問題が語られていても、
興味を示すのはすでに環境問題について啓蒙されている人であることが多い。
こういう人に今更環境についてかたっても釈迦に説法というものである。
そして、本当に読んでほしい「環境問題に関心の薄い人」は、媒体がパソコン
通信に変わったところでやはり環境問題に対する関心は薄いのである。本を読
まない人に向かって、本を読めといくら本の中から訴えたところで成果は期待
できないのと同じようなものである。
まあ、自己満足のため以外の動機なら、環境問題について語る場所へ行った方
が成果は上がるのではないかと思う。啓蒙活動のつもりなら、民衆が受け入れ
やすい伝え方をした方がいい。頭ごなしに「こうすべきです」なんてのは愚の
骨頂。反発を買うばかりであろう。