#216/1336 短編
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「儚くも時に埋もれて」 丈留
★内容
シナリオ「いまでも蒲公英咲いてますか」第二話
「儚くも時に埋もれて」-梗概-
南 丈留
大学の一室で掃除をしていた老人(七十歳)に、新入生の女子学
生(主人公十八歳)が教室を尋ねるところから物語が始まる。
実はこの老人、数日前に大学を退官した有名な教授であった。そう
とも知らず、この老人と親しくなった主人公は、老人の遠い昔の恋
物語に感銘を受ける。
長い人生を振り返り、今でも悔やまれることがあると呟く老人。
それは若かりし頃、想いを寄せていた女性を傷つけてしまったと言
うのである。残り少ない人生を前に、その女性に謝り、「一言伝え
たい想いがある」と、願う老人。
この話に感動した主人公が老人と共に、その女性を探しに出る旅
が始まる。昔の記憶を手がかりに、女性の軌跡を辿るが、この女性
の人生があまりにも不幸な人生であったことを知っていく。
旅の最後に、漸く捜し求めた女性の居所が分かったが、既に他界
したことを知る。叶わぬ想いであったと知った老人は愕然とする。
人生追憶の旅を終えて、後に一人保養所で死去する老人。
老人の死を知った主人公は、一人で老人の眠る墓地へ訪れる。そ
こには、老人と共に探し求めた女性の墓石があった。この時、その
女性こそ老人の妻であったことを知る。妻を亡くし、仕事も退職し
た老人が、痴呆症になっても伝えたかった言葉が、心の奥底から目
覚めたのだった。だが、主人公は想っていた。他界した妻へもう一
度伝えたいと望んだのは、二度と帰らぬ五十年前、あの頃の妻に伝
えたかったのだという事を--。
全てを失った老人が、自分の人生を素直に振り返り、人生の終着
駅へ、旅立ちの時を迎えた若い主人公を案内する。
人が全てを失った時に、何を思うのだろうか。まさに、其こそが
長い人生の中で捜し求めて来たものであるに違いないことを、この
物語の含みとし、儚くも暖かみの残る感動の余情詩としたい。
夢、幻の如く消えたはずの、老人の儚い想いが、主人公と旅をす
る中で蘇る。実は、この主人公こそが、老人の遠い昔の恋人役を演
じてくれるのである。老人は、今は亡き遠い昔の妻に、想いを告げ
て他界していくことができたこととして、物語の幕を綴じたい。