#903/1336 短編
★タイトル (UJC ) 97/ 9/18 2:55 (103)
当座出題者まで死んでしまうクイズ3 平山成藤2.0.2
★内容
かくして残るは、出題者の女と会社員二人だけとなった。
「−−では、第32512問」
女はまた新たな出題に入った。しかし問題の出しすぎで、この女の顔もゆが
み、疲労がありありと顔に見られていた。32768問出題するということ自体にム
リがある。
「いい加減あきらめたらどうです?」
Bはただひたすら出題し続けている女に問うた。が、
「回答者は質問しない!」
と、女は突然ヒステリックになるだけであった。支配人が32768問あるといった
手前、この女は32768問まで出題する気だったのだ。
「では、第32511問。世田谷区にある大宅(おおたく)壮一文庫はナニを集めた
図書館?」
「どうでもいいけど、それ『おおや そういち』文庫だろう!」
Bから激しいツッコミを浴びて、女はハッとした。と、次の瞬間、女は舞台
から消えた。
「死んだか?」
Aがついにやったぞというような顔をして舞台のほうをのぞきこんだ。死ね
ばこのクイズもご破算であろう。
がしかし、女はすぐに体勢をもち直して立ち上がってきた。
「おおぅっ!」
会社員も黒服も、その立ち直りの早さに思わず唸ってしまった。
「読み間違いくらいで私は死んだりしなーい!」
と、女はまたヒステリックに叫んだ。だがその顔からは血が流れだしていた。
こうしてクイズはだんだんと、血まみれなものとなっていった。
女は出題カードをかきまわしながらとっておきの問題を取り出すと、それを
32512問に仕立てて読み上げた。
「第32512問!この問題を読んでいる私はダァレ?」
「作るに困ってまたヘンな問題出しやがって」
Aはクソ文句をつけたが、出題席の女は
「これなら分かるまい」
とせせら笑って有頂天である。
しかし笑っているのはあの女だけではなかった。
「へへへ。知ってますよ」とB。
不意に、女の顔から笑みが薄れた。
「あなたは昔、美人局アナ名鑑に出ていた。まだ覚えてますよ」
言われた女の笑みが引きつりだした。
「今のあなたはフリーの美人アナ、清水キョーコだぁ!!」
突然、言われた女の体に衝撃が走り、彼女は後ろへと吹っ飛ばされた。正解
だったのだ。
黒服たちがあわてて女のもとに駆け寄り、彼女を抱きおこして介抱した。
「やったか!」
Aが喜々として叫んだ。
「ふふ...」
戦いに敗れた女は、真っ白な灰に燃えつきたかのようである。
「だが、あまーい!!」
叫び声とともに突如として女は復活し、会社員二人の前に再臨した。
「やはり間違ってた!」
女は血をたらたらと垂らしながら断言した。
「私は清水今日子。清水キョーコではなーい!」
「どこが違うんだ!」
違いの分からない会社員二人は怒鳴ったが、
「名前がちがう。私の『きょうこ』はカタカナでなくて漢字」
と女は言い切って相手にしなかった。
「何で分かるんだ!」
Bはどなり返したが、
「証拠VTR。この行より17行上−−『清水キョーコだぁ!!』−−
↑ほら違ってる」
「だから何でそれが分かるんだ!!」
「証拠がある。『清水今日子』でないと駄ーぁ目っ!」
「口頭問題だから正解だろう。せこいぞ!」
Aも怒ったが、女は聞き耳を持たなかった。
「間違ってるからには死んでもらいます」
言われて、会社員二人はあわてて自分たちのいる床から飛びのいた。足元の
床が抜けると思われたからだ。
だが床は抜けなかった。
一瞬、会社員と女はお互いを睨み合った。
Aから、勝ったかような余裕の笑みがこぼれてきた。
しかし黒服たちが両者の間に割って入り、懐から次々とピストルや短機関銃
を取り出してきた。実力行使する気なのだ。
「クソッ!」
会社員二人はあわててカバンからピストルを取り出そうとした。が、カバン
に引っかかってうまく取り出せない。
「間違ったからお死に!!!」
女の高笑いが響くと同時に、黒服たちの銃列が一斉に火を吹いた。
《ゲボボボボボボボボボボボボボボボッ!!!》
『うわぁああああああああああーーっっ!!!!!!』
会社員二人はおのれの銃を取り出しきれずそれを乱射しながら、自らも機銃
弾に撃ち抜かれていった。
AもBも後ろに吹き飛ばされ、ハデな血飛沫をまき散らし、観客席の中へと
崩れ落ちていった。黒服から手投げ弾が投げ込まれ、身動き一つもしなくなっ
たBをさらに爆光とともに宙へ舞わせた。
「誰も最後までいった者はいないのよ!」
硝煙の漂う中、女が捨てゼリフを吐いた。
「お分かり?!」
女はさらに言い放つ。硝煙は彼女の気分を高ぶらせたようだった。
黒服たちが会社員の死亡を確認しようと、二人のほうへ歩み寄った。
Bは爆弾をまともに浴びて、もはや身動き一つしなかった。
Aは顔を動かすことぐらいはできたが、体はもう駄目だった。もはや余命い
くばかりもないと自分でも悟れた。
Aは女が自分のもとに来ているのに気付き、顔をそちらへ向けた。
「誰も最後までいけないのよ。お分かり?」
女は同じ捨てゼリフを繰り返した。
「ペキンパー‥‥」
Aは心せずつぶやいた。つぶやいて天を仰ぎ見る。
失われた記憶がよみがえるかのようだった。
《当座出題者まで死んでしまうクイズ・終》
−−教訓−−
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